忍者ブログ

斜め45度ぐらいで。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「レッツゴープリンセス」

強く優しく美しく。
 きらきら輝く、まるで花のように可憐なお姫様。
 綺麗で可愛いお姫様になりたくて、あの方のようになりたくて。憧れだった。羨ましくて、大好きで、それと同じぐらい、妬ましい。
 綺麗な花のプリンセス。なりたかった。でもわかってた。私がプリンセスにはなれないことぐらい。プリンセスとは生まれながらにして持ちえるもの。どれだけ望んでも、努力しても、決して叶わない夢物語。お姫様のようにはなれても、お姫様にはなれないことなんてわかってた。
 私には、到底手の届かない夢だと、理解していた。だけど憧れだけは止められなくて、あぁなりたいという思いだけは募っていって、お姫様になりたいなんて、馬鹿みたいな夢を描いてた。
 お姫様になれたら、あの人は少しでも私を見てくれたのかしら、なんて。ちょっとだけ、厚かましい気持ちもあったけど。
 でもわかってる。どんなに思いを寄せても、王子様にはお姫様がお似合いなの。どれだけ私に優しく微笑んでくれても、手を握ってくれても、隣にいるのはお姫様で、最後に選ぶのも彼女だけ。
 身分違いの恋だった。それでももしかしたら、なんて思ったこともある。でももうダメね。貴方の隣はあの人のもので、あの人の隣も貴方のもの。
 苦しくないっていったら嘘になる。辛くないなんて口が裂けても言えない。恨まないとも、憎まないとも、言えないぐらい醜い私。こんな私じゃ、お姫様になってなれっこないね。
 だけど、だけどね。本当に、心の底から思ったの。花のように可憐で美しいお姫様と、それを支える穏やかなお日様のような王子様。隣り合う姿が、本当に本当に、とっても素敵で、見ているだけで幸せになれた。
 だから、羨ましがるのはもうお終い。私はプリンセスにはなれないけれど、プリンセスのように、強くて優しくて美しい、そんな人になるの。それが、それだけが、私に許された最後の夢。


 だから、最後に願ってみるの。
 今度生まれるその時は、この夢を、諦めないで貫き通すって。
 本当のプリンセスにはなれないけれど、私は、私のプリンセスを、目指して生きていくの。


 花のようなプリンセス。あなたのように、私はなりたい。








PR

〔つっづきから!〕

「まじかる☆えめらるど!」

世界には様々な世界線があると知っている。それは所謂平行世界―パラレルワールド―と言われる数多の可能性だ。それらは決して混じり合うことはなく、その呼び名の通りに平行線上を進み続ける。ひどく近く、紙一枚向こうの存在だとしても――決して交わることは有りえない虚構世界。
 それがあるかも断言できない、けれどあると言われ続けるその世界の存在を、知っているということはなんとも座りの悪い話だ。知らなければよかったことだろうに、とそう思いはしても歴然として知っているからには如何ともし難く・・・

「いやんご主人様v現実逃避しないでくださいまし。これから私とご主人様のラブラブ新婚生活が幕を開けるんですから!」
「いやうんえぇと・・・」

 だからうんまぁ色々現実離れしたことは体験してきてるからある程度対応もできるにはできるんだけどそれでもやっぱりファーストインパクトには毎回動揺しまくるのもお約束なわけでさすがにそこまで対応できちゃったら色々人間として終わる気もしちゃうしいやでもうんこれは・・・ちょっと・・・。

「まぁちょっとーこの姿じゃビジュアル的に不満ですけどーでもまぁこれでご主人様と四六始終おはようからおやすみお風呂の時間までいられるとかマジ天国ハラショーぐふふのふですしー。エメラルドちゃん超幸せっていうかーもうこれは結婚!結婚しかないですよご主人様!!さぁさこの結婚届にサインを!!!!」
「いややめて。色々やめて。意味がわからないけどとりあえず限りなく私にとって不本意極まりない展開になることだけは察せられるからマジ勘弁してください」

 ぐいぐいと結婚届(どこから出した)を突き付けて迫ってくる緑色の球体と多分葉っぱ?的なモチーフがついた、どこぞの魔法少女が持つようなあるいは幼女の玩具的なステッキの蛮行に死んだ魚のような目になっている確信を得ながらも、私は両手を突きだして待ったをかける。
 まぁちょっと暴走爆走欲望駄々漏れの感があるこの喋るファンシーなステッキにはイマイチ効果はないかもしれないが、とりあえず止まってくれないとどう対処すればいいのかわからない。
 加えて言うならそんな押し売り商法みたいなやり方で契約するほど私主婦経験浅くなくてよ?

