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「一般社員は目撃した」

 我が会社は変だ。自分の務めている会社をそう断言するのもいかがなものかと思うが、事実だからしょうがない。いや、有名な芸能事務所だし今のところ右肩上がりで下がることを知らない、まさに飛ぶ鳥落とす勢いの破竹の勢いの会社なので、ここに勤められることは早々くいっぱぐれる心配はないという点では非常に有意義な就職をしたと言えるだろう。いやまぁ、色々社会の洗礼やら人間関係やら、そういう一般的な悩みや問題はどこにでも転がっているし個人的な問題だから殊更挙げ連ねるつもりはない。
 この会社が変だというのは、つまりこの会社のトップが変だということなのだ。何を隠そうこの会社は彼の天下のアイドルシャイニング早乙女が設立した事務所、シャイニング事務所なのである。昔は一世を風靡した今でも芸能界を牛耳ってるんじゃないかと噂もまことしやかに流れているあのシャイニング早乙女は、そりゃもう常識外だ色々と。行動とか言動とか色々。突飛なことはまず社長から起こる。というか社長が起こす。
 彼の登場から退場に至るまで、サプライズがないことがない、と言わんばかりに凄まじい。まぁおかげでエンターテイメント性はやはり他所の芸能事務所よりも抜きんでていることは確かだ。アイドルの質だってすごい。とりあえず、今話題のアイドルはほぼこの事務所から輩出されているといっても過言ではないぐらいなのだから、余所よりも頭一つや二つは抜きんでているというものだろう。あの俳優の日向龍也然り、月宮林檎然り。まぁ、どこの事務所でも似たようなものだとは思うが、より異彩を放つといえばこの事務所がアイドルの恋愛を徹底的に禁止にしていりことだろうか。いやまぁそりゃ芸能人にとって恋愛ごとなんてスキャンダルの種でしかないから警戒するのも当然だろうが、それでもこの会社の徹底ぶりといったら他には類を見ない。とりあえず恋愛ごとを犯したらほぼ解雇、というのがこの会社である。どんなに売れているアイドルだったとしても、だ。その非情さには批判もあるが、彼の主張は一貫してこう。

「アイドルである限りアイドルでいるべきだ」

 納得できるような、やっぱり人として納得できないような。それでも、ここに残っている者はその社長の主張を受け入れているのだから、まぁいいのだろう。
 さてもとにかく、そんなサプライズがないときがないと言われるほど奇奇怪怪な社長であるが、彼をフォローする人材ももちろん必要になってくる。主に後処理とか後処理とか後処理とか。やらかすのが社長ならば、その後の後始末に奔走するのが社員の役目である。まぁ俺下っ端だから、確かに社長の突然の奇行やサプライズ、企画で振り回されることはあれどもそれは上からの指示があってこそ動けるもので、全体的な総括、対応などは範疇外。与えられた仕事を泣き言や恨み言を言いながらこなすのが下っ端の仕事なのである。主に社長の我儘を受け入れて、というか押し付けられて多大なる労働を強いられているのは所謂社長の側近集団、通称「お気に入り」と言われるメンバーである。あるいはシャイニング早乙女被害者の会。某人気女子アイドルグループ風に言うと押しメンとかそんな感じ。このお気に入り、例を挙げるとするならば、俳優でありながら会社の雑務を一手に任されている日向龍也が代表的といえるだろう。あとは月宮林檎なんかもそうだが、基本的に彼女、じゃなかった彼の場合は日向さんよりも要領がいいのか上手いこと遣り繰りしているようなので、やっぱり基本的な被害は彼に向かっていたりする。まぁ事務経理なんかを任されているからこそ、なんだろうけれども。てか、例外なく社長の周りは優秀な人間が多い。でなければあの社長についていくことなんてできないだろうが、多分あの人の見る目もすごいんだろう。あの人の人材発掘能力はそこらのスカウトマンなんか目じゃないし。
 さて、そんな社長の被害者、一般社員から言わせてもらえば生贄、基、お気に入りに最近新しい人物が加わった。社長のお気に入りとはつまり必然的に幹部、上の人間になることで、そこに入ることは容易ではない。先にも言ったが、あの社長についていくにはかなりの状況把握能力、それらを処理する対応力、応用力、何より何事にも動じない適応力、などなど。つまり有能でなければ勤まらない。基本的に日向さんがそこに収まっていたから、今までお気に入りに変動なんてなかったんだが、ここにきて初めての新規参入に、事務所がどよめいたのはそんなに昔のことじゃない。
 しかもそれがまだ学校(あ、この場合社長が経営する芸能専門学校のことな)を卒業したばかりの未成年の少女だというのだから、事務所内を震撼させたことは想像に容易いだろう。大の大人でさえついて行くのが難しいってのに、そこに社会経験も未だだろう子供といっても差し支えのない少女が加わるなんて前代未聞だ。いくら学校生活でいくらか社長の奇行に慣れているとはいえ、だ。そもそもあの学校は確かアイドルと作曲家を育てる場所であって、その道ではなく普通に事務員として入社する人間はほぼいないのだ。日向さんや月宮さんだって、基本はアイドルや俳優なわけだし。
 まぁ、なんでそんな子供が、よりにもよって社長のお気に入りになったのか。そういえば今年は結構豊作な時期だったらしくて、事務所に期待の新星も入ってきたんだけど。確か学園じゃ前代未聞のグループデビューを果たしたんだよな。でも確かに、ユニットを組むことはあっても基本ソロが多いこの事務所じゃ、グループアイドルの一組や二組ぐらいあってもいいよなぁとは思ってたんだ。そこら辺も他の事務所とはちょっと社風が違ってたんだよな。まぁでもそこはこの会社の範囲内。人気が出るか、継続できるか。それらは彼らの努力次第ってわけだからさておいて、問題は社長の(風の噂だとほぼ社長が無理矢理入社させたらしい)「お気に入り」に入ることになるだろう、少女のことだ。
 俺はその子とは働く場所が違うからよく知らないが、というかこの会社にどれだけの人間が務めていると思うのか。そりゃ知らない人間も大量に出るわ、という話なのだが置いといて。話だけは結構聞くんだよな。姿までは見たことはさすがにない。でもとりあえず、間違いなく将来の幹部候補ではあるらしいんだ。まだ二十歳にもなってない、現役女子高生っていってもいい年齢の女の子がだぜ?一体どんな子なんだか。きっと日向さんや月宮さんみたいにこう、キラキラしいオーラで、人目を惹くような子なんだろうなぁ。


