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うまく、事態が呑み込めていない。どうした?と尋ねてくる男子生徒になんでもない、と掠れた声で返答をしてから、急いで校門をくぐる。後ろから呼び止められた気がしたが、正直それにまともな反応を返せる気がしなかった。
ここは、どこだ。学校指定の通学鞄だろうか、馴染みがあるような、全くないような、奇妙な違和感を覚える鞄を握りしめて、周囲を見渡す。見覚えのない校舎がそこにはあり、やはり見覚えのない校庭が広がっている。ちらほらと見える学生にも覚えはなく、何もかもが記憶と重ならない光景に眩暈を覚えた。
カラカラに口の中が乾いて、心臓がどくんどくんとうるさいほど騒ぎ立てる。見知らぬ世界にぽつんと取り残されてしまったかのような心もとなさ。いや、取り残されるというよりは、放り出されたようだ。足元がぐらぐらとおぼつかない。自分がちゃんと立っているのかもわからない。なんだ、ここは。どこだ、ここは。
挙動不審に、きょろきょろと辺りを見渡した。ふと自分の姿を見下ろせば、周囲の生徒と同じ制服を着ていた。私はここの学生なのか、と思ったが、生憎と入学した覚えもなければ受験した覚えもない。それでも私はこの学校の制服をきていて、通学鞄をもっていて、この学校に登校したみたいで、校門では風紀チェックをされて、そのうちの男子生徒とは彼曰く友人で、一年からの付き合いで、ここは月海原学園という学校で、あぁもう、わけがわからない。
私はこんな学校なんて知らない。こんな学校に入学した覚えなんてない。ここの生徒に見覚えなんてないし、生徒会長とは友人だった覚えもない。知らない、知らない。わからない。ここはどこ?どんな世界?どういう場所?私は、一体。
「なにしてるのー?早く教室いかないとタイガーに怒られちゃうよ」
「ひぇっ・・・え、あ、たい、がー?」
「あ、やば。タイガーって言ってたら藤村先生怒るんだよね。まぁ本人に聞こえてなければいっか」
「藤村、先生・・・?」
「もうすぐHR始まるし。早く2-Aの教室行った方がいいよ」
「あ、う、うん」
見知らぬ女生徒は、いきなり親しげに話しかけてきたと思ったらこちらの困惑などお構いなしに、一方的に話しかけて会話を終えてしまった。そのまま茫然としている私など視界にも入らないかのように歩き去ってしまって、ぽつんと取り残された私はますます困惑を重ねるしかない。・・・彼女とは知り合いだったのだろうか?・・・私、なんで何も知らないんだろう。いや、それが当たり前といえば当たり前なんだけど、ひどく世界がぶれているような気がしれならない。
鈍い疼痛を覚えて眉間に皺をよせ、私は改めて顔をあげた。私の名前は、中村透子。一般人で、極々平凡などこにでもいるような女子高生で、腐女子。でも割となんでもイケるタイプで、しかしながら諸々の事情で一般人の道を外れてしまったというか外されてしまったというか落とされたというか、まぁ、なんだ。平凡返してくれよが日々の望みで、そう、確か、私はマリアン先生と一緒にいて・・・いて?いや、違う。私は、あのとき。
ぞっと記憶が脳裏をかけた瞬間に背筋を悪寒が走り、上がりそうだった悲鳴を噛み殺す。・・・もしかして、私はまた、転生なるものをしてしまったのだろうか?
辿りついた結論に、体中の力が抜ける、茫然と校舎を見上げながら、あぁそうか、と瞬きをした。死んだのだ、あの時。それで、この世界に生まれたのか。いや、でも、この学校に至るまでの記憶がないのはどういうことだ?まるで突然ゲームが始まったかのように、この世界の昔の記憶がない、というのは・・・。
「・・・突然前世を思い出した、とか?」
それで今までの記憶をなくしたとか?え、なにそれすごく面倒。そのパターン初めてですねちょっとどうしたらいいのかな?どうせなら前世など思い出さない方がよかった、と思いながら、ため息を吐いた。まぁ、うん。・・・なんだ。
「教室、行こうかな・・・」
遅刻しても嫌だし。学校にきてるんだから教室いかないとだし。教室の方が考え事には適してるだろうし。幸いにも、あの女子生徒のおかげで自分がいくべき教室は把握できたので、ひとまず落ち着いて考えることができる場所を、と私はとぼとぼと校庭を横切った。
こちらではお久しぶり?ハリネズミ君の方でちまちま小ネタ出してるせいで書いているのかいないのか曖昧な桐林です。
ポケネタコラボを地道に、ね・・・。初代以外正確に把握していないので、なんともいえない感じですけど。
ではではレスでございます。コメントありがとうございますー!
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