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必要なものをメモをした紙を持って、物資補給のために立ちよった島は、特別栄えてもいないが、かといって廃れているわけでもない極普通の港町だった。
基本的に、私もジュラキュールさんも物欲には乏しく、島への立ち寄りは本当に必要なものを買い揃える、という意味合いが強い。余計なものを買うことも少ないのだ。
資金は保護者が保護者なだけに恐らく事欠かないのだろうが、しかしながら必要なもの以外を買う異議が見出せない状況だ。なにせ基本的に過ごすのは船の上。引いては海の上。しかも近くにいるのは無愛想な男が一人。・・・・・・・・・・どないせぇっちゅうねん、という感じだ。
さてもとにかく、当面必要な物資の購入に一人(彼が買い物に付き合うことはほぼない。ていうかいると逆に迷惑)町を練り歩き、大量の荷物をゴロゴロと荷車に載せて押し進む。
いや、さすがに何か月分となる食糧を人の腕だけで持ち運びするのは不可能なので。こういうとき、荷物持ちがいればなぁ、と思うが荷車で事足りる範囲なのであえてあの人を借り出そうとは思わない。
というかあの人堅気の空気じゃないからいると悪目立ちするんだよ。たまに剣士だか賞金稼ぎだか海賊だか知らないが襲い掛かってくる人いるし。時と場合を考えて行動して欲しいものだ。そして私を巻き込まないで欲しいものだ。いや、巻き込まれる前にほとんどが瞬殺されているんだけど。でもやっぱり、そういう空気はできるだけ感じたくないし。
ガラゴロガラゴロ、車輪が音をたてて砂利道を進む中、ふと道端にハンドバックが落ちているのが目に入り、はて?と首をかしげた。誰かの落し物だろうか。それにしては大きな落し物だこと。
そう思いながら、進路方向上どうしても荷車の邪魔になりかねないバックに足を止め、ひょいと拾い上げればずっしりとした重みが手首にかかり、なんだろう?と首をかしげた。
重い袋を揺らすが、音はしない。しかし重い。・・・・はて?不思議に思いつつ、とりあえず落とし主の情報はないものかと鞄をためつすがめつ、くるくると回しながら確認してみるが、生憎と名前なり印なり身元がわかるようなものは入っていない。うーん、と唸りながら、気は引けるが止む無し、とばかりにバックのチャックに手をかけ、ジーーー、とジッパーを引っ張った。
開いた口を開き、中身の確認を行う。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。
「なんちゅー大金なんだ・・・・・・」
うおおおおい!誰か知らないが、なんてもん落としてるんだよ!鞄の中にはぎっしりと詰まった札束があり、思わず二度見してそれから慌てて周りを確認し、ジッパーを閉じると、私は変に焦る気持ちで鞄を両手で胸に抱きかかえた。うわぁ、うわぁ。どうしようさすがにこんな大金持ってるのが怖いよ・・・!
誰か店の人の落し物だろうか?お金下したばっかとか?まさかヤバイ仕事してる人たちのじゃないよね?いや私のバックも相当ヤバイ人なんだがそれとはまた別次元の話で!
ぐるぐると取り留めの無いことを考えながら、大金怖い、と恐れ戦きつつ、とりあえずこれはお回りさん、まぁここでいうなら海兵になるとか自警団とかその辺になるとして、まぁそれに預けるのが妥当だろう、普通の鞄のはずなのに突如として重要物と成り果てたそれを持って、詰め所に向かうかぁ、ととほりと肩を落とした。
全く、本当に誰だよこんな大金落としたの!注力散漫!ていうか落すとか信じられない!!
