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あぁ、うん。
「現場に行かなくてマジよかった」
なんだあの阿鼻叫喚。ランサーが宝具の解放を請うてきたが、正直こんな序盤で出すのもどうかと(様子見だけのつもりだし、倒すことが目的ではない)思って、その案は却下した。が、とりあえず武器になど頼らず己の技と力だけでセイバーを圧倒してみせろ!的なことを言ってみたら「主・・・!」とやたら感動してくれたので問題はなかったと思いたい。
イケメンなのに、ランサーは割と脳筋気味だなぁ。まぁ、とりあえずその発言通りに宝具は解放せずにまさに技と力だけで遣り合えているのだから、いいんじゃないかな。別に。
まぁ問題はその後なのだが。ランサーの黄薔薇がセイバーの片手を傷つけたとほぼ同時期に、なんか空から牛が引いた戦車に乗った大男が現れるわ、しかもその戦車に教え子が乗ってるわ、ちょ、なにやってんのウェイバー君!?と思わず水鏡の器の淵をひっつかんだ私は悪くないはずだ。
「え、ちょ、えぇ?!」
まずマスターを引き連れて特攻かましてきたサーヴァント・・・いや、本人隠す気もないらしく、堂々と征服王イスカンダルを名乗っていたのだが・・・そうか、君だったのか。聖遺物盗んだの。
いや、それはいいんだけど。むしろグッジョブと思っていたぐらいだが(結局サーヴァントは召喚する羽目になったけど)それにしたってどうして彼が?叫びながら征服王・・・ここはとりあえずライダーと呼ぼうか。ライダーをぽかぽか殴っている見た目には和むが、しかし戦場に似つかわしくないコミカルさに毒気は抜かれつつも、眉間に皺を寄せてウェイバー君をでこピン一発で黙らせたライダーの勧誘に耳を傾けた。ランサーはきっぱりと断っているが、正直その申し出は、ひどく魅力的だ。別に下につくことに抵抗なんてないしー?聖杯なんていらないしー?ぶっちゃけ死にたくないだけだしー?そも、私は誰かの上に立って行動するには向かない人間なのだ。あれぐらい堂々と我が道行く人の方が、いっそ楽だったかもしれないなーと、ランサーには悪いがちらと考えた。いや、彼は彼でいいサーヴァントなのだ。こんな私の言うことだって聞いてくれるし例え形だけなのだとしても敬ってくれるし甲斐甲斐しい、ちょっと過保護気味なのはいかがだしちょっとばかり発言があれなところはあるが、至って真面目な性格をしていて私には勿体ないぐらいのサーヴァントである。ただ、うん。やっぱり、主従関係ってのは慣れないなぁ、ってだけで。いや、私が従ならまだしも主ってのはなぁ。それに、ライダーのマスターは教え子だ。全く知らぬ仲でもなし、それなりにクロックタワーでも良好な関係を気づけていたと思っている。下につかずとも、同盟、協力関係を結ぶにはまたとない相手先だろう。
まぁ、意外といえば、ウェイバー君に聖杯に望むほどの願いがあったことが意外といえば意外だったか。
「彼が変なことを考えてるとは思えないし、手伝ってもいいしな」
彼が聖杯を掴むためのバックアップもやぶさかじゃない。まぁ、戦力になるかといわれるとランサーはともかく私うーん?だけども。それと、龍脈の調査にも付き合ってほしいしな。彼の手伝いがあればきっと今よりもスムーズに調査は進むに違いない。うん。臣下だろうとなんでもいいが、彼とは接触しておくに越したことはないはずだ。ライダーがなんかどえらい啖呵を切っているが、つらつらとそんな思考を巡らして考えをまとめる。うん。ちょっとこの夜が終わったらウェイバー君とコンタクトを取ろう。そうまとめると、懐から札を一枚取り出し、ふぅ、と息を吹きかける。瞬間、ぱきぱきと音をたてて札は折れ、形を変え、やがて月明かりに照らされるようにして黒い揚羽蝶へとその姿を変えた。
自分でやっておきながら言うのもなんだが、私も大概ファンタジーな技術を身に着けたもんだ。・・・・・平凡に戻りたい。さめざめと思いつつ、指先に留まった使い魔がその黒い羽を上下させているのにふっと笑みを浮かべ、囁くように命じた。
「ライダー・・征服王イスカンダル、そのマスター、ウェイバー・ベルベットの元へ」
命じた途端、ふわりと翅を動かし空へと飛んだ揚羽蝶は、ひらひらと舞いながら月夜の空へと溶け込むように飛んで行った。あれで普通に早いし、事が終わるまでには彼らの元に辿り着くだろう。彼らの拠点がわかれば、接触も容易いはずだ。そうして一つの布石を打ったことにほっとしながら、戦況はどうなった、と改めて水鏡に向き直れば、そこはまさしく阿鼻叫喚だった。いつの間にやら登場人物が増えている。え。ちょ、人が考えに耽ってる間に何が?!