「っく、さすがご主人様・・・私の押せ押せゴーイン勢いで契約しちゃいましょうね戦法が通じないとは・・・!そんなところもス・テ・キ!」
「はいはいちょっとお口にチャックしてねー」
「きゃわわ~ん!ご主人様萌えきゅんです~~!」
「投げ捨てるよ?」
「エメラルドちゃん聞き分けのいい良妻なので、お口にチャックしまーす!」

 うん。やっと静かになった。ひとまず嵐のようなマシンガントークが収まったところで、私は割れた窓ガラスを眺めて、さぁ、どうしたものかなぁ、と勉強机前の椅子に深く腰掛けてため息を吐いた。



 どうしよう。これ一体何フラグなの?





 


〔つっづきから!〕

「絶望の足音が聞こえる」

 ハッと、鼻から息が抜けるような笑い声が響く。
 そのまま片手で顔を覆うようにして、俯き加減で肩を震わせてやがて堪えきれないように彼女は哄笑を響かせた。それは、まるで彼女に似つかわしくない、悪意に満ちた笑い声で。
 乾いた空気を引き裂くように、張りつめた緊張感の中でいっそ場違いな笑い声が周囲に響き渡り、顔をあげたあの子の、黒々としたその瞳は愉悦に歪んでいた。

「私だよ、孫悟空。私が、お母さんとやらを傷つけたのさ」
「なっ」
「あぁ、正確に言うと違うがなぁ?ふふ、少々予定外だったが、これはこれでよい器だよ。貴様の体を奪えなかったのは、多少惜しかったがね」

 言いながら、前髪をかき上げた彼女の・・・透子の淡い色味の唇が三日月のように吊り上る。違う。あの子はそんな笑い方をしない。そんな、ケダモノ染みた笑みを浮かべはしない。いつだってたおやかに。淡く小さく微笑んで。
 優しさの欠片もない、その毒めいた笑み。同じ顔をしているのに、それでも浮かべるものの違いでこれほどまでに変わるのかというほどに、目の前に立つ相手は今まで見てきた彼女とは百八十度に違っていた。
 愕然と唇を戦慄かせると、透子は・・透子の体を持った誰かは、ゆったりと両腕を広げて見せた。

「さぁ、第二ラウンドと行こうじゃないか。精々、悪あがきをするがいい地球人共!」

 見下す彼女は、最早僕の片割れというには、あまりにもかけ離れた存在だった。






〔つっづきから!〕

「幽霊退治は面倒くさい」

生温い風が頬を撫でる。蒸し暑く、湿った空気が午前中の熱気により温められ、不快感を覚えるほどの湿気を含んで撫でていくのだ。しかし、不快なのはそんな温さや湿気のせいだけではない。
 もっと根本的に、その空気は「気味が悪い」のだ。淀んだ陰湿な気配を多分に含ませて、ぞわぞわと背筋を這い上がるようなねっとりとした空気に、眉宇を潜めて顔をあげる。―――何か、よくないものがきている。しかも、結構性質が悪い系の。
 目を細め、その気配の発生源を見やり――眉間の皺を深めた。

「おいおい、なにやってんの・・・」

 さて、スルーしちゃっていいものか。





 ・・・とはいったものの、それが知らぬ相手ならばいざ知らず、多少なりとも関わりのある人間が相手となれば見捨てるわけにもいかない。まさか明日教室にいって生徒が一人減ってたとか洒落にもならんし。寝覚め悪すぎるってーの。取り越し苦労ならいいのだが、と思いながら発生源――自転車競技部の部室の前までやってくると、周囲を取り巻く陰湿な気配に、あ、これ本格的にヤバイわ、とぺしり、と額を叩いた。何をやらかしてこんなやばげなもの呼び寄せたのかは知らないが、本物呼んじゃうとかマジ勘弁。元々学校ってそういうもんだけどさー。
 あぁ、嫌だなぁ。これ下手に充てられると私ぶっ倒れるんだけど、と思いつつペットボトルのキャップをあけてから、部室のドアに手をかけた。がちゃり。ノブを回して、ぎぃ、と蝶番の音をたててドアを引く。
 そして、一気に押し寄せる陰気な空気をびしばし顔面といわず全身に浴びながら、私は振りかぶるようにしてペットボトルの中身を盛大にぶちまけた。無論、「対象物」に向かって、だ。
 
