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冬の空気は刺すように冷たい。吐く息は白く濁り、吹き付ける風はむき出しの肌を容赦なく攻撃して指先を氷のように冷たくさせる。手袋をしているのに、なんでこんなに冷えるのだろう。ぎゅっと手を握りながら、ぐるぐるに巻いた毛糸のマフラーに首を竦める。
黒のハイソックスに、白の制服のスカート。お洒落に気を遣う女子生徒のように、短く裾を切る勇気もないので規定の長さで膝丈をキープ。生足晒して寒い寒いと喚く女子生徒の気が知れない。寒いならその丈の短さをなんとかしたら?というのは、彼女たちにとっては別問題らしい。よくわからないなぁ、と溜息はやっぱり白く濁った。ズボンと違い容易に風の侵入を許す心許ないスカートが、ぴらぴらと揺れる。思わず恨めしく男子の長ズボンをねめつけるが、謂れの無い恨めしげな視線は誰に悟られることもなく、茶色の通学鞄を握り締めて肩を落とした。寒さに強張る肩の筋肉が微妙に痛い。仰ぎ見た空は冷たい空気に晒されて高く澄んでいて、なんで寒いとこんなに綺麗なんだろう、と瞬きをする。その刹那に、帰宅を同じくする友人に声をかけられると、あっさりと思考はそこからずれて何気ない会話に混ざるのだ。昨日のテレビ番組、今話題のアイドル、知人の何気ない面白行動や、漫画やアニメの萌え語り。専らそれ系の会話なのは私がそういう人種だからで、そして友人も例に漏れずそういう人種だからだ。類は友を呼ぶのである。
楽しげに話しながら、校庭を横切ると、周囲の空気がざわりと揺らめいた。はて?思わず話していた友人と顔を見合わせれば、二人揃ってなんとなく、ざわめきの中心に視線を向ける。
そこで、私は、驚愕に目を見開いて、うそ、と小さく呟いた。
「なにあれコスプレ?変質者!?髪長!!しかも服装すごっ。なんか誰かに抱きついてるけど、知り合いなのかなぁ?すごいはっちゃけた人だねー」
隣で友人が不審者過ぎる!と喚いている中で、私は咄嗟に顔を逸らした。いや、うん。なんの反論もできない。長い髪は地面にまで届くかと思うほどで、髪の色は綺麗な白銀。服装といえば本場でも今時あんな格好しませんよ、といいたくなるチャイナ服で、体格はすらっとがっちり高身長。
顔は、見なくてもわかる。声は某有名な声優さんで、ぶっちゃけ言わせて貰うなら正直キモチワルイ。褒め言葉。褒め言葉でキモイ。いやでも素でないわーと思ったのも事実。クール系キャラをしていればいいのに何故あえて純真無垢系できたんだ。ちっさい方が可愛いのにとは再三思ったことで、さておき。まさかの出来事に隣で興味津々に目の前のイチャラブ光景をガン見している友人からも顔を逸らして、私は一人ひっそりと苦悩した。まさか、ここ、あの世界だったのか。縁切れたと思っていたけど、実は実はで繋がっていたのか。そんな、まさか。でも現実に。あぁくそう。まさかの繋がりにくらりと眩暈すら覚える。
でも、そうだ。私はここにいるけど、彼女だってあそこにいて。そして彼は彼女を抱きしめているのだから、実は関係ないんじゃないかと、ふと思う。関係、ないんじゃないだろうか。ここは、似ているけれど、私がいたところとは、関係ないんじゃないかって。漠然とそう思ったとき、友人があ!と声を張り上げた。その声にびくりと肩を揺らして、咄嗟に顔をあげれば、絡まる視線。あ。と目を見開いたとき、それは回避を許さぬ勢いで、走り出した。
あぁもう、本当に、逃げ場が、ない。逃げる、という、コマンドを、選ぶ暇もないほどに。今の今まで抱きついていた少女を手放して、それは、こちらに向かって、駆け出してくる。ゆっくりとした動作に見えて、実際にはそれは結構なスピードで。体感時間と、実際の時間の流れが違いすぎて、対応が間に合わない。
呆然としている間に、私は大きな体に抱きすくめられて、厚い胸板に顔を埋める形になって、逞しい両腕にがっちりと捕まえられて。隣で友人がきゃぁ!なのかぎゃぁ!なのかわからない悲鳴をあげたところで、私はうーわー、と顔を引き攣らせた。
声もなく、ぎゅうぎゅうと、抱きしめる腕が、苦しい。まるで離さないといわれているみたいで、軽く混乱を呼び込んだ。あぁ、ちょっと。待って。どうして、ここで、私、を。
吐息に混ぜて呟かれた声は聞こえなかったけれど、何故だろうか。まるで私の名前を呼ばれたようにすら感じて、私はきつく目を瞑る。違う、違う。私は、もう、関係ない、はずで。
だって、私は、望美ちゃんのいる遙かの世界を、知らないん、だから。
だからここは、私の知る、私のいた世界ではないはずで。だから、ねぇ。白龍。
この腕を、離して、よ。
今日の更新
◎水鏡の花 水夢の花編にて海賊ショート連載 「仄めかす、いつかの日」アップ。
おにーさまがゲーセンで約二千円使って獲得してきたレイリーさんフィギュア!
