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カツカツカツ、と高いヒールが冷たい大理石を強く踏みつける。十センチ近くはあろうかという高さながら、バランスを崩すこともなく白く形良いふくろはぎをスリットの入ったドレスの横からちらちらと垣間見せて、彼女は柳眉を寄せると目の前の扉をノックもせずに開け放った。ばん、という慌しい音をたてなかったのがせめてもの理性か、けれども顔を不機嫌と苛立ちに染めて部屋の中をぐるりと見渡す。そうして見つけた姿に片眉を動かすと、毛の長い絨毯に靴先を埋めながら、音もなく近づいた。
「アーノルド兄様」
「クリステアか」
高く澄んだ鈴の音を思わせる声が、静かな室内に響く。その声に応えるように張りのあるテノールが淡々と紡がれれば、その足元に跪く存在が体を震わせた。それに一瞥をくれてやることなく、柔らかなミルクティ色の髪を揺らして、クリステアはアーノルドの横に並んだ。
「透子がまた熱を出したと聞いたけれど」
「あぁ。今はベッドで静かに横になっているよ」
「そう。で。何故これはまだ生きているの?」
言いながら、ヒールの靴先が足元に膝をつく男の頭を強く蹴り付ける。強かに蹴られた男が呻きながらもんどり打って背中から後ろに転げると、それこそ羽虫の一匹でも見るような冷えた目でクリステアは不愉快そうに眉を潜めた。その様子を、それこそ眉の一つも動かさずに淡々と見届け、痛みと恐怖でガチガチと震える男にアーノルドは淡々と口を開く。
「どう殺してやるのがいいかと思ってな」
「そんなもの。さっさと殺してしまえばいい話。こんな役立たず、生かす意味もなくってよ」
ひぃ、と男の口から悲鳴が零れる。即座に仰向けになった体を元に戻し、膝をついて床に額をこすりつけるようにして懇願を口にする姿は、いっそ哀れみを誘う有様だ。けれども、その姿すらまるで羽虫の一匹程度に過ぎないとばかりに、クリステアの桃色の唇が皮肉に吊りあがった。
「透子の傍に置いてやったというのに、その役目すら満足にこなせない愚図など、殺し方を思考する時間すら勿体無い。そんなことに時間をかけるぐらいならば、もっと別のことに使うが有意義ではなくて?」
「あの子の近くにいながら役目を果たさなかったからこそ、その罪を知らしめるべきだろう?現にあの子はこうしている間も苦しんでいるというのに、これを早々に楽にして良いものか」
方法が違うだけで、結末として男に用意されているものに違いはない。己に間近に迫る死という現実に、男の背筋が震え上がった。ガチガチと会わない歯の根を鳴らすと、アーノルドはそうだな、長い指先を動かして近くに立つ兵士に声をかけた。
「これをバナナワニの巣に入れて来い。あぁ、大人ではないぞ。子供のだ。あの大きさならば、丸呑みになどされずに四肢を食い千切られながら餌になるだろうよ」
くつりと、その時初めてアーノルドの口元が笑みを浮かべた。刹那、兵士の了承の声と男の悲鳴が重なったが、男の方は眉を寄せたクリステアの閃いた靴先で更に苦悶の色を宿すことになる。
「あぁ、五月蝿い。お前達、早くその役立たずを連れておいき!」
甲高く叫んだ苛立ちに、兵士が素早く動いて粟を食って叫ぶ男を連行していく。彼らもまたわかっていた。いつその苛立ちが自分達に向けられるかもわからない、綱渡りのような空間にいることを。
自分が被害者にならないために、彼らは無情な対応で素早く男を部屋の外へと連れ出し、静かに扉を閉める。部屋の外から「御慈悲を!アーノルド聖、クリステア宮!!どうか御慈悲を!!」と声が聞こえたが、しかしそれもまた遠ざかるのみ。部屋の中に残された二人は、やがて細く息を吐くと苛立たしげに顔を顰めた。
「あぁ、どうしてあの子の周りにはあんな役立たずしかいないの!?他の医師もすぐに処罰したのでしょうね?!」
「ナース諸共な。それにしても、今宵は折角あの子もパーティに出られるはずだったというのに・・・」
「そうよ!折角珍しくも透子が行くと頷いたというのに・・・っ。あぁ、やはりこの手で殺してやるべきだわ!お兄様っ」
「医師はバナナワニの餌だ。ナースならば好きにすればいい」
「ふんっ。お前達、ナースのいる部屋に案内なさい」
激昂する妹とは対照的に、淡々と冷えた目で告げる姿はまるで氷の彫刻のようだ。それに鼻を鳴らして踵を返すクリステアの背中を見送り、アーノルドはサイドテーブルのティーカップを持ち上げると、中に注がれた琥珀色の紅茶をじっと見つめ、きゅっと眉を潜めて見せた。
「・・・役立たず共が」
吐き捨てた言葉に篭められた冷淡な憤怒を傍近くで聞いた兵士は、その体を鎧の下で震え上がらせた。
例えばそう、その事実に実は一番震え上がるのが、よもやその原因だとは、知る由もなく。
―――――
名前を教えて頂いたので。あと兄と姉のネタもいい感じに頂いたので。
あ、アドレスは届いてますよ。また週末にでも時間が取れたら感想を送らせていただきますv
とりあえず基本過激な天竜一族です。あの特徴的な語尾は大変なのでいたって普通に喋らせてます。
妹大好きすぎてこの人たち怖い。な感じに仕上げればいいなと思いました。
どっちかというと兄・変化球。妹・直球。な性格の振り分けです。どっちにしろ結末は同じだけどその過程にドSが潜むか潜まないかの違いっていうか?
ちなみに下の双子は直球過ぎて変化球です。自分達で直接虐める派。虐め方がえぐいとかそんなん。
というか下が双子とか。私もなんかこう、双子っぽいなぁと思ってました。それか年子とか、とりあえずすごく年の近い姉弟な感じでした。以心伝心!
というか、夢主の胃が心配です。寝込むたびに医師の顔ぶれそう入れ替えが茶飯事過ぎて自分の体調が悪い=他人の死という連鎖にすでに心が折れそうな気がします。
好意の行為が、結果的に夢主を自分のせいで、と追い込ませてますよね。だから病んでいくんですよね。
夢主付きの医者は絶対夢主が憎いね!医者にとっての死刑宣告に近いわけだし。夢主にその気はなくても体調崩れたらそうなっちゃうわけだし。自分が寝込んでいるときに全部終わっちゃうから助けられもしない。夢主としては本当に、辛い位置だよなぁ。
寝込むたびにごめんなさいを繰り返す。うん。病んでいくよねこれは・・・。
家族の愛は夢主を追い込むしかないのが空回り過ぎてなんとも言えない。家族思いでは、あるんですけどねぇ。
あとルフィの兄弟ネタも楽しそうです!傍観しながら巻き込まれってなんだwww面白いことになりそうな予感がムンムンです。
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