 500mlの中身の半分ぐらいをかぶった「それ」は、ヒギィイィィィィイと形容しがたい悲鳴をあげて悶絶するように艶のない金髪を振り乱してのたうち回る。
 しゅうしゅうと被ったところから湯気が立っているので、結構効果はあったらしい。ただの水なんですけどね、これ。一応力は込めておきましたけど、そこらの水道水なんですよこれ。いやん私ホント昔に戻りたい。

「え、あ、な、中村さん・・・!?」
「やぁ、泉田君。お疲れ様」

 顔面蒼白にしながら、引き攣った顔で目を丸くしてこちらを振り返ったクラスメイトに、場の雰囲気にあっていないと自覚しながらも気の抜けた返事を返す。ついでに片手をあげながら、こいこい、と手招きをした。

「なんだ!?どういうことなのだこれは?!」
「泉田ぁ!!どうなってやがんだァ!?」

 最早パニック状態です、と言わんばかりの錯乱した状態で怒鳴り散らす見知らぬ先輩二人。まぁ部室の中には他にも数名いるのだが、その数名はもはや声も出せないぐらいにびびっているので、存外彼らは余裕があるのかもしれない。でもとりあえずそんなこたぁいいのでこっちきなさい。
 未だ動けもせずただただ目を見開くばかりの泉田君にため息を吐いて、腕を掴んでこっち側に引き寄せる。ついでにその横にいた黒田君もひっつかんで引っ張りこんだ。体格差があるとはいえ、構えてもいない体を引き寄せるのは容易く、うわっと声をあげてよろけた彼らを背中に庇い、その近くにいた先輩に視線をやった。

「助かりたいなら私の後ろにきてください。そこで騒いでる人たちも含めて」
「おめさん、一体・・・?」
「詮索無用。早く!」

 そろそろあれも復活しそうなんで早くきてくれませんかね?!悠長に問答してる場合じゃないんですよマジで!!眉をキッと吊り上げて言えば、彼も状況が状況だからか、余計な口を閉じてぎゃあぎゃあと叫ぶ二人と固まりきっている一人を乱暴に押しやって、私の近くに駆け寄ってくる。そして全員がこっち側にきたのを見越して、私は半分残っていた水を足元に、線を引くようにしてまいていく。そうすると、髪を振り乱してぼざぼさにした、ぎょろりと大きな青い目をしたフランス人形が、こちらに飛びかかろうとしてしかし近づけずに足踏みをした。まるで、水の線が壁になっているかのように、こちらに近寄って来れないのだ。その光景をみて、背後でごくりと誰かが唾を飲み込んだ。

「・・・・とりあえず、逃げようか?」
「なんとかすんじゃねぇのかよ!?」

 いや、正直人前であんまりやりたくないっていうか。なんていうか。目が細くて目つきも悪い、ぶっちゃけ「あれヤンキー?」みたいな先輩に怒鳴られて、私は首をすくめて苦笑いを零した。・・・やっぱり、どうにかしなくちゃダメ、ですよねー。
 







「弱ペダネタ1」

 この年齢を迎えるのは何度目だろう、と机の上に置いた小さな三面鏡を前に制服のリボンの歪みを直しながらふと考える。思えばこの年齢に到達する前になんらかの事情で死んでしまうこともあったので、存外に数は少ないかもしれない。最高で何歳だったかな、と過去を思い返すも、苦々しい気持ちになったので思考を止めた。自分の死んだ年を思い返すとか悪趣味極まりない。そもそも思い返す記憶があるのがあれだとかいう根本的問題はすでに何百回と繰り返しているので今更か。ネガティブにはなってもポジティブには到底なれそうもない、と思いながらハンガーにかかっているブレザーを手に取り袖を通した。ストライプの入った青いブレザーの前をとめて、机の横にかけてある学生鞄を手に取る。ほぼ鞄の重量分ぐらいしかないような(つまり鞄そのものがそこそこ重い)それを持ち上げると、隙間がありまくる内部で恐らくペンケースだろうものががさがさと揺れる音がした。





