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ごめんなさいという言葉は聞き飽きた。
謝らせるのはもう嫌だ。貴女のせいじゃないのに、謝罪を口にさせるなんてもう嫌だ。
私のせいじゃないという優しい言葉ももういらない。守りたかったという儚い願いも言わせたくない。
キャスター。私のサーヴァント。優しい優しい、私だけのサーヴァント。
「――これで最期にするよ」
消えゆく体。走るノイズ。敗者と勝者を隔てる赤い壁。負けてしまった。あれだけ決意したのにあれだけ覚悟を決めたのに。あぁ全く、覚悟や信念だけではままならないなんて、当たり前すぎて反吐が出る。覚悟や思いだけでどうにかなるなんて、そんなの物語の中だけだ。怒りや悲しみでパワーアップなんて、そんなのただの絵空事。
必要なのは堅実なる努力。力を出せるだけの下地。そこに才能やら運やらがあったとしても、結局は自分の培ってきたものをどれだけ出せるか。自分が、どれだけのもの積み重ねてきたか。それ以上なんてあるわけない。
だからゲームだってレベル上げをするんだ。低いレベルじゃラスボスなんて倒せない。だから、物語は旅をする。様々なものを得るために。
倒れ伏すキャスターの手を強く握り、血が零れる口元を拭い取る。少しだけ虚ろいだ瞳が意思を持って焦点を定めると、マスター?と彼女が私を呼んだ。うん。キャスター。
「キャスターが謝るのも、私を甘やかすのも、痛い思いをするのも――これで、最後にするから」
「ます・・・?」
「もうこんな思いさせない。もうこんな怪我なんてさせない。絶対。絶対だ。――もう、キャスターを裏切ったりなんかしない」
死なない。死なせない。負けない。負けられない。もしもまた、懲りずにあの女生徒がこの戦争を繰り返すというのなら。また、再び、この戦争が始まるというのなら。
また、こんな戦いが始まるというのなら。
「もう、踏みにじったりなんか、しないから」
貴女の思いに胡坐をかいて、利用したりなんかしないから。
きっとまた繰り返すのだろう。彼女の手によってこの世界は逆戻る。けれどそれでも構わない。もう決めたんだ。必ず優勝するって決めたんだ。聖杯を手に入れるって決めたんだ。だから、私は、始めるだけ。
「大好きだよ。大好き、キャスター。私だけの、優しいサーヴァント」
その思いに報いるだけの強さを。戦いを勝ち抜くための力を。相手を追い詰めるだけの知識を。相手の願いを切り捨てるだけの意思を。その全てを手に入れるために、聖杯を手に入れるために。始める、だけだから。
ノイズは染まる。黒く黒く染まっていく。目は見えない。耳も聞こえない。暖かさも冷たさも。何もかもを掻き消して。
「・・・長いこと、付き合わせてごめんね。キャスター」
たったこれだけの決意を固めるのに、全く、私はどれほどの時間を要するのだろうね?
ループ現象だからこその傍観主の決意っていうか覚悟っていうのもあるかなって。
どっち道逃げられないわけですし。選択次第で闘わなくてもいいという自由意思ではなくて、参加してしまっているからには必ず闘わなくちゃいけない強制。しかもそれが他人をも巻き込んでというのならば、傍観主も覚悟を決めてくれるかなって。そこに行きつくまでにかなりの時間を要するというか結局ループの原因を知ったから固めたわけで、知らなきゃ延々まだぐだぐだしてるかもしれないところが彼女ですけど。
なんだか第一部完。第二部へ~みたいなノリですね!でもまぁ、これもこれで区切りかなぁと。とりあえず覚悟決めても実力不足で負けちゃうのは現実です。思いと熱意と信念だけでどうにかできるほど世の中甘くできてませんので。そこに為せるだけの力もなくっちゃ。だから次は、傍観主、最初っから本気で臨みますの。勝つために、頑張るんですよ。
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