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「わたしと たまごと まほうじん」

誕生日のコメント送ってくださった方ありがとうございます。何歳になってもおめでとうの言葉は嬉しいものですね。
レスで返すと時期外れもいいところになりそうなので、とりあえず誕生日コメにだけはここで!
ありがとうございます!


さて更新がまったくできていないのでリハビリがてら小噺を投下です。
utpr傍観主 in ???
とりあえず学園長贔屓なこのサイトどうにかするべき。小話の相手が基本学園長なんだけどどうなのそれ。
さておき、どんな世界に行くのかは待て次回、で。・・・あるのかな?次回・・・。
こーいうのって、日記じゃなくて普通にアップするべき?いやでも続かせる自信がないからな・・。
お試し兼発散場所がここなのでぶつ切りでも唐突に始まって唐突に終わっても大目にみてくださいませ。

「中村、これを社長に渡してきてくれないか」

 呼び止められ、素直に足を止めると切り出された内容に、私は思わず眉を寄せた。きゅっと眉間に皺を寄せて胡乱気に差し出された書類からそれを差し出した日向先生を見上げると、彼は苦笑を零した。

「そんな嫌そうな顔すんなよ。ただこれを渡してくれりゃいいだけだから」
「・・・担任ならいざ知らず、学園長へのおつかいなんて普通生徒に頼みませんよ」

 だって学園長なんて早々学校の表舞台になんて立たないからだ。まぁこの学校は例外にしても、生徒を学園長への使いッ走りにするような学校なんて聞いたこともない。ただの職員室でもない一個人の執務室に行くなど、気後れどころの話でもないし。他の人間使えよ。てか自分で行けよ。そう突き放したいところではあるが、言ったところで素直にそれが叶うこともないのだろう。諸々の不満をぐっと飲み込み、言葉の変わりにため息を吐き出して私は渋々書類を受け取った。

「・・・変なことに巻き込まれたら恨みますからね」
「あー・・・いや、早々滅多なことにはならねぇだろ。大丈夫だって」
「だといいんですけどね」

 何より、私が学園長の元に行くことを渋るのは、彼の奇想天外な行動に巻き込まれるかもしれない、という危惧故だ。巻き込まれたり巻き込まれなかったりやっぱり巻き込まれたり。半ば以上故意的に私に重点絞ってんじゃないか、ってぐらいピンポイントのときもあるので、平時はできるならば関わりたくない。
 出る杭は打っておく主義だ。更に言えば、出る前に徹底的に打ち込んでおきたい主義でもある。
 私の懸念が伝わったのか、日向先生は一瞬なんともいえない顔をしたが、次の瞬間にはなんとも楽観的な台詞とともに頭をぽんぽん、と軽く二、三度叩いて任せたぞ、とひらりと踵を返した。
 まぁ、彼も忙しい身分なので、できる手間は省かせたいのだろうが・・・。それに学園長だって毎度毎度お騒がせなことばかりしているわけじゃないし、ちゃんと意味も意図もあるし(方法が無茶苦茶だが)時々どきっとするぐらい真面目なときもあるし・・・まぁ、なんていうか。

「なるようにしか、ならないか・・・」

 とりあえずいつまでも書類を握っているわけにもいかないので、さっくりと用事は済ませてしまおう。がしがしと乱暴に頭をかいて、一つため息を零すと私も日向先生とは反対方向に向かって、くるりと踵を返した。







 結果、日向先生を恨みますルートに入りかけていますよどうしてくれるの先生あの野郎。
 今はもうどこにいるのかわからない日向先生に怨念を飛ばしつつ、椅子に腰かけ、その膝の上に楕円形の大きなよくわからない模様が刻まれた卵を抱きかかえて、私はざらざらとした殻の表面を手持無沙汰に撫でた。
 目の前では、学園長室の家具類を端に寄せて大きく開けた室内の床に、何やらよくわからない塗料を浸した筆で鼻歌混じりに何かを落書きしている学園長がいる。さらさらと床板を滑る筆はまるで踊っているようだが、書かれているものはさっぱり理解ができない。
 英語なのかフランス語なのかギリシャ語なのか・・・よーわからんな。

「・・・で、もう一度確認しますけど、このたまご、本当にダチョウのたまごとかそういうオチではないんですね?」
「よく似ていますが違いマース。それはMeが召喚に失敗した卵デース!」
「まぁ、現場を偶然ながらも目撃したのであまり疑う気にはなれませんが・・・手品とかの方が現実味がありますね」