 学校の入学式などどこも似たようなものである。保護者と在校生の真ん中を左胸にコサージュをつけた状態で歩いて着席。ステージ上の演説台で生徒やら校長やらの話をきいて、そそくさと退場して教室に向かう。退屈といえば退屈だし新鮮といえば新鮮。初めての場所というのは人も建物も環境も何もかもが目新しい。けれども入学式という行事も高校という学校も数回繰り返せばもうイイヨ、と匙を投げたくなる。よく青春をもう一度、とはいうがぶっちゃけそれそこそこ人生を全うした人が言える言葉だよね。入学式が終わりある意味自分のテリトリーともいえる教室に戻ってから、すでにいくつかのグループができている光景をやや後ろの方から眺め、行動が早いなぁ、と関心した。元々知り合いだったのかそれとも社交的な人種だったのか。どれかはわからないが早々にぺちゃくちゃと会話を楽しんでいるのは純粋にすごいと思う。
 人生経験はあれどそこまで積極的に関わろうとはしない、コミュ障とまではいかずともそこそこ人見知りをする、というまぁ別に目立つこともない自分の性格を考えながら、でもとりあえず近くの誰かにでも声をかけてみようか、と視線を横に流した。趣味趣向の合う相手というのはおのずと発見できるものなので、実を言うとそこまで心配していない。いや、同類ってなんとなくわかるよね。うん。さておき流した視線の先は男子生徒だったので、あ、これはないな、と即座に跳ねた。跳ねた、が、なんとなく観察するように男子生徒を眺めやる。坊主頭?野球少年なのだろうか。あれ、でもこの学校野球部あったっけ?・・・まぁ運動部とはほぼ関わることはなさそうなのでそこまで重要視することもないか。
 それにしもて首が結構太いな、鍛えているのだろうか。制服の上から骨格がわかるほど精通はしていないが、それでもなんとなくブレザーの下の大胸筋あたりが盛り上がっているように見えるので、結構マッチョ系とみた。腹筋割れてる系男子か。そんなことを考えていると、こちらの視線を感じたのか、不意に男子生徒がこちらを振り向く。向かい合って目があった瞬間、睫毛長!!と思った私に、その男子生徒は首を僅かに傾げた。

「・・・えっと、何?」
「え、あ、・・・別に、なんでも」

 ・・・・・・・・・・・・コミュ力低い!!いやでも初対面同士なのだから別に可笑しくはないはずだ。加えて性別の違いというものが余計に会話を難しくしていると思ったが、これも何かの縁だろう、と少し居住まいを正して口元に笑みを浮かべた。

「えーと、中村透子です。〇〇中学校からきました。どうぞよろしく」

 挨拶は対人関係の基本とばかりに話しかければ、一瞬目を丸くした男子生徒は戸惑ったように視線を泳がせて、それからはにかむように口元をほころばせた。

「泉田塔一郎、です。えーと、出身校は××中学校で、趣味はロード。よろしく」
「ロード?」
「ロードバイク。知らないかな?自転車なんだけど」
「ごめん、よく知らないな。どんな自転車?」

 うむ。好青年。律儀に丁寧に返した上にちゃんと次の会話内容もふってくる彼に、話しかけやすそうな男子生徒だなぁと思いつつ首を捻った。自転車などママチャリとかマウンテンバイクとかなんかそんなのしか知らないよ。まぁしかし趣味が自転車とはなんと健康的且つ爽やかな青年なんだ。きっと部活動に汗水たらして打ち込む素晴らしい青春を送ることだろう。無縁の世界だわーなんて思っている私に、男子生徒・・・泉田君はえーとね、といいながら鞄から携帯をだして何事かを操作していた。しかしガラケーか。今時の子はスマフォかと思っていたがガラケーの子もいるんだね。

「こういうの。カッコいいだろ?」
「あぁ、なんか見たことあるある。というか今朝も見た気がする」

 なんか集団が乗っているのを。そうかこれがロードバイクなるものなのか。へぇ、と相槌を打てば、あぁそれは自転車競技部だね、と泉田君はにこりと笑いながら携帯をしまった。

「自転車競技部・・あぁ、インハイで優勝したっていう」
「そう!この学校の自転車競技部は強豪校として有名で、すごく強くて速いんだ。ここに入るために入学する生徒もいるぐらいで」
「・・・泉田君もそこに入部予定?」
「あ、わかる?」
「わかるよ。熱の入りようが、ね」

 これでわからなかったらそりゃど天然かよほど察しが悪いかだよ。そんな話をしていれば、どこからかこの会話を聞いていたのは別の男子生徒が「何?お前も自転車部入るの?」などと泉田君に話しかけてきたので、そこで私と泉田君の会話は終了。ロードバイクの話で盛り上がり始める彼らを横目で見てから、私は教師がくるまでの間の次の話し相手を物色し始めた。とりあえず最初の出だしは自己紹介からで大体大丈夫そうだな。そして後ろを向いて目があった女の子に、にっこりと笑いかけたのだった。





TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]