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「癒し系!」

「すまん、お嬢ちゃん」

 そういって、ぐっちゃぐちゃに潰れたオレンジの残骸と私を交互に見たおじさん・・・・明らか人類という種族ではなさそうな、青い肌をした般若みたいな顔をした人は、大きな体を小さく丸めて、大層申し訳なさそうに頭を下げてきた。厳つい顔をしておきながら、そしてこの巨体で、なんと低姿勢な御仁だろう。
 普段唯我独尊な残念な人を相手にしているだけに、そのたかがオレンジの一つを踏み潰した程度でこんなに申し訳なさそうに謝ってくる人がなんだか珍しいことのように感じる。いやこれ多分普通のことなんだと思うんだけどね!なんか知り合う人知り合う人基本我侭っていうか、世界を俺中心で回してやんぜ!みたいな性格の人が多くて本当疲れるんだよね・・・。
 厳しい顔しておいてなんとも心温まる様子に、思わずほっこりとした気持ちになりながら私はにこ、と笑みを浮かべた。

「気にしないでください。落としたこちらも悪いんです」
「じゃが、折角買ったものをこんなにしてしまって・・・」
「不可抗力ですから、気にしていませんよ。お言葉だけで十分です」
「いや、しかし弁償を」
「いえいえ、本当にいいですから。オレンジの一つや二つ。それよりも、そちらこそ足元が汚れてしまったと思うんですが・・・」

 盛大に踏み潰してたものな、オレンジ。巨体からくる体重からみてもそりゃ盛大にぐしゃっと果汁と果肉が飛んだぐらいだ。服とかに跳ねてたらどうしよう。
 眉を潜めると、おじさんは巨体をカカと震わせて、それこそ心配には及ばんよ、と丸めていた背筋を伸ばした。ぽよんとしたお腹が魅惑的ですね。

「草履なんぞ汚れてなんぼ。この程度汚れのうちにも入らん」
「でも・・・服とか、裾に飛んでいるのでは?」
「そんなちぃさな汚れ気にもせんよ。お嬢ちゃんはいい子じゃな」

 そういってくしゃくしゃと顔に皺を寄せて笑う顔は厳つい顔とは裏腹に柔和さがにじみ出ていて、なんだかほっと和んだ。人は見た目じゃないね!見た目まんまの人もいるけどね!
 ふとドピンクな人が思い浮かんだが、即座にそれを頭から消して、それならいいんですけど、と小首を傾げる。おじさんは目を細めたまま微笑み、そしてその大きな手で私の頭をガシガシと撫でてきた。・・・なんか撫でられる回数多いよなぁ。小さいからか、小さいからなのか。いやしかし、この世界の人は基本的に人類として到達してはいけない高さに到達していると思うんだけどね。
 そう思いながら、他人ながらよほど安心できる掌にうっとりと目を細めた。




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