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5/16~5/23

傍観主を挟んで睨みあうレイジング鳳とシャイニング早乙女の姿を想像したら絵的にインパクトが強すぎて傍観主が普通に霞んだ。あれ主役・・・?
いやほら、天国★とレインボー☆がハルちゃんを取り合うなら、社長同士は傍観主取り合えばいいじゃない、と思ったんだけどただただ傍観主の胃を痛めつけることにしかならないよね。テヘペロ☆
・・・シャイニーが気に入るならレイジング社長も気に入りそうだなぁって思ったんですけどねェ。しかし本当、社長同士の因縁の対決がインパクトありすぎてプリンスさまたちが霞んで見えたよ。



というわけでレスです。不要の方もありがとうございました!




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〔つっづきから!〕

「四月、略」

「ねぇシャイニー。一体何を考えてるの?」

 綺麗に描かれた眉をきゅっと寄せて、月宮さんが眉間に皺を刻む。その蒼い瞳には不安と心配をチラつかせて、己の上司を見上げていた。

「全くだ。いきなりあんなこと言い出して・・・どういうつもりなんだ」

 こちらは日頃とほぼ変わりはないが、やはりいつもよりもいささか険しい顔つきで、目の前に悠然と座る上司を睨みつける。低い声は、恐らくは自分にさえも知らされていなかった突然の出来事に、いささかの苛立ちを覚えているのだろう。いつものこととはいえ、今回ばかりは規模が違う。日向さんが苛立ちを見せるのも無理はないだろう。そう納得をしながら、二人の険しい視線を一身に受ける事の元凶はといえば、そんな視線など物ともせず、口元に薄い笑みを浮かべて椅子の背もたれにその身を埋めていた。
 その、ちっとも人の気苦労など歯牙にもかけていない、と言わんばかりの態度に、二人のこめかみがひくりと引き攣ったのを眺めて、私は深くため息を零した。全く。

「いつから私の部屋は会議室になったんですかね・・・」
「Oh!miss.ナカムラ!デザートはできましたかー?」
「社長ご所望の各種フルーツのシャーベットを用意しましたよ」

 シリアスな空気感を叩き壊すように、ガラスの器に盛った色とりどりのシャーベットをお盆に乗せてキッチンから乱入すれば、社長はパッと顔を輝かせてこちらを振り返った。なんだろう、最近この巨体が部屋にいることに違和感がなくなってきた。この人がいるだけで部屋が狭くなったような豪華になったような不思議な感覚になるんだよねー。まるで子供のようにデザートの登場に喜色を示す社長に、なんとなく反応が一十木君に似てるんだよな、と思いつつ目の前にメロンシャーベットを置く。
 月宮さんにはレモンシャーベットを、日向さんにはオレンジシャーベットをことりと置いて、自分の分にはスイカのシャーベットを用意して椅子に座れば、視線は一斉にこちらに集まった。

「そもそもですね、そういう真面目な話は本当事務所の方でしてくださいよ。少なくとも私の部屋で食事会の後にする話じゃないですって。というかなぜこのタイミングで私の部屋に集まるんですか」
「だーって、透子ちゃんの部屋なら美味しいご飯もお酒も出てくるし気兼ねしなくていいしー?お店だと迂闊なことは言えないから気を張っちゃうもの」
「ここならまず安全だからな。マスコミの心配をしなくてもいいのは楽なもんだ」
「Meは単純にご飯が食べたかったからデース」
「あ、そうですか・・・」

 え、なにその軽さ。特に社長。それ一番ダメな答え。てーか私の自由な時間を奪っている事実はスルーですかこんちくしょう。先ほどまでの真面目な空気は?と言わんばかりに砕けた調子でシャーベットに手を伸ばす面々に、またため息を吐きそうになって寸前でぐっと堪える。くっそこいつら上司の権力フル活用しやがって。ともすれば飛び出しそうな不平不満を飲み込むように、スイカのシャーベットにスプーンを突き刺し口に運んで蓋をする。冷たい甘さが舌の上に広がると、少しで気持ちが落ち着いた気がした。甘いものはやはりいいなぁ。

