[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
≪ 不備ありそう・・・。 | | HOME | | 感想とネタと。 ≫ |
ヒノエは女の子に優しい。遙か3を知っている人間であれば当然の知識である。まぁ、もしかしたら?現実とゲームは違うから?多少の差異はあるかもしれない。もしかしたらどこぞの二次創作みたいな危ない系のヒノエが、ここでは「本当」のヒノエかもしれない。しかしながら、今まで接してきた中で、ゲームと著しく外れている様子はなかったので、おおよそゲーム通りの性格設定なのだろうと思っていた。女好きでフェミニストでそれでいて青少年。青臭い、と言えるところもあれど、やっぱり基本はカモーメにならないかい。馬鹿にしてるんじゃないです。愛故です愛故。とにかく、そんなヒノエだから、これはとても、信じられない出来事だ。
噛みつかれた。ヒノエに。しかも手首。意味がわからない。伊達や酔狂でもない。本気と書いてマジと読む。それぐらい、めちゃめちゃ強い力で噛みつかれた。意味がわからない。痛いっていうのと、怖いっていうのと、わけわかんない、っていうのと、とりあえずごっちゃごちゃになって食い込む歯がぶつって皮膚を貫いた音がして、あ、これマジでやばいって思った。痛かった。とりあえず半端じゃないぐらい痛かった。噛み切った癖にまだ口を放さないヒノエが純粋に怖い。え?何この人?腕を引こうと思うのに、片手でやすやすと掴まれていては動けないし、食い込んだ歯のせいで引くと余計に危ないんじゃないか、と思ってしまうともう動かせない。
怖かった。痛かった。目の前で人間の腕に歯を突き立てているヒノエは、多分私の知ってるヒノエじゃないんだって思った。こんなのヒノエじゃない。この人絶対ヒノエじゃない。ヒノエの皮をかぶった違う人だ。
怨霊か?私これに食い殺されるの?嫌だ。怖い。誰か。助けて。
「ひ、ぅ」
悲鳴をあげれば誰か助けてにきてくれる。ここは景時さんのお屋敷だから、大声をあげれば誰かは聞きつけてここに来てくれるはずだ。なのに、ヒノエがちらり、とこちらを上目に見上げてきた瞬間、喉の奥が引きつれて声が奥に引っ込んだ。赤い目が、すぅ、と細くなって、ヒノエの口元から赤いものがたらりと流れていく。皮膚の上を伝って、ぽたり、と床板に落ちるほど。それが血なのだと察した瞬間、目の奥が熱くなって、ヒノエは、ヒノエ、は。
「――あぁ、やっと、泣いた」
「・・・え、?」
噛んでいた手首を解放して。まるでそれこそ目的だったのだ、というように、目尻に唇を寄せて。薄い唇を開いて、赤い舌先を伸ばして、べろり、と。まるで、動物が舐め癒すような優しい仕草で、目元を舐めあげた。生温くで湿った分厚い舌の感触が肌を這う。衝撃で更にぼろりと目尻から零れたが、それすらも綺麗に舐めとられた。
最後にちゅ、って、唇をくっつけるいらないおまけつき。でもそれすら、頭の中が真っ白な状態である私には、反応もできないほどのただの衝撃でしかない。だって、噛まれた手首が痛い。皮膚が噛み破られて、血が出てるぐらいだ。ものすごく痛い。それをしたのが目の前の人間だ。ただ純粋に怖い。なのにいきなり、ごめんね、とでもいうように優しくキス?をしてきた。言っておくが、私とヒノエは断じてそんな仲ではない。行動がチグハグすぎる。意味が解らない、わけがわからない。怖い。不気味。痛い。
耳元で、透子?って、名前を呼ばれて。震えた肩の意味を、彼は正確に把握したのだろうか。
ただ、もう一度、今度は、噛みつかれた場所に。
ごめんね、と言いながら、キスをした。
≪ 不備ありそう・・・。 | | HOME | | 感想とネタと。 ≫ |