そう思いながら、詰め所に向かうために顔をあげた刹那。「ああぁぁぁああああぁぁぁ!!」と大きな声が聞こえてびくり、と肩を跳ねさせた。
「財布ーーーー!!!」
「うえ?!」
吃驚して声がした方向を向けば、明らか船乗りですよ!みたいな格好をした男の人が、びしぃ、とこちらを指差して目を真ん丸く見開かせていた。その様子に目をパチクリさせていると、物凄い勢いでやってきたその人は、私の手ごと財布を掴むと、見るからに安心したかのようにほっと胸を撫で下ろした。
「よ、よかったぁぁぁ!お嬢ちゃんが拾ってくれたのか?」
「え、あ、はい」
「ありがとな!それなかったら隊長にどやされるところだったんだ!」
「そ、そうですか・・・」
「あぁぁぁ見つかってよかったぁぁぁぁ」
最早涙目の状態で鞄・・・彼曰く財布にすりすりと頬ずりをする様子に、よっぽど怖い人なんだなぁ、と思いつつ、いや当たり前か、と考え直した。だってこんな大金、落せばそりゃ誰でも怒るわ。むしろ落すほうが信じられまい、と思いつつ持ち主が見つかってよかった、とこちらとしてもほっと胸を撫で下ろした。
例えこれが実は偽者でした☆とかになっても、私に判断などできるはずもないしそこまでの責任は持てない。何より大金を持ち歩かなくて良いという安心感に重圧から開放された心地で、財布を胸に抱きしめて浸っている彼に、にこり、と笑みを浮かべた。
「落とし主が見つかってよかったです。駐在所に持って行こうとしていたところですから・・・」
「そ、そっか!ギリギリセーフだったな・・・」
「そうですね。それでは、私はこれで。もう落さないように気をつけてくださいね」
「あぁ。本当に助かったよ、お嬢ちゃん」
何故そこできょどるんだろう、と思いつつ、もしかしたら脛に傷持ってるタイプの人なのかなー?と推測しながらも下手なフラグは自滅と知れ、とばかりに深くは考えず、片手をあげてその場に背中を向ける。
相手もにっこりと満面の笑顔で手を振るぐらいで、私は再びガラゴロガラゴロと荷車を押してその場を去った。買い物した分、いささか車輪の進みもぎこちないものの、買うものはまだあるのだ。
懐からメモを取り出し、チェックのしていない部分に目を通しながら、そういえば今日のお昼何にしようかな、と思考を馳せた。こってりよりあっさり系がいいよなぁ・・・うーん・・・・何がいいかなぁ。
思考が主婦染みてるとかそんなの気にしないもんね!
☆
「おーい、財布見つかったのか?!」
「あ、エース隊長!はい、見つかりました!ちっこい女の子が拾ってくれてたんすよ」
「おー!そっか、よかったなぁ!これでマルコにどやされずにすむぜ!」
「ホントっすよね。落としたときは肝冷やしましたよ・・・。これなかったら買出しもできませんし」
「全くだな。いやでも何時の間に落としてたんだろうな?」
「多分そこらでチンピラに絡まれたときだと思いますけど・・・」
「あぁ。あん時か!・・・・・とりあえず、財布落としたことと暴れたことはナイショな!ばれたらマルコがうるせぇし」
「マルコ隊長、散々注意してましたもんね・・・」
「な!な!ぜぇったいナイショだからな!」
「俺も怒られたくないんで」
「よし。じゃ、買出し行くぞー!」
「ッス!」
決して大きくは無い町で。それでも、出会う確立なんて微々たるものなんでしょうね。
海賊だから、人目にあまり触れない場所に船を泊めるだろうし、白髭なんてそれこそどでかいから、港から遠い位置に本船があって、小船で買出しとかして目立たないようにしてるだろうし。
だからきっと、どっちも気づかないままで、こういうこともあるかもしれない。
そして私は鷹の目と買い物とかはしたくないです。あの人目立つ。というか想像できない。
基本無表情で真顔が標準装備の男と何が楽しくてショッピングせねばならんのか。
雰囲気も異様というか威圧的だろうから、うん。買出しのときとか、ついてこようとしても傍観主は笑顔で「船にいてください」とか言ってそうです。出かけるにしても基本別行動だと思います。
鷹の目を荷物持ちにさせるのも楽しそうですけどね。傍観主は人の目が気になるのでさせないでしょうよ。
でもたまに鷹の目が連れまわすかもしれないね。「欲しいものは無いか」「最新型の洗濯機が欲しいです」会話に花がないけど、多分鷹の目買ってくれると思うよ。
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