「それはそうと、話は戻すけどシャイニー。ハルちゃんの曲をHE★VENSに渡すなんて何を考えてるの?」
「元々こっちが不利な話だってのに、なんでまたハードルを上げるような真似をすんだよ」

 シャーベットをスプーンで掬って口に運びながら、月宮さんがじとり、と社長をねめつける。
 それに同調するように、日向さんが理解できない、とばかりに胡乱な眼差しを社長に向けて、その真意を探るように瞳を細めた。私は黙って、詰問されている社長にちらり、と視線を向ける。社長は二人の避難を聞きながら、さくさくとシャーベットにスプーンを突き刺した。

「ただ勝つだけではエンターテイメント性に欠けマース!ドキドキハラハラワックワク!いくつもの障害を乗り越えてこそ真のアイドルになれるのデース!」
「あんたなぁ!この賞には事務所の威信もかかってんだぞ!?」
「そうよシャイニー!しかも負けたら解散だなんて・・・!」
「You達は、ST☆RISHが負けると思っているのデスカー?」

 きょとーんとばかりにわざとらしく小首を傾げて、今にも椅子をけって立ち上がりそうだった日向さんたちの出鼻を挫くように問いかける社長の口先は、ただの勢い任せではないとこんなとき感じる。的確に、反論しにくいところをぶち込んでくるのだから、海千山千の芸能界の化け物は伊達ではない。
 自分たちの後輩、ひいては元生徒の実力が信じられないのか?と、そう問われれば彼らのことだ。ぐっと言葉に詰まり、それ以上の反論などできるはずもない。まぁでもこれは、信じる信じないの次元ではなく、どう考えようともただ心配なだけなのである。なにせまだ芸能界に入って一年も経ってないからな、彼ら。いや、一ノ瀬君だけはキャリアは長いんだっけ。まぁでも物事に絶対なんてものはないのだから、心配も不安も当然である。負けるときは負けるし、勝つときは勝つし。何よりあのレイジングプロダクションが相手となれば、神経質になるのも頷ける。正直、中継見てた側としては「ちょwwwグリリバwww」とか思っていたわけだが。おいおいまさかのグリリバかよ。てかあのキャラなんだよ面白いな。変態臭くて。あの無口キャラの人も声に聞き覚えがある気がするし、あのちっちゃい子に至ってはこれから成長するにつれてどういう路線にしていくのか非常に気になるところだった。でも得てしてああいう自分が一番★みたいなのって、適当なところで叩き落されることが多いんだよねー。

「そういうわけじゃないが、けど楽観視もできない話には違いないはずだ。相手だって、決して名前だけの相手じゃない」
「そりゃ、ハルちゃんの曲や、ST☆RISHの皆の歌声は素晴らしいわ。特に、セシル君の声が合わさった歌はそれもうすごかった。でも、決してそれだけで勝てるわけじゃないのが芸能界よ。ねぇシャイニー。本当に、大丈夫なの?」

 新進気鋭の若手に対して、確かに高すぎるハードルかもしれない。賞を取ることもそうだが、負ければ解散という重圧も半端ではない。それら全てを乗り越え、自分の実力の全てを出し切れるのかと問われれば、恐らくは難しいといえるだろう。信頼の前に、先輩として、教師として、大人として。子供を心配し、そして社会人として事務所の利益を考えて、彼らは苦言を呈するのだ。
 確かに社長の今回の提案は突拍子もない。普通、平等性を出すためとはいえこっちから曲を出しだすなんてことしないし。七海さんの曲は、そのどれもが素晴らしい出来には違いないからだ。それが他者の手に渡ることは、一つの不安材料を増やすことに他ならない。まぁその前に、他人の曲を勝手に差し出すなやって話だが。七海さんびっくりしてたっつーの。むしろショック受けてた?いつから考えていたのかは知らないが、本当に、人を置いてけぼりにする天才だなこの人は。まぁレイジングの社長も大概あれだったが。なんだあれマフィアか。この業界はああいう人間じゃないと社長やってけないのか。キャラ濃いよ、ホント。

