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「あなたは、知らない」

 知らなかったことが、嘘のようだ。
 白龍の腕に閉じ込められるその人を見つけて、言葉が喉の奥に引っかかって上手く出てこない。白龍の行動を止めなくてはならないのに、困惑したように向けられる春日先輩の疑問の目も、周囲の好奇の目も、何もかもがその瞬間、確かに自分にとって取るに足らないことであり、その時の全ては、ただ存在する目の前の存在のみに集約されていた。
 白龍の腕の中にすっぽりと納まる小さな体。白龍と比べずとも、春日先輩と並んで見ても大分小さいだろうその華奢な体躯が、見慣れた制服に包まれている。あぁそうか、同じ学校だったのか。
 呆然としながら、そんなことを考える。なんで知らなかったんだろうとか、気づかなかったんだろうとか、ぐるぐると考えながら、息が詰まって上手く呼吸ができない。肌を刺すような凍えきった空気の中で、どくどくと早鐘を打ち始めた心臓に熱が集まり始めたような気さえし、言葉にならない思いが胸中で渦巻く。
 言葉もなく傍から見れば呆然と彼女を見ていれば、白龍の腕の中で、もぞりとその人が動いた。ぎくりと、跳ねた肩は夢を見ていたかのような曖昧な境界線を越えて現実味を伝えてくる。
 小さな手が、白龍の胸を押しのける。それでも嫌がるように更に腕に力を篭める白龍に、彼女は精一杯抵抗しながら、ふと横を向いて、こちらを見て目を丸くした。見慣れた顔。あぁでも、多少作りが違うような気もする。いや、だけど同じ。どこか曖昧だった記憶が、どうしても時の流れと共に、曖昧になっていた部分が、その瞬間まるでパズルのピースを当て嵌めたようにカチリと嵌る音がした。
 どっと寄せてくるのはなんだったのだろう。困惑、疑問、不安、恐怖、後悔、慕情、そしてそれらを凌駕する、歓喜。溢れ出てくる思いに、歯止めが利かない。利かせられない。
だって、また会えた。やっと、会えたのだ。ここにいる。目の前に、彼女が。そう、彼女がいる。生きて、立って、呼吸をして、しっかりと自分を見つめて、ここに、生きて!
 嗚呼、と吐息に掠れた声が震える。白く濁る視界の向こうが滲んだようにおぼろげで、知らず伸びた腕が彼女の頬に触れる。白龍の腕の中で、目を丸くして、声をなくしている彼女の、先輩の、・・・・透子、先輩の、頬を、柔らかな頬を、畏れるように微かに触れて。指先に感じたものは外の空気に冷やされたのか、ひんやりと冷たかったけれど、それでもどこか、暖かな。確かめるように頬を掌で包めば、益々近づく顔。驚愕の瞳。あぁ、そうか。

「・・・・・白龍、離してあげないと、」
「・・っ」

 びくりと跳ねた肩。強くなる腕。けれどそれを押し留めるように、肩に手を置いて。ようやくのろのろと彼女を拘束する腕の力がなくなれば、飛びのくようにして離れる体。昔ならば、きっと、白龍のこんな行動なんて、簡単に受け入れてくれただろうに。逃げるように後ろに足を下げるその警戒に、泣きたくなった。


 あなたの中で俺達は、知らない人間なんですね。




 

―――――
in迷宮。譲と再会で譲視点。
譲飛ばして他キャラ書くのはどうかと思うので、譲は書かねば!と思っていました。
とりあえず春日先輩すらアウトオブ眼中な譲でした。まず白龍と譲の頭の中は現在夢主のことしかないと思われます。周囲とかどうでもいいわ!!と思ってる。
彼らの世界は夢主を中心で回ってる。ちなみに夢主中心で世界回してる人はあとリズ先生がいます。
他は中心じゃないけど優先事項に夢主がいるのは間違いない。ほら、他はまだ立場とかあるからさ、夢主中心ではいられないと思うんだ。

しかし傍から見たら男二人に無言で囲まれてる傍観主針の筵過ぎる。夢主視点だと「譲きたー!止めてくれ頼むから!!・・・・なんで泣きそうなのこの人ーーー!?てかなんか触ってきたーー!!」みたいなとりあえず驚愕の連続です。えぇもう、なんだこの状況?!と譲たちは別の意味で一杯一杯過ぎて泣きそうです。
うん・・・やっぱり傍観主って、ある意味でKYなんだよね・・・。

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