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10/15~11/1

清清しくイベントをスルーした桐林ですこんばんは。
ハロウィンなイベントを見事こなすサイト様方を巡りつつ自分んとこは軽やかにスルーしましたよ!
イベントに乗っかるのって苦手なんですよね。これでも昔は頑張ってみたものだが・・・ネタとかさ、終わってから思いつくから・・・。じゃぁこれ来年に、とか思っても忘れてる罠です。


さてさて、ではレスいきますよーい。レス不要の方もコメントありがとうございますv





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〔つづきはこちら〕

「箱庭の宝石」

 カツカツカツ、と高いヒールが冷たい大理石を強く踏みつける。十センチ近くはあろうかという高さながら、バランスを崩すこともなく白く形良いふくろはぎをスリットの入ったドレスの横からちらちらと垣間見せて、彼女は柳眉を寄せると目の前の扉をノックもせずに開け放った。ばん、という慌しい音をたてなかったのがせめてもの理性か、けれども顔を不機嫌と苛立ちに染めて部屋の中をぐるりと見渡す。そうして見つけた姿に片眉を動かすと、毛の長い絨毯に靴先を埋めながら、音もなく近づいた。

「アーノルド兄様」
「クリステアか」

 高く澄んだ鈴の音を思わせる声が、静かな室内に響く。その声に応えるように張りのあるテノールが淡々と紡がれれば、その足元に跪く存在が体を震わせた。それに一瞥をくれてやることなく、柔らかなミルクティ色の髪を揺らして、クリステアはアーノルドの横に並んだ。

「透子がまた熱を出したと聞いたけれど」
「あぁ。今はベッドで静かに横になっているよ」
「そう。で。何故これはまだ生きているの?」

 言いながら、ヒールの靴先が足元に膝をつく男の頭を強く蹴り付ける。強かに蹴られた男が呻きながらもんどり打って背中から後ろに転げると、それこそ羽虫の一匹でも見るような冷えた目でクリステアは不愉快そうに眉を潜めた。その様子を、それこそ眉の一つも動かさずに淡々と見届け、痛みと恐怖でガチガチと震える男にアーノルドは淡々と口を開く。

「どう殺してやるのがいいかと思ってな」
「そんなもの。さっさと殺してしまえばいい話。こんな役立たず、生かす意味もなくってよ」

 ひぃ、と男の口から悲鳴が零れる。即座に仰向けになった体を元に戻し、膝をついて床に額をこすりつけるようにして懇願を口にする姿は、いっそ哀れみを誘う有様だ。けれども、その姿すらまるで羽虫の一匹程度に過ぎないとばかりに、クリステアの桃色の唇が皮肉に吊りあがった。

「透子の傍に置いてやったというのに、その役目すら満足にこなせない愚図など、殺し方を思考する時間すら勿体無い。そんなことに時間をかけるぐらいならば、もっと別のことに使うが有意義ではなくて?」
「あの子の近くにいながら役目を果たさなかったからこそ、その罪を知らしめるべきだろう?現にあの子はこうしている間も苦しんでいるというのに、これを早々に楽にして良いものか」

 方法が違うだけで、結末として男に用意されているものに違いはない。己に間近に迫る死という現実に、男の背筋が震え上がった。ガチガチと会わない歯の根を鳴らすと、アーノルドはそうだな、長い指先を動かして近くに立つ兵士に声をかけた。

「これをバナナワニの巣に入れて来い。あぁ、大人ではないぞ。子供のだ。あの大きさならば、丸呑みになどされずに四肢を食い千切られながら餌になるだろうよ」

 くつりと、その時初めてアーノルドの口元が笑みを浮かべた。刹那、兵士の了承の声と男の悲鳴が重なったが、男の方は眉を寄せたクリステアの閃いた靴先で更に苦悶の色を宿すことになる。

「あぁ、五月蝿い。お前達、早くその役立たずを連れておいき!」

 甲高く叫んだ苛立ちに、兵士が素早く動いて粟を食って叫ぶ男を連行していく。彼らもまたわかっていた。いつその苛立ちが自分達に向けられるかもわからない、綱渡りのような空間にいることを。
 自分が被害者にならないために、彼らは無情な対応で素早く男を部屋の外へと連れ出し、静かに扉を閉める。部屋の外から「御慈悲を!アーノルド聖、クリステア宮!!どうか御慈悲を!!」と声が聞こえたが、しかしそれもまた遠ざかるのみ。部屋の中に残された二人は、やがて細く息を吐くと苛立たしげに顔を顰めた。

「あぁ、どうしてあの子の周りにはあんな役立たずしかいないの!?他の医師もすぐに処罰したのでしょうね?!」
「ナース諸共な。それにしても、今宵は折角あの子もパーティに出られるはずだったというのに・・・」
「そうよ!折角珍しくも透子が行くと頷いたというのに・・・っ。あぁ、やはりこの手で殺してやるべきだわ!お兄様っ」
「医師はバナナワニの餌だ。ナースならば好きにすればいい」
「ふんっ。お前達、ナースのいる部屋に案内なさい」