「Ms.ナカムラはどう思いマスカー?」
「え?私、ですか?」

 我関せず、とは言わないが、会話に参戦することもなく聞き役に徹していた私に突然社長が話を振ってくる。相変わらずサングラスに隠された顔には不敵な笑みを浮かべていたが、私はその顔を一瞥して、言葉に迷うように視線を泳がせてから、空になった器にスプーンと置いた。

「・・・正直なところ、さほどの心配はしていませんよ」
「え?」

 あーちょっと体冷えたな。暖かいお茶いれてこようかなーと思いながら口を開けば、思いもよらないことを聞いたかのように、月宮さんと日向さんが丸く目を見開いた。対照的に、社長は愉快そうにくっと口角を持ち上げて、その先を促すように腕を組む。傍観体勢に入ったな、この人。その様子に吐息を零して、私は先を口にした。

「彼らの実力も絆も確かですし、何より七海さんの曲を彼らが歌うんです。私としては、HE★VENSが勝てる要素の方が低く思いますよ」

 だってあの人たちやたらめったらキラキラしてんだもん。確実に世界は彼らを中心に回ってる気がしているよ私は。主人公気質というか、なんというか・・・あれらは確実になんらかの恩恵を受けている部類の人間だと見た。私がどれだけマジもんの主人公やらを見てきたと思ってるんだ。この目に狂いなどない!そう、なんの疑いもなくそういえば、月宮さんも日向さんも呆気に取られたようなポカンとした顔でこちらを凝視している。楽観視?言うならそう言えばいい。あの七人、七海さんを加えれば八人の紡ぎだすえ?なにこれ?ここ普通の現代日本だよね?的な世界観を知ってさえいれば、恐らく心配なんぞ杞憂といえるものには違いない。それに、よーくよく事の顛末を考えてみるに、存外早乙女社長は過保護じゃないか、とも思うのだ。

「そもそも、七海さんの曲をHE★VENSに提供したことだって、平等とは言いにくいと思いますし」
「どういうことだ?あれは、同じ作曲家という前提条件での勝負だろう?」
「土台がおんなじだもの。平等だと思うけど?」

 何より、早乙女社長だってそう言っていたじゃないか、という二人に、私は困ったように眉を下げて、ちらりと社長を見た。あくまでこれは私が放送後や、月宮さんたちのやり取り中よくよく思い出して考えてみただけの話だから、正しいこととは言えないのだが・・・。一個人の考察というか。よくよく考えればうん?と思うところがあったというか・・・。
 どうしたもんか、と社長を伺い見ると、彼はニィンマリ、と白い歯を見せて笑顔を見せてきた。

「miss.ナカムラは何故そう思うのデスカー?今回の条件はお互いの真の実力をぶつけあうための提案デース」
「・・なら、七海さんにはHE★VENSの曲を書かせるべきだったと思います」
「ほう?」

 あ、今素が出た。少しばかり低くなった声にそう感じつつ、続きを促す視線に、仕方なく口を開く。

「確かに、同じ作曲家という点では平等かもしれません。でも、決定的に違うのは、七海さんはHE★VENSを知らないという点です。そもそも、社長が相手に渡した曲は元はST☆RISHのために、七海さんが書いた曲でしょう?いくら曲にアレンジが利くとはいえ、「誰かの為」に作られた曲を、全くの他人が歌ったところでその歌の本質を全て引き出せるはずがない――と、私は思いますが」