真夜中だというのに、眩いほどの王気と鎧を纏った金色のサーヴァントが虚空から呼び出したあらゆる武器という武器を乱射し、黄金のサーヴァントとは全く対照的な漆黒の鎧に淀んだオーラを纏う黒い騎士はそれらをとりあえず人間じゃない動きで回避しては、武器を取って反撃している。
・・・・・・・・・とりあえず尋常じゃない戦いなのはわかる。普通にあそこに人がいれば巻き込まれて死にそうだし器物破損も半端ないしお前らいくら隠ぺいするからってちょっとは周囲の迷惑考えろよと思ったり思わなかったりしつつ、自宅待機を選んでてよかったと心底思いつつも、悲しいかな、人外魔境な戦闘を見慣れている自分がいた。
あぁ、うん。怨霊とやりあったこともありますしね。エクソシストなんぞの近くにいればそれこそこれぐらいの戦闘は普通に行われておりましたしね。うん。・・・・・うん。
「だからといってこんなものに巻き込まれたくはないがな!」
てか無差別だな金ぴか!黒いのもなんかもう無茶苦茶だし!・・・今のうちにランサー離脱させとこかな。巻き込まれる前に逃げちまえ!とりあえず、どんなサーヴァントが召喚されたかは概ねわかったし、相手の戦い方もなんとなく判明した。まさか一夜のうちにこれほど多くのサーヴァントが一か所に集まるとは思わなかったが、まとめて情報を収集できたので良しとしよう。
セイバーとの勝負を邪魔されて不服そうなランサーに、念話で戻ってくるように伝えると、彼はしかし!と珍しくも抵抗を見せた。そんなにセイバーと闘いたいのか。いやでも、もうそんな空気でもないし、また今度、仕切り直しの方が気持ちも入るってもんだろう。そう説き伏せて、不満そうながらもランサーは頷いてくれた。
あ、なんか金ぴかも唐突に消えたし。・・・マスターから帰還命令が出たのかな?まぁ、あんまり派手にやらかすのもどうかと思うしな。どうやら、あの黒いのと金ぴかの相性はよくはなさそうだし、妥当な判断か。
「後でランサーからも詳しいこと聞かないとなぁ」
あの金ぴかがどういうサーヴァントか、黒いのもそうだし、セイバーの戦闘力も。集められるだけの情報は、集めなければ。それで如何に危険を回避するか、対策も立てないとだし。あぁ、やることが多いなぁ。
「・・・とりあえず、ランサーにおにぎりでも作っておくか」
何やら映像の向こう側では、黒いのがセイバーに襲いかかっていたが、それ以上何があるわけでもないだろう、と映像を消して立ち上がる。同盟先は見つけたし、戦争初日にしては、まぁまぁの出だしだろう。
具材は何がいいかな、と考えながらひらりと服を翻した。
気が向いたらイレギュラー乱入verも書いてみたい。基本的に傍観主が絡む原作キャラはヒロインと征服王ぐらいじゃないかなー。後は運が良くて(悪くて?)狂犬陣営とか?とりあえずヒロイン陣営と同盟フラグは立てておきました。
水を張った盆に月を浮かべる。満たされることのない黄金色が、底の見えない水面に歪みを帯びながらゆらゆらと揺れ動いた。やがて、それは静かに静かに落ち着いていく。波は引き、波紋は消え、歪みは正され―――水底に映るのは、最早月などではない。最初に写し取った夜空の姿は消え、まず見えたのは赤と黄の二槍と持ったボディスーツを身にまとった自身のサーヴァントの姿。アングル的に斜め上ぐらいから見えたそのやや伏し目がちにも見える横顔は美辞麗句を書き連ねたところで表現するには難しいだろう。相変わらずのイケメン、いや美形、というべきか。むしろ美貌というべきか。