 と、思っていた時期が俺にもありました。


 しかし、実際はそうじゃなかった。ぶっちゃけ、地味。別に悪い意味じゃない。それなりに服装にも気を使い、それなりに人目を気にし、それなりに会話をし、それなりにコミュニケーションをとっている。多少大人しめな子ではあるが、根暗というわけでも卑屈そう、というわけでもなく、まぁ本当に、そこらにいるちょっと大人しめな女の子、という感じだったのである。正直驚いた。社長のお気に入りと言われる人間が、こんなにも目立たない系女子、しかもちっさい、とは。全然日向さんとも月宮さんともタイプが違う。ましてや社長が期待しているというアイドルグループの片鱗もない。
 顔も至って普通。やや童顔だけれども、正直外国に行ったらどんだけ年下に見られるか楽しみなぐらいだが、華やかとは言えない。まぁどっちかというと可愛い系?だろうけど、でもまぁ、可愛い子、というにもちょっと及ばない・・・よくある顔だ。うん。ここが芸能事務所だから美男美女が多いし可愛い系カッコいい系と目の保養には事欠かないから余計にそう思っちまうんだろう。
 まぁ、ある意味で期待外れ。それと同時になんでこの子が?という疑問も付随する。いくら学園卒業生とはいえ、社長も何を考えて、というのが彼女を知らない一般社員の見方だろう。
 それぐらい、パッと見じゃよくわからないんだ。仕事のできるできないは見た目じゃないだろうけど、でも仕事できますオーラもないし。なんていうか、いや本当。何が社長の琴線に?と首を傾げること間違いないが、俺は決定的瞬間を見たのだ。
 廊下を歩く彼女の前に、嵐のように現れ嵐のように去って行った社長(変なコスプレ付)を見送った後、あの少女がため息一つで柱に手を触れ、いきなり内線電話を取り出したところを!!
 え?そんなところに電話なんてあったん?とこっちが驚いた。俺、そこそこここに勤めてるけど初めて知ったよ?!もしかして他のところにも隠してるだけであったりするわけ!?そしてなんで知ってんの?もしかして、社長が気まぐれに増やしたり減らしたりつけたり改造したりしてる内装把握してんの!?てか、なんでそんな普通に社長の行動流してんの!?いきなり床からバーン!っと飛び出して「今日は突撃晩御飯をしますから、メニューはビーフシチューでよろしく!」とか言って天井から消えてったんだぜ!?もっと驚くだろ!
 てか夕飯のリクエストとかするってどういう仲・・・しかもその時の彼女の返答が「それもう突撃じゃないですよね。ドッキリにもならないじゃないですか」とかいう呆れ混じりって、慣れ過ぎだろ!
 いやでも確かに、普通に宣言されたら突撃隣の晩御飯じゃないよな・・・いやでも突っ込みどころはそこじゃない、ともいえる。具体的にどこがどう、とは言わないが、まずもっとこう、狼狽えるべきじゃないのか。学園卒業生はこの程度じゃビビらないということなのか・・・!?

