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「透子は、私が絶対守るからね」
私の手を強く握りしめ、悲壮さの中に強い決意を込めて言い切った姉さんに、私は返す言葉もない。きょとんと目を丸くする私は、姉が何故そんなにも切羽詰った顔をするのかがわからず、また、いきなりそんなことを言われたせいか、こてり、と首を傾げるしかなかった。そんな私に微笑みかけて、姉さんはきゅっと唇を引き結ぶと強く握った手を放して踵を返した。姉さん?と呼びかければ、姉は首をそらしてこちらを向いて、ちょっと部屋に籠るから、とそれだけ言い残して自室へと入って行ってしまった。・・・もうすぐご飯なのに。
それでも、ひどく思いつめたような様子に引き止める言葉を持たない私は、そう、と一言返すしかできなくて、部屋の中に消えた姉の背中を見送ると無意識に姉に強く握られた右手の甲を撫でた。
「・・・なんでこうも、縁が切れないんだか」
一つ、ため息ついて己の手の甲を見下ろす。そこにある、赤い文様に、きゅっと眉を寄せて隠すように左手で覆うと、まさか姉はこれが何か知っているんじゃ、と閉ざされた扉を見つめた。まぁ、見たところで姉が顔を出すはずもなく、疑問も解消されないまま、また手元の問題も残ったまま、私は一度首を横に振って諸々のことを追い出すと、ひとまずお茶でも飲もう、とキッチンに赴いた。
電気ポットの中のお湯を急須に注ぎ、コップにお茶を注いでいそいそと炬燵に足を突っ込んだ。あー炬燵はやっぱいいわぁ。コップを両手に包みこむようにして手に持ち、ちびちびと口をつけてほう、と吐息を零す。
うむ。
「ないわー」
落ち着いたところで手の甲を見下ろして、突っ伏すように炬燵の天板に頬をくっつけた。これってあれだろ?ほら、なんか知らないけど私ここに何回か転生しちゃってるけど、その度に出てるあれだろ?・・てか同じ世界に何度も転生ってのは初めてなんだよな・・・。まぁ、結局どれもこれも悲惨な結末だけども。うん。この世界まじないわー。
それでもって、主に悲惨なことになるのはこれのせいだよねっていう。・・・なんぞ私に恨みでもあるのかって感じだよね。私なにもした覚えないですけど。ないわー。もうないわーとしか言いようがないぐらいないわー。
「それでもってやっぱり龍脈の汚染酷いし。聖杯この野郎って感じだし。なんか色々泣きついてくるし。知らんがな、もう」
これでも小さいころからちまちまちまちま草の根活動はしてるんですよ。まぁ、大本どうにかせにゃどうにもならんわけだが、さすがにいきなり突撃かますとか・・・ただの馬鹿だよそれ。軽くトラウマだしあれ。くっそあの泥め・・・。
ぐちぐちと文句を連ねながら、これどうしようかなぁ、と思考を巡らした。教会に行けば確か返却はできるらしいし・・あーでもなんか前は変な連中に襲われたんだよね。なんだっけ、誰それを助けろとか冬木あぼん回避とか、あと原作を壊すなとか・・・うん。わけわからんな。
早々にこの危険物をどうにかせんと。またあんなのに絡まれたりしたら嫌だし。教会に明日行って・・・そういえばあそこの神父がマスターになってったっけな・・・。あんまり性格もよろしくない感じだったし。てかランサー召喚した時はあれとアーチャーがやらかしてたよな・・・あとセイバーのマスターと・・・うん。近づかない方がいいかもしれない。
ってことは誰かに譲渡?・・・前譲渡したのに殺されたからな・・・。いやサーヴァントが戻ってきたからなんだけど。まぁでも、性格が合わないんなら仕方ないよなぁ。うーん。うーん・・・・・・まぁ、とりあえずこの令呪は隠すべきだな。刺青とか思われても嫌だし。でっかい絆創膏あったかな。
そう思い至って、救急箱を探そうと腰を浮かせると、ばん、といささかの勢いをつけてリビングのドアが開け放たれた。姉さん、ドアは静かに開け閉めを行うものですよ。腰を中途半端に浮かせた状態でびくっと肩を跳ねさせて振り返った先には、眉間にきつい皺を寄せて片手にA4の用紙を握りしめた状態で、姉さんが立っていた。・・・何事?
「透子、お願いがあるの」
「え?なに?」
怖い顔をして、こちらに歩み寄ってきた姉さんはそういって炬燵の上にA4のコピー用紙を置いた。必然的にそのコピー用紙を見下ろせば、そこには何やら見覚えのある魔法陣がプリントされていて、ぎょっと目を丸くする。・・・え?