 激昂する妹とは対照的に、淡々と冷えた目で告げる姿はまるで氷の彫刻のようだ。それに鼻を鳴らして踵を返すクリステアの背中を見送り、アーノルドはサイドテーブルのティーカップを持ち上げると、中に注がれた琥珀色の紅茶をじっと見つめ、きゅっと眉を潜めて見せた。

「・・・役立たず共が」

 吐き捨てた言葉に篭められた冷淡な憤怒を傍近くで聞いた兵士は、その体を鎧の下で震え上がらせた。
 例えばそう、その事実に実は一番震え上がるのが、よもやその原因だとは、知る由もなく。





〔つづきはこちら〕

「いらぬ好意と言えたなら」

 開けた窓から入る風がカーテンレースをはたはたと揺らす。頬を撫でるそよ風からふと活字を追いかけていた目を止めて顔をあげれば、どたどたと部屋の外から慌しい足音が聞こえる。
 ぱちりと瞬きをして白のカーデガンの胸元を引き寄せれば、足音は部屋の前で止まり、やがて少々乱暴に、ばん、と勢い良く重厚なそれが開けられた。

「おねーさま!」
「・・・ベルモンド?」

 ブルネットの巻き毛を豪華に揺らして、真っ赤なごってごてのドレスを着込んだ妹が、息を切らして靴先の丸いエナメル靴を、毛足の長い絨毯に沈ませながらどてどてベッドに走り寄ってくる。
 絨毯のおかげか、これが大理石の床ならば大きな足音になるだろうに、足首まで沈むんじゃ、というぐらいふっかふかの絨毯だと一切の足音が消えてしまっている。・・・これ、ちょっと危険思想もった人物にしたら格好の足場じゃないだろうか?だって労せずとも足音が消える・・・。そんなことを思いながら、開いていた本にサイドテーブルに置いておいたしおりを挟みこんでベッドの上から妹を見下ろせば、白い頬を上気させてベルモンドはベッドサイドに勢い良く手を置いた。弾みでぎしぎし、と揺れるスプリングが私を揺らす。

「お熱が下がったって聞きましたの!もうだいじょうぶですの?」
「うん、平気だよ。そんなに高い熱でもなかったし、ちょっと寝込む程度だから。心配してくれたの?ありがとう、ベルモンド」

 言いながら頭をなでれば、うふふ、と嬉しそうにはにかむ妹は可愛いと思う。純粋に。
 まぁ熱といってもほんと大したことじゃないし、日常茶飯事とはいかずともけれど珍しいというほどではない頻度でこうしてベッドの上の住人となっているのだから、別にそんな息せき切ってこなくても、と思うが、まぁ心配してくれていたのに悪い気はしない。そう思いながら口角を緩めて微笑むと妹は、ベッドの上によじ登り、私の近くまでくると、弾む声できらきらと瞳を輝かせた。

「おねーさまが元気になったお祝いに、プレゼントをお持ちしましたの!」
「プレゼント?」
「そうですの!きっとお姉さまも気に入りますの!」
「へぇ。何かな?」

 花とか?しかしベルモンドの手に一切そういうものは見えず、はて、誰か別の人が持ってくるのか?と考えていると、廊下のほうからずるずると何かを引きずる音をカッカッカッカと規則正しい足音が聞こえてくる。
 硬質な足音に首を傾げれば、開けっ放しの入り口から、見慣れた兵士の姿が見え、それから、その足元に、

「・・・っ」
「遅いですの!なにしてますの!?このグズ!のろま!」
「はっ。申し訳ありません、ベルモンド宮!」
「ふん!これだからのろまいやですの。早くそれをこちらにおよこしなさいですの!」
 
 癇癪を起こした妹が罵りながら高飛車に命令すれば、兵士は規律正しく返事を返し、ずるずるとそれを引きずって私のベッド下に差し出してくる、放り出さないのは、ここが私の「私室」でそれが一応「贈り物」だからだ。
 僅かに顔を引き攣らせ、血の気を引かせたこちらなど露とも気づいていないように、ぶちぶちと「これだから下々は動きが遅くていやですの。もっとゆうのうなのをおとーさまに頼まなくていけませんの」と言っていたが、やがて足元にきたそれに満足そうに笑みを深めると、愛らしい声でころころと笑いながらベルモンドはベッドから飛び降り、四つん這いに這い蹲るそれの鎖を兵士から受け取るとにこやかにこちらに差し出したきた。いや、ちょ、ベルモンド?