 特に七海さんは、歌い手のことを知って、理解し、その親愛や信頼を曲にしていくような密着型の作曲家だ。いや、もちろんそれだけしかできない、とは言わないけど、彼女がもっとも実力を発揮するのはそういう方法だと思っている。元々学園の教育の仕方がそういう路線であることも、一つの要因かもしれないけど。七海さんが、ST☆RISHに歌ってほしいと思って作った曲だ。いい曲なのには違いないだろう。誰が歌っても、多分いい歌になるだろう。でも多分、それだけだ。いい曲は、素晴らしい曲には為り得ない。きっと、ST☆RISHが歌うように、彼女の曲の世界を、HE★VENSが広げることは難しいと、そう思う。だから、本当に、平等に、お互いの実力の全てをぶつけるのならば・・・七海さんに、ちゃんとHE★VENSのための曲を、書かせるべきだったのだ。それをせずに、元からあった曲を差し出した社長は、恐ろしくST☆RISHの勝率を引き上げた。恐らく、その時点では、彼らの勝率は五分五分かそれ以下だったのかもしれない。けれどもエンターテイメントの追究という、大袈裟な演出。たったそれだけで、それはひっくり返った。勝つための算段をこの人は立てていたのだ。勝てる勝負しかしない。あるいは、勝つ勝負しかしない。それがこのうたプリアワードの開催が決定した瞬間から考えていたとしたら・・・この人は、本当に恐ろしい手腕を持つ人間だと言えるだろう。あそこまで大々的に、これは平等な勝負なのだと宣言し、あまつさえ相手側がそれを受理なんてしてしまったものだから、もう世間からも周囲からも、それが巧妙に仕組まれた不平等などと映るわけがない。レイジングの社長も、まんまと早乙女社長の口車に乗ってしまった、というわけだ。うむ。後輩の癖になんと恐ろしい男だ、シャイニング早乙女。・・・と、なんとなく深読みしてみたわけだが、どうだろう?考えすぎかな?

「平等に見せかけて、これは存外に不平等な勝負ですよ。まぁ、会社のこれからにも関わってきますし、多少の裏工作は仕方ないでしょうね」

 社長だって幾人ものアイドルや社員を抱える企業の長だ。人の生活やら夢やらをその大きな背中に載せきれないほど背負っているのだから、それらを守るためにある程度の行いは目を逸らすのが社員というものである。別に、犯罪に手を染めているわけじゃないし。ただちょっと口が上手いだけだって。見抜けない相手側に落ち度があるのだ。騙される方が悪い、というわけじゃないけど・・・まぁ、あの状況でその裏の裏まで読め、というのは空気感が許さない感じではあったけど。それもきっと策の内だったんだろうなぁ。まぁ、あくまで私の推測でしかないんだけど。この人の考えなんて全部読めるわけないし。ただ、冷静になって考えてみると、あれ?と思う気がしただけで。だからマジに取らないでくださいね、と言おうとして、しかしその前に渋面で日向さんが口を動かした。

「言われてみれば、確かにそんな気もするが・・・」
「本当なの?シャイニー!」

 私の推論に、月宮さんと日向さんが戸惑いを浮かべて社長を見る。いや、二人とも、これあくまで私の推測で決して信憑性があるわけでは・・・。思わず止めようとした私を遮るように、社長は、そんな二人を眺めて、ニカ、と白い歯を見せた。キラン、と、部屋の照明を反射して社長の真っ白な歯が光る。うぉい。

「Meは、勝てる算段のない勝負はしない主義デース!」

 ・・・・・・それ、どうとでも取れる発言なんだけど、明らかに目の前の二人には誤解された気がしますよ、社長。なんてこった、という顔をしてぐったりと脱力する日向さんと月宮さんを尻目に、社長は私に向かって、食後のコーヒークダサーイ、とのたまった。

「・・・社長は、結構意味深な言い回しが得意ですよね」
「解釈は人それぞれ十人十色、百人百様、人の数だけstarのよう!どう捉えるかは、本人次第なのよん☆」

 多分、サングラスの下でウインクでも飛ばしたんじゃないかと思いつつ、よっこらせ、と、私は食後のコーヒーないしはお茶をいれるため、席を立った。・・・まぁ、究極、やりあうのは私たちじゃないんだし、こんな議論だ無駄だったりするんだな、これが。身も蓋もない、と、どこかで誰かが言った気がしたが、私をそれをただの空耳としてスルーした。
 とりあえず、今後被害を被るのだろう相手側に、合掌しておこう。頑張れ、色々と。