 ため息混じりに、たまごを撫でていた手を止めて、そういえばこれ無精卵とか有精卵とかは知らないけど、有精だった場合は冷やしちゃダメなんじゃね?と思いついてきょろきょろと辺りを見渡し、手ごろなものがなかったのでしょうがないな、と呟いてカーディガンを脱ぐとそれで卵を包んだ。どことなく自分の体温なのか、それともたまご自身の温度なのかはわからないが、仄かに暖かいそれを冷やすのは忍びなかったのだ。
 卵をすっぽりとガーディガンで包み、さらに温めるようにより自分の腹部にくっつけるように抱き寄せると、遠い目をしてここに踏み込んだ瞬間に思いを馳せた。
 あのとき、奇妙な力の気配に焦って扉を開けさえしなければ、こんなことに巻き込まれはしなかっただろうになぁ。
 扉越しに感じたそれに何が起きたのか慌てて扉を開けて室内に乱入すると、そこにはなんか光り輝く魔法陣を前にしてうんにゃらもんにゃらしている怪しいことこの上ない学園長がして、なにやってんだ!と叫ぶ前に目を焼くような強烈な光が部屋中を満たしたのだ。そしてその光が晴れたと思ったら、オーゥ、となんか残念そうな学園長の声が聞こえて・・・回復した目で見やれば、すでに光を失った白い落書きしか残らない床の上に、ぽつんと物寂しくこのたまごがあって・・・あぁ、やっぱり信じたくない、そんな超常現象。

「大体、なに召喚するっていうんですか・・・そもそも召喚ってなんですか。科学の時代に非科学持ち込まないでくださいよ」
「世の中はスリルと謎と神秘と奇跡で成り立っているのデース!召喚術があるのも何も不思議なことではアリマセーン」
「十分不思議ですよ、というか仮にあったとしてもそれを成功させないでくださいよ・・・」

 やめてここ普通の現代世界じゃないの?何でもアリな学園長だからってこんななんでもありはいかがなものかと思う。・・まぁ、彼の言い分も理解できないわけではないが、心情的には理解したくない、といったところだろうか。
 むしろ私の状態がスリルと謎と神秘と奇跡で成り立っている気がしないでもない。私平凡な一般市民のはずなんだけどなぁ。
 うっかり遠い目をしていると、学園長は床に走らせていた筆を止めて完成デース!と叫んだ。
 なんだなんだ?

「先の魔法陣を書き換えて新しく送還の魔法陣に変えマシタ!これでそのたまごはばっちり元の場所に戻りマース!」
「あーなるほど。そうですよね、たまごですもんね。親御さんが心配してますよねぇ」

 なんだ、案外まとも・・・いやいやねぇよ。まともじゃねぇよ。うっかり納得しかけたが、もはや様々なことが突拍子がなさすぎる。思わずぺし、とエア突込みをしてしまったが、離れた位置にいる学園長に届くでもなし、私はため息を吐いてたまごを両腕で抱えるとよいしょ、と椅子から立ち上がった。
 まぁ、もう、手段がどうとかは目をつむろう。というか考えたくない。いいよ、私は現実から目をそらすよ。現実逃避万歳だよ。諸々の常識だとか考えていたことを一度ぐしゃぐしゃに丸めてぽいっと頭の外へと放り投げ、さぁたまごをここに!と言っている学園長に言われるまま、怪しいことこの上ない魔法陣に足を踏み入れた。
 ぽう、とわずかにヒトの気配に反応したのか、魔法陣を描く塗料が光ったかのように思えたが、きっと蛍光塗料なんだよ、と言い聞かせて魔法陣の中央に立つ。えーと。

「ここにおけばいいんですか?」
「その中心にたまごをおいてクダサーイ。あとはMeが「テクマクマヤコンテクマクマヤコンたまごさんよ元の世界にお帰りなさーい」と呪文を唱えれば終わり、・・・・・・・・・・・・・・・・あ」
「え?」

 いやそれ某昔懐かし魔法少女の呪文だろ、という突込みは、突如光が迸った足元によって掻き消えた。ぎょっとしてたまごを抱える腕に力を込めて、驚愕に目を見開き学園長に視線を向ける
 彼は珍しくも焦った顔で「オーマイガッ!」とかなんとか叫んでいたが、私はそれどころではない。え、ちょ、えぇ!?

「が、がくえんちょ・・・!」
「中村!!」

 待って、そんなベタな展開、私認めない・・・!咄嗟に陣の外にいる学園長に救いを求めるように手を伸ばすと、学園長は珍しくもあの高いトーンではなく低めの、そう、真面目な場面で見せるあのトーンで、私に向かって手を伸ばした。
 だが、互いの手がふれあうことは指の先ほどにもなく。まるで、その間を邪魔するかのように、届かせない、とでも主張するように。最初にこの部屋で見たのと同じぐらい、いや、丁度ことの中心にいるせいかそれ以上の光によって。
 世界がすべて白に埋め尽くされると、私の意識はぶつんと黒に塗りつぶされた。


 嗚呼・・・・やっぱり日向先を恨むほか、ないな・・・。

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