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あのドピンク男、マジ面倒なもの残していきやがった。
うっかり内心で悪意を篭めた恨み言をぼやきつつ、目の前で正座して懇々と説教を続けるジュラキュールさんに、出そうになった溜息をぐっと飲み込んだ。ここで溜息など出そうものなら無駄に長い説教がまた伸びるに違いない。というかこの人こんなに話せたんだ、という軽い発見をしつつも、うんざりとした気持ちは隠せなかった。
いつもは必要なことすらも単語程度で伝えるだけで大して会話なんて成り立たないくせに、なんでこういうときだけ流暢に話し始めるんだろうこの男。正座は別に慣れているので苦ではないが、それでも延々とお説教を聴かされる正座は如何ともしがたい。更に言うなら、説教内容が「妻たるはこうであれ」というぶっちゃけ何をいきなり言い始めたのこの人、とドン引きするような内容なのだ。聞き流しは可でしょうか。
でも時々「聞いているのか?」とか言ってくるのでうかうかスルーもしていられない。だからといって、「妻たるもの貞淑であるべき」とかうんたらかんたら、お前さんは見た目十二歳に何を求めいているのだね、とこちらが逆に問いただしたいぐらいだ。
夫以外の男を優先するなど言語道断とか、どこの亭主関白。ジュラキュールさん、今時それ流行らないよ。というかユキ先輩たちの前でそんな発言とかしたらフルボッコフラグは免れないだろう。
あの時代、男尊女卑がまかり通る時代のはずなのに女子のヒエラルキーの高さ半端ないし。くの一超強ぇ。というかこの世界も女子の強さ半端ないし。・・・・・・・女子強し、という認識を改めつつ、しかしながらそれが自分にも適応されればこんなわけのわからない状況も打破できただろうに、と思わずしょんぼりと項垂れた。
もっと強ければ、彼に強く出ることも出来ただろうに・・・・・・・そもそも私あなたの嫁さんじゃないっていう根本的なツッコミから、さ。いやもう本当に、この四十路そろそろいっちゃうようなオジサマは十二歳、現代ならまだ小学生でまかり通るお子様に向かってなんで嫁発言かました挙句自分ちゃっかり夫の位置についているのかしらね。私あなたと籍いれた覚えもなければ結婚した記憶もないですよ。
中身はともかく年の差考えろー。せめて娘と父親設定にしようよ。何故ぶっ飛んで嫁にいったんだ。
それでいいのか世界一の大剣豪。ロリコンのレッテル貼られるぞ大剣豪。なんて残念なんだ大剣豪。そもそも私にも夫を選ぶ権利があるはずなのに有無を言わさないこの流れはなんなのか。
突っ込みたい、根本的問題に突っ込みたい。だけど言えないチキンな私をどうか許して。しかしこのままだとなんていうか、うん。・・・・・・・・嫁確定されそうで怖いんですけど。しかし否定をしても通じるのかどうか。
この人、いらんところで天然というか、会話が噛み合わないことがあるからな!(すでにこの説教タイムに入る前でさえ噛み合わない会話を繰り広げたところだ。「アナタ(二人称)」は断じて「あなた(夫を呼ぶ二人称)」の意味ではない)
至極先の見えない様子にどんよりとしていると、流れるように続いていた要約すると「旦那様を優先させなさい」的な説教がピタリと止まっていることに気づき怪訝に思いながらそろそろと顔をあげた。
この人基本が真顔なもんだからぶっちゃけ顔怖いんだよね。通常モードならまだしもお説教されながらやたらと鋭利な目で見られると萎縮しちゃうっていうか。びくびくしながら窺うようにジュラキュールさんの顔を見ると、彼はむっつりと口をへの字に結び・・・・ちょっと焦った様子でむぅ、と口を閉ざしていた。
はて。この真顔標準装備の男の顔色がわかるようになってきた自分に天晴れと言えばいいのか、どうしたんですか?と問い返せばいいのか・・・・どちらが正解なのか。
こてん、と首を傾げると、ジュラキュールさんは珍しくも視線をうろ、と少しばかり泳がせてから、ぎこちない様子でまぁ、いい、と口を開いた。
「・・・・以後、気をつけるように」
「・・・はい」
語尾によほどクエスチョンマークをつけたかったが、ここでそれをするとまた面倒な説教タイムに入りかねないので、なんでこんなほっとしたような顔をしているのかわからないながらも神妙なフリをして頷く。
ようやく終わった説教にほっとしながらも、とりあえずお腹が減っているだろう彼のためにご飯を炊きなおすことから始めねばならない。・・・まぁ、私も、普通に家主差し置いてあんな怪しさ大爆発のピンク男にご飯全部あげたのはまずかったかな、と思わないでもないのだ。嫁とか旦那云々はさておき、一応お世話になっている身なのにそれはちょっとなぁ、とか。嫁とか旦那とかはさておき、まぁ別に、彼を優先させることは何も間違ったことではないと思うし。嫁とか旦那はさておき、恩返しの意味合いでは要求は普通のものだろう。嫁とか旦那はさておき。大事なことなので何度も言うよ!
「今後あの男は船に上げるな」
「あぁ、それは。はい。善処します」
しかし善処してもどうにもならないタイプな気もするので、今後近寄らないことを祈るしかないだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まぁ、なんか、色々手遅れなのかなぁ、って、思ったりもしてるんだけど。
正座から立ち上がり、椅子に座って新聞を広げ始めたジュラキュールさんを見つめながら、はぁ、と今度こそ殺していた溜息を大きく吐き出した。嫁って、どうやって否定して言ったら通じるのかな・・・。
諦めるしかないのだろうか、いやそれでは私の今後が!と思いながら、最終的にもうどうもでいいや、で終わらせてしまいそうな自分に、ちょっと遠い目をしてしまった。・・・やってること別に何も変わらないだろうしなぁ。あーあ。大剣豪、色んな意味で残念だ!
あまりにもフォムメコメントの突撃晩御飯その後の二人の会話例文が楽しすぎて。
そのシーンは書かないけど、正座して説教云々のところだけ妄想してみた。
内心で全力否定に走るけど表に出さないので結果的に暗黙の了解になっている気がしなくもない鷹の目と傍観主でした。
桃鳥さんは本当に面倒しか残していかないですね。立つ鳥跡を濁しすぎていて傍観主の疲労度が半端ないことになりそうです。
このサイトの鷹の目さんが残念な人になってきているっていうかどうしようもない大人すぎてどうしよう。
ちなみに途中で終わったお説教は、傍観主が「まじこれどうしよう」と項垂れているのを「しまった言い過ぎたか」とちょっと焦ってる鷹の目による勘違いによる強制終了です。別に傍観主はダメな妻でごめんなさいな意味で落ち込んではないですよ。あなたの残念っぷりにしょんぼりしてるだけですよ。
こうしてお互いに微妙に噛み合わないままなんだかんだ過ごしていく羽目になるのだろうなって思います。
最終的に傍観主が「嫁ではないですけどもうなんでもいいですよ」と投げやりになりそうな予感がビンビンです。
次!書くなら傍観主の癒し担当になりそうなジンベエさんいきたいと思います!
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