「あ、もしもし月宮さん?今お電話大丈夫ですか?そうですか。はい、実は先ほど社長から突然「突撃隣の晩御飯をしまっす!」と言われまして。多分夕飯作って欲しいってことだとは思うんですけど、て、え?月宮さんも来るんですか?え?グラタン?あ、ちょっと、月宮さん、待って・・・・切りやがったしあの人・・・」

 そうこうこっちが驚いている間に、どうやら電話先・・・月宮さん(そういえばあの子はあの人たちとも親しかったんだよな、と噂を思い出しつつ)に電話を一方的に切られたらしい彼女は、そっと無言で電話を元に戻し、胃のあたりを押さえてはぁ・・・と年に見合わない重いため息を吐き出して項垂れていた。・・・いや・・・なんか・・・うん・・・・ご愁傷様ですとしか言えない何あの哀愁。
 齢16、7の少女とは思えないその疲れ切ったというか諦観ムード漂う背中に、その時俺は間違いなく思ったね。

 あ、この子、間違いなく社長のお気に入り(被害者)だ、ってな。

 あの背中、見たことあると思ったら社長の無茶ブリに胃を抑えてた日向さんに似てるんだ。えぇちょっとあんな若い子がすでに胃痛の常連とかなにそれ可哀想。こちらが同情心を芽生えさせているなど露ほどにも知らないで、少女は壁にしばらくもたれかかりながら、やがて「今日早めに上がらせてもらえるかなー」なんてぼやきながら、何事もなかったかのように歩き出してしまった。
 そのしっかりとした足取りと、すでに起こってしまったことは起こってしまったこと、と割り切り次に頭を働かせている様子。何より社長の奇行に動じず受け入れている態度。たった一瞬、ほんの僅かな時間だったというのに、俺はもうあの子が幹部候補であることを疑っていない自分がいることに気が付いていた。容姿とか雰囲気とか態度とかオーラとかそんなもの関係ない。要するに、彼女は社長についていける人間だった。単純にして明快。たったそれだけの、しかし常人が滅多に持ちえない資質を、少女は有していたのだろう。あえて言うなら有してしまった、という方が正しいのかもしれないが、俺は廊下の先に消えていった少女を見つめ、そっと携帯電話を取り出した。

「あ、総務部ですか?すみません、先ほど見かけたんですけど、社長気に入りの新人の女の子・・・あ。中村さんっていうですか?その子、今日早めに上がらせてあげてください。理由?社長がいつものごとくやらかしたんですよ。早めに帰って夕飯の支度しなくちゃいけないみたいなんで。はは、あの子本気で社長のお気に入りなんですねぇ。え?総務でも期待の新人?えぇ、まぁ・・・なんとなくわかります・・・。はい。ではお願いします。はい。失礼します」

 ピ、と通話を切って、俺は廊下の先に向かって合掌した。ごめん、俺にはこんなことしかできないけど、今後も社長の対応よろしくお願いします。自分より年下の少女に向かって、俺は初めて心からの敬意を払ったように思った、ある日のお昼のことだった。















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〔つっづきから!〕

「四月、(略)」

 今日も今日とて疲れ切った体を引きずり、社員寮へと帰宅した私を待っているのは明かりのない寂しい一室だけである。学生寮にいたころは時折にゃんこが出迎えてくれたものだが、あの卒業オーディションを境にいなくなってしまったので、あのにゃんこ様が今どこで何をしているのかはわからない。野良猫なのだからしょうがないのだが、疲れた体と心にあの癒し系がいないのが非常に心残りだ。・・・ペット飼っちゃダメかなぁ。