「本当は、こんなことに透子を巻き込みたくないしさせたくもない。・・でも、きっと、生き残るためには、これが一番可能性が高いはずだから」
「え?え?姉さん?」
「わけわかんないと思う。頭可笑しいんじゃない、って思うと思う。でも、透子。お願い。私を信じて」
そういって、ひどく真剣な様子でとつとつと話し始めた姉に、何故姉が聖杯戦争のことを知っているんだろう、と思ったけれど。もしかしてうちって、私が知らないだけで魔術師の家系だったのかな?と首を傾げた。ただの一般家庭かと思ったんだが・・・違ったのか。うーん。だがしかし姉さんよ。サーヴァント召喚って言われても、A4のコピー用紙の魔法陣じゃ、さすがに無理だと思うよ・・・?
手渡された詠唱文がやっぱりプリントアウトされた用紙を手に持ちつつ、私はまぁ、正直出てこない方がいいだろうしな、とため息交じりに、姉のお願い、とやらを叶えるために、コピー用紙に目を滑らせた。
私は、認識を間違えていたようだ。いや、気づくのが遅すぎた、というだけの話であろうか。
どちらにせよ、最早逃げも隠れも後戻りもできないのは明白だ。
「龍脈が汚れていた」から、聖杯が汚れたのではない。
「聖杯が汚れていた」から、龍脈が汚れたのだ。
まさか、優勝賞品そのものが原因だったなどとは、とんだ盲点である。おい開催者、商品の点検ぐらいしとけ。・・まぁ、その管理者もすでにこの世にいないらしいので、今更の訴えであろうが。
だから万能の願望器なんて、信用ならないんだ。悪態を吐いても、答える声はない。いや、近くに人はいるのだが、あまりの事実に言葉もないようだ。私とて、絶句していられるならずっとそうしていたい。けれども、現状はそうはさせてはくれないようだ。
目の前で怨嗟の声を響かせるどろりとした大量の泥が、聖杯という器から溢れてくる。
恨み憎しみ悲しみ狂気絶望嫉妬、ありとあらゆる負の感情を「泥」という形で現界させ、そうして町を覆い尽くさんとその魔手を伸ばしている。あれに触れてはいけない。触れてはあるのは死という絶望のみ。よしんば生き残れたとしても、泥の呪いで蝕まれていくことに変わりはないだろう。
そもそも、聖杯のシステムそのものが歪みの原因だ。東洋でいうなら、蠱毒という呪いの術式となんら相違のない、他者の願いを貪り為す奇跡。そんなもので叶う願いなど、歪んでしまうのも仕方ないだろう。
あぁ、だから、本当に、なんでも願いが叶うなんて眉唾ものの存在なんて、信じちゃいけないんだよな。
溢れていく泥が町を覆い尽くしていく。それが完全に町を飲み込めばどうなるかなど、わかりきっていた。そうして、それが為されれば、この土地が真の意味で死ぬだろうことも。
選択肢はここにある。手元の手札を切ってしまわなければならない。選べ。未来を。結末を。
後ろを振り返る。私の後ろには、二人の男が立っていた。いや、一人は、愕然と地に膝をついて、その瞳を見開き、その死んだ瞳に泥と炎を映して絶望していただけだけれど。もう一人は、やはり茫然と、地獄と化していくだろう町を、見つめていたけれど。――もしもここに、私一人だけで、あったのならば。
「―――令呪を持って命じる」
手の甲が熱を持つ。赤い光が輝きを増して、はっとしたように視線が注がれた。主、と後ろで焦ったように呼び掛けられる。それに振り向いて、目を見開くランサーと、思考が追いついていないかのように、茫然としている衛宮切嗣を視界に収めた。
「ランサー。セイバーのマスターを連れてこの場から離脱。その後、聖杯を介することなく、座に戻りなさい」
「主!?」
「なっ」
驚愕に目を見開く衛宮切嗣とランサーを見つめて、小首を傾げる。赤い光がランサーの包むと、彼はひどく焦燥に駆られたような必死の形相で首を横にふった。
「主、なりません!!逃げるのならば、あなたも共に!!」
「な、にを考えてるんだ君は!ここにいれば、君まであの泥に飲まれるんだぞ?!」
そういいながらも、ランサーは令呪の魔力に抗えないかのように、衛宮切嗣に手を伸ばしていた。しかし、懸命にそれを抑えようとする姿に、困った子だなぁ、と苦笑を浮かべる。
「ランサー」
「ある、じ・・・!」
「忠義を、尽くしたいと、言っていたね」
「・・・っ」
「なら、お願いだよ。私の願う通りに。私の望みのままに。・・・私を主と思うのならば、どうか私の願いを叶えて」