〔つっづきから!〕

5/14~5/15

ちょっとした仕事の愚痴といいますかなんというか、うん。
二人っきりになったら距離詰めてきて遊びに誘ってくる人がいるわけだが、まぁ年もかなり離れてるし(ぶっちゃけ親子ほどの差)軽く流せばそれで引くのでまぁ冗談の範囲とはわかっているのだが正直何回もされると鬱陶しいというか距離が近いというか、うん。・・・軽くセクハラじゃね・・・?と思いつつスルーしている今日この頃です。ええ加減やめてくれないだろうか。笑いながら流しているけども、そろそろしつこいというか・・・。温泉行こうよーとか二人で遊びに行こうよーとか・・・うん・・・なんかなぁ。
父親相手にしていると思えばまぁいいんだけども、・・・やっぱりいきなり背後にぴたっとくっついてこられると怖いっていうか、さ・・・。流せる範囲だけどもあんまり二人になりたくない感じです。私あんまりそういう会話の流し方というか、かわし方が上手くないので、余計になぁ。嫌ですって言えばいいのか?いやさすがにな・・・。笑ってごまかすしかできないのだが。上の人だから無視もできないし。あぁ。面倒くさい。


そんなこんな真面目な愚痴なんか吐いてみましたがさておいて。
レスいきまっす!不要の方もありがとうございました!






〔つっづきから!〕

「四月、略」

「透子・・?」
「あれ。渋谷さん。久しぶりー」

 五センチほどの厚みのある書類ファイルを抱えた状態で声がした方向に振り返れば、そこには久方ぶりに生で見る同期の友人の姿があり、驚いたように大きな目を更に丸くさせている姿にへらりと笑いながら片手を振って見せた。相変わらずきっちりと隙なく施された化粧は崩れることなく、くるんと上を向いた睫を何度も瞬かせて、彼女はぱくぱくとまるで酸素不足の金魚のように艶やかな唇を開閉させる。
 うーん。そんな幽霊でも見たような顔をされるのもなんだかちょっとショック。

「な、なんであんたここにいるのよ!?」
「うわ、ひどい。・・・まぁ、諸事情ありまして」
「諸事情?なにそれ?ていうか今までメールも電話の一つもよこさないでおいてどういうつもりよ!?ちょ、マジで透子なの!?本物!!???」
「私の偽物を用意してどうす、うわちょ、渋谷さんっ」

 さて、どう声をかけようかな、と首を傾げると、渋谷さんはくわっと目をかっぴらき、女子としていかがなものかという猛然とした勢いで突進してくると、ぐわし、と両手で私の両頬を鷲掴んだ。きらきらのネイルが施された爪先が食い込まないように力加減はしてくれているようだが、身長差がそれなりにある分、顔を掴まれて視線を合わせるように思いっきり上向かされると首がきつい。下手したらぐきっといくよ、ぐきっと。
 そのまま頬をむにむにといじられ、頭のてっぺんかた爪先まで何度も視線を往復され、ぺたぺたと体中を触られ、廊下のど真ん中ということも手伝い非常に居た堪れない思いでされるがままになっていると、渋谷さんはひとしきり観察して満足したのだろう。というか納得?したのだろう。頬を包んでいた両手をどけて、本物ね、と茫然とした様子で呟いた。いやだから私の偽物を用意してなんの意味があるんですかね渋谷さん。

「だって透子、あんた卒業したら作曲家じゃなくて普通の学校に通うって言ってたじゃない」
「まぁそうだけど・・・」

 あぁ、そんな話をしていた時期もありましたね。そりゃそんな会話した相手が芸能事務所、しかも自分が所属している事務所で普通に廊下歩いてたら疑いもするか。私でも我が目を疑うわ。
 なら仕方ない、と苦笑をすれば、渋谷さんはため息を吐いて自慢の豊かな髪をふわり、とかき上げてむぅ、と眉間に皺を寄せた。多少猫目がちな渋谷さんの目はそれだけでちょっと険を帯びるから、目力がすごいなぁ、としみじみと思う。