「寮だからダメだよねー」

 当たり前にペット厳禁なことに少々残念に思いつつ、部屋の明かりをつけてキッチンに買い物袋を置いて、買ってきたものを冷蔵庫やら棚の引出やらに片づけると、夕食の準備に取り掛かる。
 買ってきた鶏肉をパックから取り出し、葱の青い部分と生姜のスライスを水と一緒に鍋に全部ぶっこみ、火をかけて煮込む。最新式のIH仕様のコンロは時代を物語っているが、社員寮の癖に設備が充実しているところが天下のシャイニング事務所というべきかなんというか。普通はガスだよねぇ。しみじみと、仕事の忙しさはいかがなものかと思うが、お給料とか福利厚生とか設備とか、諸々考えればさすが大企業。就職先としてはかなりの好物件であることは間違いない。間違いないが、仕事内容が少々ブラック入りかけているような部分も無きにしも非ずなので、全面的にいいところだよ!というには抵抗感がある。あと主に社長の行動やらなんやらが関わってくるが、この辺はもはや今更なので、足掻いたところでどうしようもないだろう。毒されている、とはわかっているが慣れてしまったからには受け入れるしか道がないのだろう。
 鶏を茹でている間に服を着替え、化粧を落としてさっぱりしたところで茹で上げた鶏肉を取り出し、残った煮汁には簡単に味を調えて、溶き卵を落としてスープに仕立て上げ、取り出した鶏肉をスライスしてポン酢や醤油とごま油などのドレッシングを用意。あとはレタスやトマトなんかを添えて皿に盛りつけて完成だ。疲れた体での帰宅後には簡単にできる料理が一番だよねー。
 朝炊いたご飯をお茶碗に盛って、リビングまで持っていくとそこでようやく人心地つく。ご飯食べたら他の雑務やってー。お風呂入ってー。それでちょっとPCいじってー。あ、そういえば。

「今日ケン王のスペシャルしてたんだっけ。来栖君が出演してるんだよねぇ」

 日向さんは言わずもがなではあるが、一応同期の友人の初大仕事だ。正直ケン王にさほどの興味はないのだが、これは見るべきだろう。純粋に友人がテレビに出てるの見るのってなんかちょっとドキドキだし。リアル知り合いだもんなぁ。日向さんもはリアルで知り合いなのだが、あの人の場合は先に芸能人として見ているのでまださほどの違和感はない。だが来栖君は別だ。もとよりテレビからではなくリアルからの知り合いなので、こう、違和感があるんだよね。不思議な感じだ。そういえば全然彼らに会ってないな・・・一応同じ事務所にいるはずなのに。まぁ事務員とアイドルと作曲家じゃ働く空間そのものが違うし仕事も忙しいからニアミスすることも難しいよなぁ。・・・あれ?ていうか彼ら私がここで働いてるの知ってるっけ?

「・・・携帯ぶっ壊れてから連絡してなかったわーそういえば」

 そら知らんわな。卒業後は普通に進学して真っ当、いや別に芸能人が真っ当じゃないとはいわないが、こういう派手な方面とは無縁の道に進む予定で、そのつもりで彼らとも話したのだから、そりゃ私がここにいるなんて思いもよらないに違いない。見つかったら五月蠅そうだな。いやそれはしょうがないだろうけど、このままいけば普通に何年か知らないままでも行けそうな気がする。・・いや、さすがに月宮さんとか日向さんが何かしら話題に出してくるか。てかその前に一言連絡いれておくべきか。しかし未だ買い替えてもいないという。仕事用があるからいっかぁ、という私はどこかダメなのかもしれない。・・・うん。今度の休みに買いに行こう。そして連絡いれておこう。さすがにずっと音信不通でいるわけにもいくまい。そんなことを考えながら、録画しておいたケン王を見るためにテレビのスイッチを入れ、再生ボタンを押す。・・・えーと、確か日向さんからの話によると来栖君の今回の役柄はスペシャル限定のゲストキャラとして、結構ケン王と関わる重要ポジションのはずだ。なんだっけ、とある国にピンチが迫りそれをなんとかしようとする有志の少年戦士。そしてその争乱の中現れたケン王と悪者をなぎ倒していくという・・・これドラマなのかな?
 首を捻りつつ始まったドラマをご飯を食べながら眺めていく。おぉ、来栖君だ。すげぇ、ドラマに出てるよすげぇ来栖君。しかしなにその衣装。いや知ってたけど。これが某世紀末的な漫画のそれに似ているとは知っているけど。恰好が・・・面白いな・・・。てか来栖君腰細いなー。でもへそ出しならもうちょい腹筋が出ててもいいのになぁー。まぁアイドルだからあんまりムッキムキもダメなんだろう。彼のイメージ的なものもあるし。て、お?あのエキストラ四ノ宮君じゃね?なんだ、彼も出てたんだ。よくやってんなぁ。しかしこの時代背景に彼の和らぎ系フェイスはちと違和感。美形だからいいけども。ん?・・・・あー・・・あれ愛島さん、かな?話したことないからよく知らないけど・・・なんかドラマとは別枠であの衣装違和感ないわー。あ、日向さんだー。カッコいいけどやっぱその恰好ウケるー!てか全体的にウケるー!