琥珀色の双眸を縁取る長い睫、すっと通った鼻筋に彫の深い男性的な色気を匂わせる作り。女性的に見えなくもないが、全体を見れば間違いなく男の顔であるそれは、やはり彼の貴人とは別物だな、と思う。彼の人はどちらかといえば男性的というよりも女性的な中性さを匂わせる美貌であったのだろう。両性を窺わせる中性的な美貌は、なるほどこの槍持つ騎士よりもより耽美な危険性を孕んでいたのかもしれない。無論、文官であったが故に、あの騎士のような男性さを見た目から窺い知れることが難しかった、というのもありそうだが。
ランサー、騎士というだけあってすっごい鍛えられた肉体!って感じがするもんねぇ。また、彼の恰好もその肉体美を惜しげもなく晒すようなものであるから、ついつい目が盛り上がった胸部の筋肉だとか、筋肉の陰影が見える二の腕だとか、太ももだとか、割れた腹筋だとか、その辺に目がいくわけで。正直顔よか体に目が行くよ?
しかし気になるんだけど、ケルト時代にあんな感じのボディスーツってあんの?それともあれは英霊仕様なの?英霊になると服装までクラスチェンジしちゃうものなの?・・・ファンタジーだからなんでもありなのかなぁ。
ぼんやりと考えながら、すっと水鏡に手をかざして払う仕草をする。そうすると、ランサーは遠ざかりより広く周囲を見渡せる。そうして、ランサーと対峙する側には、鎧を纏った金髪碧眼の美少女が威風堂々と立っていた。
その後ろにはこれまた目を引くような美女が立っている。印象でいえば、まるで雪のような女性だ。恰好もほぼ白で埋め尽くされているのもそうだが、長く腰まで伸びた髪は白を見紛うほどにきれいな銀色をしている。
表情が緊張にひどく強張っており、どこかぎこちない。戦場に慣れていないのだろう。まぁ、普通に過ごしていればこんな殺し合いなど無縁なのだから当たり前だが。
あの美しい、争いごとには縁のなさそうな女性があの少女サーヴァントのマスターなのだろうか?あれほどの美貌と、聖杯戦争に参戦できるほどの実力があれば、大概のことはなせそうなものなのに。それ以上に何を望むのか―――理解しがたいな。
元より聖杯にかける望みのない自分からしてみれば、こんな危険しかない戦いに進んで参加しようなどという自殺志願にも等しい行いを平然とこなす人たちの願いなど、到底理解できるものではないだろう。
そんな、自分の手で叶えることができないほど途方もない願いなんて―――ない、とは言えないか。私も、ないわけじゃない。叶えて欲しい望みはある。叫びたいほどに願う祈りがある。けれども、同じぐらいに死にたくないという願望があり、結局、手を伸ばせずじまいだ。だって、私は命が惜しいのだから。
生き汚いな、とわずかな苦笑を浮かべつつ、さて、考察に戻ろう、と意識を戦争に向ける。
あのサーヴァント、ともすれば美少年に見えなくもないが、あれはきっと女の子だろう。はて。あんな覇気のありまくる女の子の英霊なんぞ誰かいたっけかな。女性の英霊、しかもランサー相手にあぁも堂々と現れるぐらいだ。多分接近戦に自信があるのだろう。ということは、キャスタークラスではないな。穴熊するようなタイプには見えん。というか出てきてる時点で絶対違う。アサシンでもないだろうな。暗殺者があんな堂々と出てきちゃ色々ダメな気もするし。いや、いいんだけど。暗殺者が正々堂々闘っちゃいけません!とか決まってるわけじゃないからいいんだけど、しかし突っ込まずにはいられないというか。・・・まぁ、とりあえずアサシンも除外して。んでもってランサーと正常な会話をしてるしきりっとした眉に意思の強い目には確かな知性と理性が窺い知れる。あの感じからしてバーサーカーもない。そうなると残るクラスはアーチャー、ライダー、セイバー―――あれ?