「しかもあんた、卒業してから音信不通になるし。私も春歌も、音也たちだって心配してたんだよ?なんでメールの一つもよこさないわけ?!」

 心配したでしょうが!!と思いっきり怒られて、思わず首を竦めた。あー・・・思った以上に心配かけてたっぽいなぁ、これ。やばい、結構楽観視してたというかこっちは大体彼らの動向を把握していた分、ズレ感が半端ない。そうですよね。私は大体みんなの状況知ってますけど、皆は私の状況なんてちっとも知りませんよね。笑ってごまかそうにも、割とマジで怒ってる、というよりも心配と安堵が混ざった顔で睨まれたら、こちらとしては何も言えない。自分が悪いってわかってる分、余計に反論などできるはずもなく。

「・・・ごめんなさい」
「もう、ホントに心配したんだからね?とにかく、説明しなさい!」
「はい。とはいっても、そんな深い事情はないんだよ?」

 素直に頭を下げると、渋谷さんもそれ以上怒りようがないのか、もう一度深いため息を吐いて、許してくれた。ありがとう、渋谷さん!でもこれを他の面子にもされるのかと思うとすごく面倒くさいので早々に携帯を買って連絡取らないとやばいね、色々と!
 そんな内心の打算などおくびにも出さず、ともかくも廊下のど真ん中じゃぁ積もる話もできまい、と廊下の先にある談話室へと渋谷さんを案内し、そこの自動販売機で飲み物を買ってから、液晶テレビの前に陣取って私はここに至るまでの経緯を説明した。

「簡単に言えば、卒業した日の真夜中に社長に拉致されてうやむやの内に社員契約を結ばされちゃったんだよねぇ」
「はぁ?」
「おまけにその騒動で携帯が壊れちゃって。買い替えに行く時間も中々なくって、そのままにしてたらこんなに時間が経っちゃっててさー。いやはや、時の流れはジェットスピードだね」
「そんな軽く・・・って、社長が透子をここに引き込んだの?作曲家として?」
「うんにゃ。普通に事務員として。あ、でも偶になんかそういう仕事も入ってくるなー。でも基本的には事務だし。ちなみに、日向さんと月宮さんは私がここで働いてるの知ってるよ」
「マジで?二人ともそんなこと一言も言ってなかったんだけど」
「そうなんだ?・・まぁ、ああ見えてあの人たちもかなり愉快犯なところあるから、黙ってそうだとは思ったけど」
「林檎ちゃんはともかく、日向さんまでとは思わなかったわ。やっぱりこの事務所の人間よね」
「だねー」

 どんなにまともそうに見えたとしても、所詮この事務所の人間である。毒される運命なんだな、きっと。・・・あれ、その理屈でいうと私も毒されてる?うっわ。私まだ一般人でいたいんですけど。いや、あの学校に通ってる時点ですでに手遅れ?どうなんだろう・・・。割と真剣にそのことで悩んでいると、渋谷さんはミネラルウォーターのペットボトルを傾けて、まぁでも、と笑みを浮かべた。

「元気そうでよかったわ。もしものことがあったんじゃないかって、皆本当に心配してたんだから」
「ごめんね。色々・・・本当、色々あってさ・・・」
「うん。なんとなくわかったから、皆まで言うな」

 思わず遠い目になると、渋谷さんはその間だけで諸々を察したのだろう。ぽん、と肩に手をおいて力なく首を横に振った。ふふ・・・正直今アイドル活動してる君らよりも振り回されてきたんじゃないかって思うよ。私。

「にしても、学校にいたときからそうだけど、透子マジ社長に気に入られてるわね」
「はは、遠慮したいところですな!」
「春歌とか音也たちとは別次元だとは思うけど・・・ある意味別格?あ、そうそう。春歌たちがうたプリアワードにノミネートされたって話知ってる?」
「知ってるよー。あと、なんだっけ。HE★VENS?だっけ?ってのもノミネートされてるんだよねー」
「そうそう。今もっとも注目されてるアイドルグループ。うたプリアワード最有力候補だってね」
「事務所がこの業界最大手だもんね。あ、そういえばさ。今日確かその放送があったよね」
「そういえば。そろそろじゃない?」

