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「おたおめ!」

「は?誕生日?」
「あら、透子ちゃんもしかして知らなかったの?」

 そういって、今日はお団子頭にしてある月宮さんがこてん、と小首を傾げてアイスティーの氷をカラコロと音をたててかき混ぜた。私は目の前にあるパスタランチの蒸し鶏とズッキーニのぺペロンチーノをフォークで巻き取りつつ、初耳です、と答えてパスタを口に運ぶ。クリーム系も嫌いじゃないんだけど、あんまりこってり系だと味に飽きるっていうか、食べきれないというか・・・やっぱり塩系というかあっさり系のじゃないとパスタってあんまり食べる気しないんだよね。そう思いつつ、鷹の爪でピリリと走る辛みに舌鼓を打ち、ごくんと喉を鳴らして嚥下した。

「もう、透子ちゃん。その調子じゃ私の誕生日も知らないでしょ?」
「・・・そういえばそうですね。ちなみにいつなんですか?」
「9月15日よ!うふふ、プレゼント期待してるわね?」
「難しいですねー。考えておきます。それにしても、そうですか。日向さん今日が誕生日だったんですね・・」

 全く知らなかったよ。興味もなかったし。そんな話題になることもほぼないっていうか、基本的に仕事のことしか話す時間がないからなぁ。いや雑談もしてるんだけど、やっぱりそんな個人情報を語るような話題運びになることがないので、私が知ることはほぼなかっただろう。
 しかし当日に知らされてもなんの準備もしてないわ。うーん・・・まぁ、日向さんも今更期待するような年でもなし、別に何もしなくても問題はない気はする。どうせ他のところで祝われているだろうし、ファンからもプレゼント貰ってるだろうし、何より可愛い教え子兼後輩たちが祝ってくれてそうだし。それで十分じゃね?え?私もそこに含まれるだろって?・・・そもそも20も過ぎはじめると誕生日を嬉しがる気持ちも薄れていくし・・・あれだよね。年とったなぁ、って気がするだけだよね。・・・まぁ、でも、生きているということは、とても、素晴らしいことだ。

「・・・知ったからには多少は何かしないと気持ち悪いですね」
「でしょでしょ。まぁ、知らなかったってのは予想外だったけど・・・てっきり透子ちゃんも何かしら用意してるものだとばかり思ってたわ」
「自慢じゃないですけど、私教えられない限り他人の誕生日なんてわざわざ聞きませんよ?」
「つまり透子ちゃんには自己申告しない限り祝ってもらえないわけね・・・」
「会話の流れってものもありますけど、まぁ概ね。さて、それにしても困りましたね。今更何用意すればいいのやら」

 圧倒的に時間がないよね。昼休みだってそんなにあるわけじゃないし・・・かといって仕事終わりにお店なんてそんなに開いてないし・・・。おぉ、手詰まり感が半端ない。困ったな、と首を傾げてジンジャーエールに手を伸ばすと、月宮さんはそうねぇ、と呟いてつんつんとグリーンサラダをフォークの先で突っつき、レタスにぷっすりと突き刺すと、もぐ、と口に運んだ。

「・・・実をいうと、透子ちゃんも準備してるって思って、今晩龍也と会う約束しちゃってるのよねー」
「えぇ、本当ですか?」

 なんたること!私マジ何も用意してませんよ?そしてこれから用意するにしても中々難しいですよ?
 突然の予定に目を見開くと、月宮さんはテヘペロォ、とばかりに舌を出してウインクをかましてきた。似合ってるけどそこはかとなくいらっとします。てか予定を告げるのも突然すぎるし!そういうのはもうちょっと事前に言っておくべきだと!事前のホウレンソウは大事ですよ!?

「今日は仕事が終わる時間帯的に、お店は開いてないから龍也の部屋で飲み会する予定だったのよね。それで、透子ちゃんも呼んでご飯とか作ってもらおうかなーとか思ってて」
「だからそういう予定に人を組み込むときは事前に連絡をくださいよ。・・・あー・・じゃーもうあれですね。私のプレゼントそれにしますよ。ご飯。とケーキ・・・はなんかどこかの撮影で貰ってそうですからいらないでしょうね」
「え。やだ。私食べたい!」
「いやこれ日向さんのですから。月宮さんのじゃないですから」

 あなたの要望聞いてどうするんですか。多少の呆れをにじませながら、私は少しペースをあげてパスタを口に運ぶ。ふむ。と、なるとご飯もちょっと豪華にするべきか。飲み会ってぐらいだから、お酒に合うように考えて・・・まぁ今日はお仕事が遅いようだから、多少こっちも遅れても十分時間的には間に合うだろう。

「・・・日向さんはちゃんと知ってるんですよね?」
「サプライズの予定だから何にも言ってないのー。まぁあっちもある程度予想はしてると思うんだけどね。だから、これ」
「・・・はい?」

 月宮さんが差し出した手に首を傾げると、ちゃらり、と音をたてて月宮さんの手から銀色の鍵がキーホルダーにぶらさがって揺れていた。

「これ、龍也の部屋の合鍵。多分透子ちゃんの方が私よりも終わるの早いと思うのよね。だから、先に龍也の部屋で準備してて?」
「・・・月宮さんならともかく、私が入っていいんですかねぇ?」
「透子ちゃんだもの。問題ないない。よろしくねん?」

 ものすごい軽い調子で言ってくれるが、これは月宮さんの部屋ではなく日向さんの部屋なんだが・・・。まぁ、知らぬ仲でもなし。間に月宮さんがいるならそう問題になることもないか・・。しばし考え、納得すると私は鍵を受け取り、そっと鞄の中にしまいこんだ。鍵、返すの忘れないようにしなくちゃなぁ。
 つらつらと考えながら、パスタの最後の一口を口に放り込み、ごくりと飲み込んだ。




今日初めて知ったので。全然本人出てない上に祝ってもないですけど、祝う気持ちはあるんだよ!ってことで・・・。この後はただ傍観主がご飯作って食べてお酒飲んで(傍観主は未成年なので飲みませんよ)飲んだくれる二人の世話を焼いて帰宅するだけになりそうです。主に月宮さんがポンポンワイン開けて飲みまくりそうですけど。そして部屋だしまぁ気心知れてるし、ってことでちょっと日向さんも箍が外れて、結果傍観主にツケが回ってくる、と。
一応ご飯だけでもあれなんで、傍観主は酔いつぶれた日向さんの横にそっと「ふわもこ!わんにゃん写真集」とか「湯の香り~全国温泉湯めぐりの旅~」とか癒し系グッズを置いて去っていくことだと思います。お仕事その他諸々、お疲れだろう日向さんが少しでも癒されることを祈って!
微妙にチョイスが適当なのと日向さんが貰うことがあんまりなさそうなものとか贈ってくれたらいいなぁって。動物の写真集とか、持ってたら可愛いじゃないか・・。

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