「セイバー・・・?」
なんだろう、見たことがあるような。不意に焼けつくような感覚がじりっと脳裏をよぎったが、それを深く追いかける前に体から魔力が抜けていく感覚を覚え、あぁ、と嘆息した。一瞬外していた視線を再び水面に戻せば、ランサーとセイバーがぶつかりあっている。あぁ、うん。楽しそうだなランサー。パスから抜けていく魔力と共に、こちらに押し寄せてくるランサーの荒ぶる感情の波があまりに高揚として溌剌で、喜々とした感情を伝えてくる。
これもこれで理解しがたいものがあるな。
「・・まぁ、今は他のマスターがいないか確認するか」
恐らく、この戦いはほとんどの陣営に感知されているはずだ。ならば、どこかに偵察として何かしらの影があっても可笑しくはない。できればサーヴァント情報もほしいなぁ、と思いつつ、ちゃぷりと水面に指を差し入れた。
現場にはいかない傍観主。いやだって、安全なところにいたいよねって!まだこの段階だと正式勝負!ってよりは様子見だし。なので情報収集を頑張ります。まぁ、この後なんか色々鯖が出てきて大方陣営の把握ができるわけですがね。
フォムメレスですー。存外にふぇいとin傍観主が人気なようで(*^_^*)
レス不要の方もコメントありがとうございましたー!
ことことことこと。くつくつくつくつ。火のかかった鍋の煮立つ音と、時計のカチコチと秒針の刻む音。電源のついたテレビから午後のニュース番組が流れて地域の報道や今時の政治問題なんかが流れていく。
ほどよい雑音に満たされた空間はひどく落ち着いて、これが私が求めていた安らぎだ、としみじみとしながらお茶をすする。ちゃぶ台の上にはお茶とお茶菓子、それからレシピ本を広げて、明日はなににしようか、と鉛筆とメモ帳片手にメニューの試行錯誤だ。ふむ。かぼちゃと鶏ミンチの肉団子煮込みとかおいしそうだな。めぼしいものにチェックをいれて、メモ帳に材料を書きだしていくながら、ふと顔をあげて時計をみる。進む秒針を眺めて、ぽつりと呟いた。
「ランサー、遅いな・・」
ちょっと買い物頼んだだけなのだが・・・一応魔貌封じのアイテムは渡してるし、それなりに印象が薄くなるようなアイテムも渡している。あんまり薄くしすぎても逆に目をつけられるからなぁ。というかそれじゃ買い物もできやしないし。あの顔は是非とも有効活用させなくては。女性に捕まってはいるにしても、逃げ切ることができないわけじゃないだろう。ちょっくら買い忘れたものがあったからお願いしたんだが、それにしても遅いような。
はて、何かあったのか?・・・まぁ、あったとしても相手はサーヴァントなんだし、敵マスター及びサーヴァントでもない限りなにがどうなるとも思えないので、特に心配の必要はないか。あれでいい年した男なのだし、自分でなんとかするだろ。どうにもならなければ念話ぐらいしてくるだろうし、よしんば戦闘になればパスから伝わるものだ。うん。問題ないない。女性に襲われてたら・・・それこそ必死こいて呼びそうだから、やっぱり何もないのだろう。
明日はランサーを連れて近所の青果店に突撃だな!あそこの奥さんはもはやランサーの虜だからおまけ一杯してくれるんだよねー!やっぱ顔がいいのは違うわ。神話レベルのイケメンだし、基本的に日本人は外国人のイケメンに弱いし!自分にないものに憧れるってーの?別にガチで魅了してるわけじゃないから問題ない問題ない。
そんなことをつらつらと考えていると、不意に脳内に真剣味を帯びたグリリバヴォイスが響いた。
――主
「ランサー?」
別に、声に出す必要はないのだが、咄嗟に口から出たものはしょうがない。しかし脳内でグリリバとかなんかすげぇな。だから念話あんま好きじゃないんだよねー。っと、そんなことよりも。
「何かあったの?」
――敵サーヴァントを見つけました。相手もこちらに気が付いているようです。
「うぇ、マジで?」
――いかがいたしましょうか?