クオリティパねぇ!かっこいい!悪い顔(笑)!嫌だほんとレイリーさん素敵すぎる・・・っ!
うっかりレイリーさん撮影会に突入する兄妹でした。思わずじっくりとっくり眺めてしまう素敵さでしたよレイリーさんマジパねぇ!
ふくろはぎからくるぶしのライン堪らないものがあります。着目点違うって?いや正常だ。(真顔)
兄曰く、「三店回ってラス1だった。取らなくてはいけないと思った」だそうです。実際レイリーさんが欲しかったそうなので(他は別にどうでもよかったらしい)兄は二千円に悔いはないそうな。よかったよかった。でもこれはその価値があるんじゃないかなー。すごいよほんと。
つってもこのゲーセンのUFキャッチャーは、掴むというよりも引っ掛けて、斜めにして、反動でちょっとずつ動かして穴に落すという方法でないと取れないような形だったらしいので二千円は仕方ないかと。
どんなに上手い奴でもあれは普通には取れないよ、とは兄の談でした。
どんなに引っ掛けても落ちちゃうんだと。だから他の人がどうやって取るのか観察してからリトライしたんだと。そこまで欲しいかレイリーさん。
まぁそんな兄の努力の元、二人して「若い衆はどうでもいい。おっさんマジいいよね」と語り合ったわけだが。
おっさんてかレイリーさんとかじいさんの勢いだが、だからワンピのおっさん連中はホント素敵だと思うんだ。いや若い子も好きよ?勿論。でもミドルとシルバーのゼロ世代の魅力は無限大だと思うんだ。
「妾の愛し子に何をした」
炎が揺らめく。大地を這うように紅蓮がその規模を増し、稚い幼女の周囲を陽炎のように歪ませていく。チリチリと、いや、ジリジリと肌を焦がす熱波は次第にその勢いを増し、やがて幼女の周囲を囲う紅蓮が、俄かにその色を薄くしていった。
一切の感情を削ぎ落とした秀麗な顔に比例するかのように、炎もまた焦がれるような色をなくしていく。
薄く薄く、青白く。透き通るような青と白に、近くにいた男が絶えかねたように叫んだ。
「落ち着いてください!この辺り一体を焦土にするおつもりですか!?」
いや、ともすればそれ以上に酷いかもしれない。覚えた危惧に、蒼炎のように血の気を引かせた男に、幼女はちろりと横目を向けた。常の傲慢な微笑みが影を潜め、ぞっとするような無感動な瞳が男を見やる。睨みつけるでも、ねめつけるでもない。ただ、ついっと無感動に向けられた瞳は、幼女の纏う炎とは裏腹に、ただ、冷え込んでいた。ぞくりと背筋に走ったものは、なんだったのか。ヒュッと僅かばかり呼吸を止めると、ぷくりとした唇が、微かに震え、鈴を転がすような可憐な声が、冷ややかに、静かに、抑揚もなく――告げる。
「――黙りや」
刹那、噴出すように勢いを増した蒼炎が、幼女の緋色の髪を揺らし、袖を、裾を揺らし、踊るように叫ぶようにその形を変えていく。同時に、くつりと幼女の口角が歪みを帯びた。キュッと三日月に口角が反り返ると、笑みは狂気を孕んで艶を帯びる。幼女には似つかわしくは無いのに、見惚れるほどに壮絶な微笑みは、けれど細められた瞳の熱のなさにぞっと背筋を凍らせた。
「嗚呼・・・どうしてくれよう。骨も、炭すら残さぬように燃やして尽くしてくれようか?生きたままじわじわと炙り殺してくれようか?それとも―――皮膚を溶かし、指を溶かし、髪を溶かして、人の世に生きていけぬようにしてやろうか?そなたがしてきたように、差別し、虐げられ、嘲りと嫌悪に晒され、絶望の底で果てるかえ?醜く、おぞましい姿を、愛してくれる人間がいたらよいがのう。じゃがのう、残念ながら、人間とは美醜を気にする生き物じゃ。おぞましく醜いそなたを、果たして誰が愛すのじゃろうなぁ?無論、愛してくれる人間もいるがの?妾の愛し子のように。じゃが・・・そなたに、果たしてそんな人間が寄ってくるかのう?」
くつくつと愉快そうに喉を震わせ、幼女はひらりと袖を揺らす。その動きに従うかのように、炎がぐわりと鎌首をもたげた。
「―――他者を見下し、蔑んできたそなたに、人が寄ってくるのかのう?」
業は、我が身に還るものじゃ。
淡々と紡がれた言葉は、断罪の言葉に、酷く似ていた。