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「天と地ほどの差の真ん中で」

 悪い人たちじゃない。そう、決して悪い人達なわけではないのだ。
 家族には、いや一族?とにかく身内には優しいのは確かだし、娘としてそれなりに可愛がられているとは自覚している。ただ、まぁ、うん。・・・我慢っていう言葉を知っていても実行しない天上天下唯我独尊を地で行き尚且つそれが全部許されちゃうと思ってる、実際許されちゃってるから増長しちゃってる、人として最低且つどうしよーもない人たちなだけで。

「それを通常は悪というのではないか?」
「身内目線で見ると微妙なところなんだよ。悪意なんてものは一欠けらもないからね、あの人たち」
「それが当然と思っている者に、悪という言葉はつりあわないということか」
「無知なのは罪っていわれるけど、自覚がないのも似たようなものだよね・・・」

 しみじみと、肩の上の水樹と会話しながら、父に鞭で打たれた男の人の傷の手当てを施す。気絶しているのが幸いか、顔は知られないだろうし必要以上に騒がれることもない。できるならば逃がしてやりたいが、この人は一応父のものだ。私が勝手にできることは限られていて、せいぜい父がつけた怪我の手当てや、飽きた頃になんとか遣り繰りして逃がしてあげることしか出来ない。それがこの人の救いになるのかは知らない。背中に押された烙印は、逃げ延びて尚この人を縛り付け、雁字搦めにしてしまうのだから。

「お前のせいではない」
「・・っ水樹、」
「これを買ったのも傷つけたのも、尚このような扱いをするのも透子ではない。お前が気に病むことなど何一つとしてないのだから、・・・そんな顔をするな」
「そうだとしても、やっぱり罪悪感は、消えないよ・・・」

 慰め、いや慰めというよりも水樹にしてみれば当然のことを言っているのだろう。ぼそりと「あいつら消すか?」とかぼやいているのは怖いけれど、やめてあれでも私の家族だから、と宥めてそうして、すっとその場を立ち上がる。

「・・・もうすぐ、だから」

 もうすぐ、父の周期を考えれば、もうすぐこの人にも飽きるはずなのだ。そうしたら、そうしたら。

「烙印は、消せないけど」

 それでも、可能性を、渡すことが出来るから。

「・・ここから、出して、あげられるから」

 だからそれまで、どうか、どうか生き抜いて。ねぇお願い。手遅れにだけは、ならないで。
 白い包帯が巻かれた腕をそっとなでて、きゅっと唇を噛み締めた。


 零れ落ちた命の、なんと重たいことなのか。





―――――
世界貴族な傍観主。翼様とネタが偶然にも重なるところがあったので思わず書いてみた。
傍観主は基本引きこもってます。外に出るときの格好への抵抗と、多くの視線に耐えられないから。
だから、家の隅っこの、一番小さな(つってもでかいでしょうけど)部屋で、基本一人でいることが多いです。
家族のことは嫌いじゃない。嫌いじゃないが、人としてどうかとは思ってる。嫌いではないんだよ!でも関わりたいとは思ってないんだ!
基本的には見てみぬ振りだが、ひっそりと行動はしています。ただ、それ以上に理不尽に命を奪われることが多いので、傍観主としては色々耐え難い。その現場をみたくないから引きこもるっていうのもある。
いっそ大々的に動けばいいのに、それでも騒動や渦中は嫌だから動かない。そんな自分がやっぱり嫌で自己嫌悪。そんなループの中で軽い欝にないりそうですね!
でも重症化する前にきっと水樹さまに唆されて家出するんです。
それに、権力はいつか潰えるもの。その渦中にもしもいることになったら、地に落ちた龍はどうなるか。想像するのは容易くて、実際目で見たこともあって。だから、そうなる前に、傍観主は逃げるんだろうなと思います。


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