問いかけながらも、真剣に、しかし確かな高揚の感じられるランサーにそういえばこいつも武闘派だったっけな、と日頃の甲斐甲斐しさからうっかり忘れかけていたが、そのことを思い出して眉を潜めた。
できることならば、そのまま闘わずに帰ってくるのが望ましい。まだ陽も暮れてない夕餉の時間だ。あまりしたくはないが、闘うにしても時間帯が相応しくない。―――が、全く戦闘をしないで、というのも厳しいものがあるのだろう。
しばしの逡巡の後、ランサーに近くに人気のない場所はないかと尋ね、瞬時に倉庫街がある、と答えられた。こっちに引っ越してきたときに地理把握のために練り歩いていた成果か、これは。
その答えに、倉庫街なら夜になればますます人もいなくなるな、と一人納得して、とりあえずそこまで相手を誘導するように話を通す。ランサーの快諾の応えが聞こえ、一旦念話を切ると、ふぅ、とため息を吐いた。
「・・・今晩、かな。あー・・・嫌だなぁ。でも一応相手の戦力を知らないのもやばいよなー。まだ龍脈の穢れの原因わかってないけど・・・。相手はそんなことお構いなしだろうしなぁ。てかマジここの管理者なにやってんの。自分とこの管轄のくせに把握してないってなんなの。あーもーいやだなぁぁぁぁぁ」
ぐったりとちゃぶ台に突っ伏し、めそりと泣き言を漏らす。でもなぁ、相手がどんなのか知らないのは怖いもんなぁ。戦争だもんなぁ。情報は命ですよねぇ。様子見ぐらいはしとくべきだよねぇ。それに偶にはランサーも鍛錬じゃなくて思いっきり体動かしたいだろうし。いやでも殺し合いはいくない。いくないよ。…価値観がとことんズレてるから通じないだろうけども。そこんところは時代的なもんがあるからなぁ。ジェネレーションギャップっていうのか、これも。
うだうだと未だ定まらない戦争への覚悟に唸りながら、まぁ、作戦名は命を大事に、だし。ともかくも、今晩。相手方の出方を窺って、対策も考えておこう!ぐあっと顔をあげて拳を握り、目指せ生存!を堅く胸に誓う。
それからのち、まさかの倉庫街でなんか色々あったわけだが、それはまだ私の知る由もないことなのである。
「これで俺もマスターだ!はは、やった。これで冬木を救済できる!」
恍惚に酔い痴れて。真っ赤に染まって哄笑する様を、人は狂人と呼ぶのかもしれない。あぁ、いや。事実狂っているのだろう。自分がこの地を救うのだと夢想して。救えるのだと信じ切って。自分にそれができるのだと、理由のない確証を誇らしげに掲げて。
「行くぞアベンジャー。俺達で冬木を救うんだ!」
「そうか」
その足元に、罪無き少女を横たえて。たった一つの、代えることのできない小さな命を踏みつけて。血溜りのできた床。踏み荒らされた玄関。壁に飛んだ飛沫。切り取られた片腕。事切れた体。光のない瞳。赤く染まる体。血の気の失せた唇。――――嗚呼。
一振りの剣を投影する。ずしりとかかる重みを確かめて、こちらに背を向ける「マスター」に向かって振りかざす。
「そのまま、理想を抱いて溺死しろ」
「―――え?」
斬。