「さっきヒューマンショップから買い付けた奴隷ですの!おねーさまもずっとお部屋でたいくつでしょうから、これで遊ぶといいですの!」

 これを的にしたダーツなんて楽しいですの!なんて、齢十歳にも満たないお子様の癖になんて怖いこと言い出すのこの子!隠し切れず顔を引き攣らせれば、ベルモンドはおねーさま?と可愛らしく小首を傾げて見せた。「嬉しくないですの?」なんて当たり前だろうが!だれが奴隷貰ってきゃっv嬉しいvvとか思うかよ!私は一般人思考だーーーー!と、思いはすれども口に出せるはずもなく、私は無理矢理笑みを作り、まぁ、そう、ありがとう、なんて、適当なことを言ってすっと視線を下に落とした。・・差し出されたのは、ボロボロの衣服に首輪、それに枷までつけられた、人間の男。
 この子が言った通り、ヒューマンショップで売られていた奴隷なんだろう。抵抗でもしたのだろうか?強かに打たれた跡の伺える、青紫色に変色した肌の部分が擦り切れたシャツの隙間からあちこちに見えて、思わず眉を潜めた。ガクガクと震えて一向に顔をあげようとしないその姿に妹と同類に見られてるんだろうなぁ、となんとも言えない気持ちになる。いや、ていうか、まだ一桁の年齢の癖にこんなことに慣れてる妹が可笑しいよね。
 なんでさも当然のようにこんなことができるのだか、と思いつつ鎖を妹の手から受け取り、やんわりと部屋から追い出すと(ちょっと疲れたわ、とかなんとか言えば大人しく引き下がるのだから、そういうところは素直で可愛いと思うのに。いや、ある意味全体的に素直っていえば素直なんだけどね?)、私はやっと息を吐いて、未だガクガクと震えて床に突っ伏すその人を見下ろした。

「あの」
「ひっ・・・」

 すげぇ脅えられてる。いや、それも当然か、と自嘲気味に口元を歪め、私は鎖をじゃらりと揺らした。こんなことをされて、脅えるなという方が土台無理な話なのだ。男は床に蹲ったまま、顔すら見れないとずっと下を向いたままで、立場的に仕方ない状況とはいえ、なんだかなぁ、と思わずにはいられない。
 溜息を小さく零すと、私は妹から受け取った鍵をくるりと手の中で回し、そっとベッドから床に降りて、彼の目の前で膝をついた。

「とりあえず、手当て、しましょうか」
「え・・・?」
「鍵、外しますけど、暴れないでくださいね。ここで下手に暴れると、ややこしいことになりますから」

 無駄な騒動はいらんのだよ。可能な限り穏便に、且つ水面下で動かなくてはならないのだから。震えを止めて顔をあげた男の、至極信じられないことを聞いた、とばかりの顔がちょっと可笑しかったが、私はひとまず、男の首輪の鍵穴に、鍵をねじ込んだ。





〔つづきはこちら〕

更新

今日の更新

◎水鏡の花 水夢の花編 海賊ショート連載 「乗船賃は如何程で?」アップ。





〔つづきはこちら〕

「天と地ほどの差の真ん中で」

 悪い人たちじゃない。そう、決して悪い人達なわけではないのだ。
 家族には、いや一族?とにかく身内には優しいのは確かだし、娘としてそれなりに可愛がられているとは自覚している。ただ、まぁ、うん。・・・我慢っていう言葉を知っていても実行しない天上天下唯我独尊を地で行き尚且つそれが全部許されちゃうと思ってる、実際許されちゃってるから増長しちゃってる、人として最低且つどうしよーもない人たちなだけで。

「それを通常は悪というのではないか?」
「身内目線で見ると微妙なところなんだよ。悪意なんてものは一欠けらもないからね、あの人たち」
「それが当然と思っている者に、悪という言葉はつりあわないということか」
「無知なのは罪っていわれるけど、自覚がないのも似たようなものだよね・・・」

 しみじみと、肩の上の水樹と会話しながら、父に鞭で打たれた男の人の傷の手当てを施す。気絶しているのが幸いか、顔は知られないだろうし必要以上に騒がれることもない。できるならば逃がしてやりたいが、この人は一応父のものだ。私が勝手にできることは限られていて、せいぜい父がつけた怪我の手当てや、飽きた頃になんとか遣り繰りして逃がしてあげることしか出来ない。それがこの人の救いになるのかは知らない。背中に押された烙印は、逃げ延びて尚この人を縛り付け、雁字搦めにしてしまうのだから。

「お前のせいではない」
「・・っ水樹、」
「これを買ったのも傷つけたのも、尚このような扱いをするのも透子ではない。お前が気に病むことなど何一つとしてないのだから、・・・そんな顔をするな」
「そうだとしても、やっぱり罪悪感は、消えないよ・・・」

 慰め、いや慰めというよりも水樹にしてみれば当然のことを言っているのだろう。ぼそりと「あいつら消すか?」とかぼやいているのは怖いけれど、やめてあれでも私の家族だから、と宥めてそうして、すっとその場を立ち上がる。

「・・・もうすぐ、だから」

 もうすぐ、父の周期を考えれば、もうすぐこの人にも飽きるはずなのだ。そうしたら、そうしたら。

「烙印は、消せないけど」

 それでも、可能性を、渡すことが出来るから。

「・・ここから、出して、あげられるから」

 だからそれまで、どうか、どうか生き抜いて。ねぇお願い。手遅れにだけは、ならないで。
 白い包帯が巻かれた腕をそっとなでて、きゅっと唇を噛み締めた。


 零れ落ちた命の、なんと重たいことなのか。





〔つづきはこちら〕

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