 そういって、腕時計に目を落とした渋谷さんに習って、テーブルの上のリモコンをいじってチャンネルを合わせる。どうせ派手な演出なんだろうなぁ、と思いながら、渋谷さんと再会の雑談を交わしつつ、うたプリアワード前哨戦が始まるのを待っていた。

「そういえばST☆RISHのところに社長たち行ってるんだけどさ、これアワードに間に合うのかね?」
「え?マジ?時間的に厳しくない?」
「放送時間に素の彼らが映ってたらどうするー?」
「笑うしかないよねー」
「だよねー!」

 いや本当、まさか全国ネットでああまで素を晒した状態で放映されるとは思ってなかったんですよ。相手側がばっちりドームで演出してるのに、明らかに「え!?何事!?」とばかりに驚いている彼らに、何も知らされてなかったんだな、と同情心が向かったのは、きっと液晶越しの彼らには届かなかったに違いない。ていうか社長もさ、一応放送日程はわかってるんだから、もっと事前に行動してあげようよ・・・。
 まぁ愛島さんの事情でギリギリまで待った結果だというのは知ってますけど。ギリギリすぎないか、というツッコミは、そっと胸の奥にしまっておいた。





 

〔つっづきから!〕

すごく今更だけど!

気が付けば五十万ヒットですかありがとうございます!
この更新に波のあるうえに浮気性且つあっちこっちに飛びがちなサイトに足をお運びくださいまして誠にありがとうございます。企画やらをやるような企画力は枯渇しておりますので相変わらずスルーの一手ですが、感謝の気持ちだけは!この胸いっぱいに!!
とりあえずレン様編がもう残すところ一話なのに一向に進まないという問題点をどうしようか。
今月中にはレン様編を完結させたいところです。目標ということで。
ともかく!五十万ヒットありがとうございました!


ネタではないけれども、遙か4では傍観主が転生して千尋ちゃんの妹ポジ設定でいってるわけですけど、そうじゃなくて女子高生としてなんの関係もなく遙か3からやっぱり召喚されてたらどういう話になったのかなって、ぼんやりと考えることがあります。多分、ネタを提供して貰えなかったら、普通に遙か3からかD灰経由かはさておき、女子高生ぐらいの年齢で召喚されてたと思うんですよね。
神子としてか、それとも無関係な傍観者としてかはわかりませんが。でもきっと初代にも傍観主召喚されてそう。龍神様の初恋の人になってそう。というか白龍の執着がね。半端ないというかね。うん。
まぁそんなこんな諸々考えていくと、正直傍観主は八葉へのフラグよりも神様ズへのフラグを乱立させていそうで・・・。むしろ神様からのラブコールが激しそうで・・・。
あと究極的に、ラスボスが白龍となった時点で傍観主は八葉よりも白龍を選びそうです。
例えばその記憶は無垢で無邪気な3白龍が基本となるでしょう。だけれども、龍の神子への絶対的かつ盲目的な親愛は知っている。無垢に慕う心を知っている。でなければ、どうして何百年も待っていられるというの?
例えばその龍が、愛している神子から矢を向けられたのなら。慕っている人から敵意を向けられたとしたら。きっと、傷つく。表面はどうあれ。自分が選んだ神子から、矢を向けられるなんて。
きっと傍観主はそれだけはできないだろうなぁって思う。だから多分、人よりも龍を選ぶだろうなぁって思う。だって、傍観主は白龍の神子だもの。というか、さんざん力に縋っておいていざ自分たちの意思とかみ合わなかったら武力行使ってのもどうなん。いや、話し合いが平行線になったからってのはわかるんですけど。でもねぇ。神子が、よりにもよって神子が、矢を向けることになろうとは。
とか考えると、最後まで龍の味方である神子も必要じゃないかなぁって思った次第です。まぁ、これは多分、傍観主が誰かに恋心を覚えてないからっていうのもあるんでしょうけど。ある意味一番正しい形で白龍の神子になっているのかもしれないねー。人の世よりも、龍を選んだ神子様。そんな神子だからこそ、白龍だって願いを叶えたいと思うのかもしれない。
うん。やっぱり傍観主と白龍は切っても切れない仲と見た!


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