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「透子・・?」
「あれ。渋谷さん。久しぶりー」
五センチほどの厚みのある書類ファイルを抱えた状態で声がした方向に振り返れば、そこには久方ぶりに生で見る同期の友人の姿があり、驚いたように大きな目を更に丸くさせている姿にへらりと笑いながら片手を振って見せた。相変わらずきっちりと隙なく施された化粧は崩れることなく、くるんと上を向いた睫を何度も瞬かせて、彼女はぱくぱくとまるで酸素不足の金魚のように艶やかな唇を開閉させる。
うーん。そんな幽霊でも見たような顔をされるのもなんだかちょっとショック。
「な、なんであんたここにいるのよ!?」
「うわ、ひどい。・・・まぁ、諸事情ありまして」
「諸事情?なにそれ?ていうか今までメールも電話の一つもよこさないでおいてどういうつもりよ!?ちょ、マジで透子なの!?本物!!???」
「私の偽物を用意してどうす、うわちょ、渋谷さんっ」
さて、どう声をかけようかな、と首を傾げると、渋谷さんはくわっと目をかっぴらき、女子としていかがなものかという猛然とした勢いで突進してくると、ぐわし、と両手で私の両頬を鷲掴んだ。きらきらのネイルが施された爪先が食い込まないように力加減はしてくれているようだが、身長差がそれなりにある分、顔を掴まれて視線を合わせるように思いっきり上向かされると首がきつい。下手したらぐきっといくよ、ぐきっと。
そのまま頬をむにむにといじられ、頭のてっぺんかた爪先まで何度も視線を往復され、ぺたぺたと体中を触られ、廊下のど真ん中ということも手伝い非常に居た堪れない思いでされるがままになっていると、渋谷さんはひとしきり観察して満足したのだろう。というか納得?したのだろう。頬を包んでいた両手をどけて、本物ね、と茫然とした様子で呟いた。いやだから私の偽物を用意してなんの意味があるんですかね渋谷さん。
「だって透子、あんた卒業したら作曲家じゃなくて普通の学校に通うって言ってたじゃない」
「まぁそうだけど・・・」
あぁ、そんな話をしていた時期もありましたね。そりゃそんな会話した相手が芸能事務所、しかも自分が所属している事務所で普通に廊下歩いてたら疑いもするか。私でも我が目を疑うわ。
なら仕方ない、と苦笑をすれば、渋谷さんはため息を吐いて自慢の豊かな髪をふわり、とかき上げてむぅ、と眉間に皺を寄せた。多少猫目がちな渋谷さんの目はそれだけでちょっと険を帯びるから、目力がすごいなぁ、としみじみと思う。
「しかもあんた、卒業してから音信不通になるし。私も春歌も、音也たちだって心配してたんだよ?なんでメールの一つもよこさないわけ?!」
心配したでしょうが!!と思いっきり怒られて、思わず首を竦めた。あー・・・思った以上に心配かけてたっぽいなぁ、これ。やばい、結構楽観視してたというかこっちは大体彼らの動向を把握していた分、ズレ感が半端ない。そうですよね。私は大体みんなの状況知ってますけど、皆は私の状況なんてちっとも知りませんよね。笑ってごまかそうにも、割とマジで怒ってる、というよりも心配と安堵が混ざった顔で睨まれたら、こちらとしては何も言えない。自分が悪いってわかってる分、余計に反論などできるはずもなく。
「・・・ごめんなさい」
「もう、ホントに心配したんだからね?とにかく、説明しなさい!」
「はい。とはいっても、そんな深い事情はないんだよ?」
素直に頭を下げると、渋谷さんもそれ以上怒りようがないのか、もう一度深いため息を吐いて、許してくれた。ありがとう、渋谷さん!でもこれを他の面子にもされるのかと思うとすごく面倒くさいので早々に携帯を買って連絡取らないとやばいね、色々と!