ひぐ、とランサーの喉が鳴った。見開いた琥珀の瞳は一瞬暗く淀み、僅かに開いた唇が何か物言いたげに震え。けれど、最後には言葉を飲み込むようにきつく噛みしめると、喚く衛宮切嗣を肩に担ぎ上げた。ひょい、といとも容易く俵担ぎされた本人はぎょっと目を剥いて暴れたが、まぁ、普通の人間とサーヴァントの力量差なんてそれこそわかりきっているので、無駄な抵抗というものだ。そのままくるりと後ろを向いたランサーに、見えないだろうけれど笑みを浮かべる。
俵担ぎにされた衛宮切嗣は、丁度私と向かい合う形になったが、私の顔を見るとひどく苦しげな顔をして唇を噛んだ。
「ここに残って、どうするつもりだ・・・!」
「できることをします。・・・あなたも、今、あなたにできることをしてください。きっと、あなたの手を待っている人がいますから」
「・・・っ」
「ランサー」
「はっ」
「お願いね」
「・・・・御意」
短い返事を残して、ランサーの姿が消える。英霊のスピードなんぞ目で追えるわけがないので、まぁきっと走り去ったんだろうなぁ、と思いながら迫りくる泥を振り返った。
「・・・二人がいなきゃ、逃げてたかもね」
一人だったら、怖くて怖くて、死にたくなくて。逃げだしていたんじゃないかなって。思うけど。まぁ、結局、現実はここに一人で残っているのだから、IFなんて意味のないことだ。
「――巡れ、天の声」
ウェイバー君が戦線離脱していてよかった。さすがに事の顛末を伝える術はないけれど、彼のことだからきっとなんらかの形で気づくだろう。そうすれば、彼が聖杯をなんとかしてくれないかなぁ、って思ったり。こんなもの、さっさと廃止になっちゃえばいいのにね。
「――響け、地の声」
ソラウは怒るだろうか。泣くだろうか。アーチボルトの家は大丈夫だろうか。まぁ一応時期当主候補は決めてたし、刻印も戦争前に返却してたから問題はないと思うけど。やっぱり、戦争なんて何が起こるかわからないね。まぁ、こんなことになるとは誰も予想だにしてなかったとは思うけど。友人の泣き顔は辛いな、と思いながら、眩い光に、目を細めた。
「彼の者を、封ぜよ」
あの日、生き残った人はいう。
真っ白な龍が、冬木の空を昇って行ったのだ、と。
今日の更新
◎Longに水鏡の花水宴の花(utpr)編アップ。
冬ちゃんにチャレンジ!
してみましたけど顔文字とかなんか色々難しい上になんか流れがいまいちわからない。想像以上に難しいね、これ。
こんな感じ、なんですかね・・・?うーん。ほんとよくわからないよ。
まぁ基本が俄かすぎてどうもこうもな感じではありますが・・・。
あ、ちなみに成り代わりでも出戻りでもなく、また別バージョンの傍観主のネタです。
でも安定して傍観主はスレ立てなんかしませんので。つまり傍観主の身近な人間がスレ立てしたよ!って奴です。傍観される傍観主。そしてそれを傍観する傍観主。
まぁ、本来なら傍観主の身近な人に0-10が出て、それを傍観主が見てるっていうスタンスが一番ベストなんですけど、折角ですし、当事者系でやってみました。第三者視点の傍観主、な感じで。傍観主視点も書いてみたいですね。
テイルズシリーズで一番好きなのはファンタジアです。一番物語的にも綺麗にまとまってるし仲間内のきゃっきゃうふふ感も微笑ましいし勧善懲悪になりきれない世界観は当時の子供心に深い!と思った一品でございます。
ダオス様視点からみてみれば、クレスたちはどんな強大な敵だったのか。けれども最期にだって救いはある。物語はこうでなくっちゃ!ところでファンタジアは移植してくれないですかね?いや、今の技術ならばもっと素敵なファンタジアになるに違いないと思うんですが・・!ファンタジアは私の中で聖域なんで、なんていうか、ノーマル以外受け付けないぜ!しかも固定公式CP以外は無理だぜ!クレミン、チェスアー、クラミラ、そして何より、すずちゃん含めた仲間内でのわいわいきゃーきゃー仲良しこよし!!これぞ至高の物語よ!!
さておき、最新のテイルズシリーズですが幼女と青年の組み合わせ超美味しいです。え、ちょ、幼女のために青年が頑張るとかなにそれ好き!!!しかし私のテイルズ知識は・・・アビスぐらいまでですかね?
それ以後はよく知らんのですよ。しかも明確に覚えてるのはPとDとSとAぐらい。間のRとかEとかよく覚えてない。
あとSの続編とそれ以外はよく知らんな!まぁ何が言いたいかっていうと、幼女と青年あるいはおっさんの絡み超美味しいってことです。
それではレスいきまーす。コメントありがとうございました!