忍者ブログ

斜め45度ぐらいで。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「いつか崩れる日がくると」

 お隣さんちの女の子はそれはそれは可愛らしい女の子だった。
 さらさらの亜麻色の髪に大きくぱっちりとした目に桜色のぷっくりと小さな唇と、女の子にしてはやや太めの眉毛はけれど美少女を凛々しく、どこか勝気そうにも見せていて、別に何かを損なうどころかむしろプラスに働いていた。
 声は高く澄んでいて、ちょっと言い回しが高飛車というか、やや上から目線ではあったが、容姿と彼女の家を考えれば仕方のないことだ。彼女の家はお金持ち、まぁ所謂お武家様の家柄であって、町民やら農民とはやっぱり家柄が違うので彼女の仕草口調などなど、極当たり前であり無自覚なことだろう。
 だからなのか、彼女には友達と呼べるような間柄の子が少ない。それは多分にプライドの高い彼女の性格も原因であろうし、彼女の家柄、つまりは身分というものも関係しているのだろう。
 自分たちとは違う世界の人間だと、遠巻きにしている子供はたくさんいる。まぁ、彼女は容姿も整っているので、そういう点でもちょっと近寄りがたいのかもしれない。赤い布地に菊花の咲いた着物は、少なくとも他の子のように外で駆け回って遊ぶような代物ではない。正直汚れたらどれだけお金がかかるか・・・思わず頭の中でパチパチとそろばんを弾くが、女の子らしくおしゃべりが好きなのかよく回る口を閉ざして、むぅ、とばかりに少女は唇を尖らせた。

「透子!私の話を聞いてるのか?」
「あー、ごめん滝ちゃん。聞いてなかった。えーと、剣のお稽古で一番になったんだっけ?」
「それはもう終わった。今は生け花から感じる私の美的センスの素晴らしさを話していたんだ!」
「あぁ、生け花。いいねぇお花。今度見せてよ、滝ちゃんの自慢の生け花」
「ふふん。勿論だ。私の溢れるセンスから生み出される前衛的且つ洗練されたあの花の素晴らしさに透子も感動すること間違いない」
「言うねー。まぁ私良し悪しなんてよくわからないけど」
「それでも私の花の素晴らしさはわかる!なんていったって私が!この私が生けたのだからな!」

 そういってまだ乏しい胸を逸らしてうっとりと酔ったように笑う滝ちゃんに、家柄とかいう前にこの性格がダメなのかもしれん、と認識を改めてみる。いや、慣れればどうってことないっていうか微笑ましいというか、むしろ面白いというか・・・あんまり気にならなくなると思うんだけど・・・。まぁこれは精神年齢も関係してるか、と思いなおして滝ちゃんのちょっと崩れた簪に手を伸ばした。

「滝ちゃん、簪崩れてるよ」
「え?あぁ、ありがとう透子」
「どういたしまして。さて、滝ちゃんそろそろ小川にいかんかね。このままだと日が暮れちゃうよ」
「ん?もうそんな時間か。仕方ない、道中もこの私の素晴らしい才能について話してやろう!」
「なら、この前滝ちゃんが話してた本の内容が知りたいなぁ。滝ちゃんの持ってる本面白いよねー」
「わかった。今度もって来る。ふふ、なら透子が読んだ後は感想の言い合いだぞ」
「いいよ。楽しそうだね」
「あぁ、楽しそうだ」

 そういって、にっこりと笑う滝ちゃんは、口調はいささか男前だったけれども、それはそれは可愛い笑顔なのだった。



 

―――――
四年と幼馴染たっきーバージョン。たっきーはなんか武家のイメージで、あとなんか小さい頃女児服着ていそうなイメージがあります。無事大きくなりますように的な意味合いで女児服着せる習慣あったよね。
傍観主は当時美少女を疑っていなかったけれど適度に大きくなると男子だと判明してカルチャーショックを受けます。「美少女から美女になると信じてたのに・・・」「今の私でも十分美しいだろうが!」「うんまぁそうだね」的な感じで。


PR

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]