そんな内心の打算などおくびにも出さず、ともかくも廊下のど真ん中じゃぁ積もる話もできまい、と廊下の先にある談話室へと渋谷さんを案内し、そこの自動販売機で飲み物を買ってから、液晶テレビの前に陣取って私はここに至るまでの経緯を説明した。
「簡単に言えば、卒業した日の真夜中に社長に拉致されてうやむやの内に社員契約を結ばされちゃったんだよねぇ」
「はぁ?」
「おまけにその騒動で携帯が壊れちゃって。買い替えに行く時間も中々なくって、そのままにしてたらこんなに時間が経っちゃっててさー。いやはや、時の流れはジェットスピードだね」
「そんな軽く・・・って、社長が透子をここに引き込んだの?作曲家として?」
「うんにゃ。普通に事務員として。あ、でも偶になんかそういう仕事も入ってくるなー。でも基本的には事務だし。ちなみに、日向さんと月宮さんは私がここで働いてるの知ってるよ」
「マジで?二人ともそんなこと一言も言ってなかったんだけど」
「そうなんだ?・・まぁ、ああ見えてあの人たちもかなり愉快犯なところあるから、黙ってそうだとは思ったけど」
「林檎ちゃんはともかく、日向さんまでとは思わなかったわ。やっぱりこの事務所の人間よね」
「だねー」
どんなにまともそうに見えたとしても、所詮この事務所の人間である。毒される運命なんだな、きっと。・・・あれ、その理屈でいうと私も毒されてる?うっわ。私まだ一般人でいたいんですけど。いや、あの学校に通ってる時点ですでに手遅れ?どうなんだろう・・・。割と真剣にそのことで悩んでいると、渋谷さんはミネラルウォーターのペットボトルを傾けて、まぁでも、と笑みを浮かべた。
「元気そうでよかったわ。もしものことがあったんじゃないかって、皆本当に心配してたんだから」
「ごめんね。色々・・・本当、色々あってさ・・・」
「うん。なんとなくわかったから、皆まで言うな」
思わず遠い目になると、渋谷さんはその間だけで諸々を察したのだろう。ぽん、と肩に手をおいて力なく首を横に振った。ふふ・・・正直今アイドル活動してる君らよりも振り回されてきたんじゃないかって思うよ。私。
「にしても、学校にいたときからそうだけど、透子マジ社長に気に入られてるわね」
「はは、遠慮したいところですな!」
「春歌とか音也たちとは別次元だとは思うけど・・・ある意味別格?あ、そうそう。春歌たちがうたプリアワードにノミネートされたって話知ってる?」
「知ってるよー。あと、なんだっけ。HE★VENS?だっけ?ってのもノミネートされてるんだよねー」
「そうそう。今もっとも注目されてるアイドルグループ。うたプリアワード最有力候補だってね」
「事務所がこの業界最大手だもんね。あ、そういえばさ。今日確かその放送があったよね」
「そういえば。そろそろじゃない?」
そういって、腕時計に目を落とした渋谷さんに習って、テーブルの上のリモコンをいじってチャンネルを合わせる。どうせ派手な演出なんだろうなぁ、と思いながら、渋谷さんと再会の雑談を交わしつつ、うたプリアワード前哨戦が始まるのを待っていた。
「そういえばST☆RISHのところに社長たち行ってるんだけどさ、これアワードに間に合うのかね?」
「え?マジ?時間的に厳しくない?」
「放送時間に素の彼らが映ってたらどうするー?」
「笑うしかないよねー」
「だよねー!」
いや本当、まさか全国ネットでああまで素を晒した状態で放映されるとは思ってなかったんですよ。相手側がばっちりドームで演出してるのに、明らかに「え!?何事!?」とばかりに驚いている彼らに、何も知らされてなかったんだな、と同情心が向かったのは、きっと液晶越しの彼らには届かなかったに違いない。ていうか社長もさ、一応放送日程はわかってるんだから、もっと事前に行動してあげようよ・・・。
まぁ愛島さんの事情でギリギリまで待った結果だというのは知ってますけど。ギリギリすぎないか、というツッコミは、そっと胸の奥にしまっておいた。
友ちゃんと再会!九話裏の傍観主でした。とりあえず事務所でお仕事中、ばったり友ちゃんと遭遇ってことで。ようやく同期面子の一人と再会したわけですね。メインとは相変わらず遠い空の下よりすれ違い生活中ですが。友ちゃんからメールとかラインとかで情報が行くか、なんだかんだでやっぱり知らされないままかはさておいて。
よくよく考えてきっとテレビ放送もされているだろうに、スターリッシュのあの登場の仕方はどうなの、と。ライバルチームはめっちゃ放送用に頑張ってるのにこっちめちゃめちゃ素じゃないか、と思いました。
しかもどこぞの大自然だろ?しかも知らされてないとかもう本当なんだこの差はwwwおいこら上司wwwスケジュールもうちょっとちゃんとしてあげてよwww
まぁそんな感じですけど、ちょこっと見かけた限りで十話が非常に楽しみでなりません。土曜日が待ち遠しいですね。動画配信早く!
まぁ・・・なんていうか・・・一ノ瀬さんはいつメインで出てくるのかな、とは思いますけど・・・。
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