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鮮やかに燃える太陽のような、金色に輝く髪。ガラス玉のように透き通った、深い碧色の双眸。
少し伏し目がちになった睫は決して長くはないけれど、その色も髪と同じ金色の輝きを放っている。髪の一筋、睫の一本一本に至るまで、満たされた力の気配にほう、と吐息を零した。
超サイヤ人。戦闘民族サイヤ人の中から、極稀に現れるという恐ろしい強さを秘めた存在。・・・まぁ、現在その希少性は大分薄らいでいるが、これは彼らが異常であり特別なだけであって、通常、こんなぽんぽこ出てくるバーゲンセールのような存在ではないことは確かである。
まぁ、多分サイヤ人皆なれる可能性は秘めているのだろうが・・・ここに至るまでに越えなくちゃいけない壁って一体どれぐらいあるんだろうなぁ。そしてそれを超えられる存在に至るまでに、死んじゃうことがほとんどなんだろうし。
そんな、類稀なる才と力と運によって発現するその色彩は、美しいその輝きとは裏腹に凶悪な破壊の力を秘めている。こんなにも綺麗なのに、身の内に宿るものは惑星一つ破壊することも容易い、ひどく恐ろしいものであるなどと、一体誰が想像できるだろう。無論、それが平和を脅かすもの以外に向けられることはほぼないといってもいいのだが、それにしても、美しいということはそれだけで力の象徴にもなるのかもしれない、と本来、闇夜のごとく黒々とした髪と目を持つ双子の兄を眺めて、私は一つの結論に至った。美しいものはそれだけで力になる。綺麗なものに力が宿るというのなら、超サイヤ人がこんなにも綺麗なのも当然なのかもしれない。
紙面や映像ではわからない、リアルでみるからこそのその圧倒的な美と力。本当に、綺麗なのだ。宿る力に震えは走るけれど、それでも本当に、悟飯の髪と目も、その体に漲る力も何もかも。ひどく綺麗で、危うく、恐ろしい。あぁ、超サイヤ人って、綺麗だったんだな。
たとえそれが、破壊の力の具現化であったのだとしても。
そろりと手を伸ばして、悟飯の白い頬に触れた。同じ年月を重ねたはずの双子の兄の頬は、昔よりもその柔らか味は薄れ、骨の感触が伝わってくる。重ねた手のひらは私のものよりも分厚く傷だらけで、到底同い年の子供とは思えない。腕も足も胸も腹も何もかも。あんなに近く同じだったものが、今はこれほどまでに違うのだと、それが私が背負うことができなかった、逃げて一人に背負わせてしまったものなのだと、僅かに唇を震わせた瞬間、小さな指先が、やんわりと唇に触れた。まるで震えを止めるかのように、ひどく、優しく。
「いいんだよ」
「っ」
碧色の瞳が細くなる。頬を包んでいた手を悟飯は優しく取り上げると、指と指を絡めて、きゅっと握りしめた。皮が分厚く、堅くなった手のひらはそれでも暖かく、絡めあった手は、大きさだけは、まだ同じぐらいで。
「透子が危ない目にあわなければいい。傷つかなければいい。知ってた?僕が初めて守りたいって思ったのは、透子なんだよ?」
「・・・悟飯は、もっといろんなものを守りたいんだって、思ってた」
「それも本当。守りたいものはたくさんあるよ。数えきれないぐらいあるけど」
「悟飯なら、守れるよ」
「ありがとう。でもね、一番守りたいのは、透子だから」
「なんにもできないのに」
「違うよ。なんにもできないんじゃなくて、僕が何もしなくていいようにしてるんだよ」
「馬鹿だね、悟飯」
「透子だって」
それは、ひどく滅茶苦茶な会話だったかもしれない。傍できいていれば首を傾げるような。それでも、手を絡めて見つめあう先の、たった一人の片割れとだけは、通じてしまっているから。私は、泣き笑いのように顔を歪めて、最後にもう一回、馬鹿だね、と嘯いた。
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