「おぉ、来栖君闘ってる」

 さすが空手やってるだけあって動きが堂にいってるね。うん。そんなに違和感がない。演技としてはやっぱり他の役者さんたちから浮いてるけど、まぁそこはおいおい慣れていくところだろう。てかまずエキストラの質がたけぇ。特にやられ役半端ねぇ。ちょう上手い。あの橋からの落下とかすげぇ。
 あ、飛んだ。確かここノースタンドだったんだよね?月宮さんが世間話にしてくれてたけど・・・あの高さでよくまぁやろうとしたもんだ。
 そしてラスト付近になっての日向さん扮するケン王のアクションシーンの連続連続連続!すごいの一言に尽きるわけだが、ちょ、まwwwwてwwwww

「ぶほぉっ。ちょ、ま、半端、ない・・・・!」

 なにその足技、某格闘ゲームですかえ?これCG?CGなの?ガチじゃないよね?ガチだったら私もう日向さんを普通の人の括りにいれることができないwww竜巻www旋風脚wwwwどういうことなのwww思わずテーブルの上に突っ伏してしまいそうになったが、ここで目をそらすわけには・・・!という根性を発揮した結果、ラスト天が裂け大地から爆発が起きたところで私の腹筋はノックアウトだった。某彼風に言えばノッカーウ☆である。そうか、ケン王は、人外的な素養のある人物だったのだな・・・!

「ドラマじゃねぇよその設定・・・!」

 アニメとか漫画だよそれ!ちょ、やばい、ケン王、別の意味で面白い・・・!ラストは来栖君とケン王の心温まる別れのシーンで締められたわけだが、要所要所が盛りだくさんすぎて正直印象にない。これが、トップアイドル・・・というよりも人気俳優の実力か・・・!来栖君の存在感が消えちまったぜ・・・!いや覚えてるけど、ちゃんと印象も残ってるんだけど、一番は?と聞かれたらケン王と答えるしかない。すごいなぁ、日向さんは。

「あーやばい。明日日向さんまともに見れるかな。まぁスケジュールが合わなければ顔合わせないで済むと思うけど・・・」

 笑いすぎて引き攣る頬をぐにぐにと解しながら、私は未だ震える腹筋に、ひぃひぃと喉を鳴らして水を煽った。笑いすぎて火照った体に冷たい水が心地いい。ぐびぐび、と喉を鳴らして飲み干すと、よし、と頷く。

「今度ケン王借りて見よう」

 お笑い的な要素できっと楽しめる。ごめん、私にこれを純粋なるドラマの目線でみることはできないよ・・・!漫画原作とか言われた方がまだ納得できるんですけど。まなじ知り合いが出ている分普段のギャップやらと比べてしまって余計に笑えるんだな、と思いながら、私は停止ボタンを押して、普通のテレビ番組に戻すと椅子を引いて立ち上がる。あぁ、今日は気分よく寝られそうだ。

「笑うっていいわぁ」

 気分爽快とは、まさにこのことである!






〔つっづきから!〕

「四月、世の中の不条理を嘆いたリグレットその2」

なんとなく、アニメ二期沿いで傍観主を絡ませたら~で、入学式の司会進行をやる羽目になった傍観主を書きましたが、あの時の傍観主の恰好ってきっとスーツ姿なんだよなぁと想像してました。
入学式ですからフォーマルでいかないとね!きっと入学式に出る羽目になって慌ててスーツを買いに走った傍観主がいるはずです。髪はもちろんアップでまとめてます。もう学生じゃなくて社会人ですからね。髪型は邪魔にならないようにシニヨンとか中に入れ込む系のまとめ髪とかが多いんだろうなぁ。根が真面目っ子なので、そこらの恰好はキチっと系でまとめてそうです。あと単純に色々髪型やるのがめんど、げふん。大変なのでざっくりまとめて邪魔にならないやつで常日頃統一させてそうです。そして林檎ちゃんにもっとオシャレしなきゃだめよ!と怒られるんです。まぁのらりくらりと逃げてそうですけど。しゃれっ気出す暇があるならこのハードスケジュールをこなす時間をください。みたいな。
傍観主のスーツは何がいいかな!背が小さいのでパンツスタイルはあんまり似合わないと思うんですよね。動きやすさでいえばパンツが一番だとは思うんですけど・・・だからあんまりタイトすぎるスカートも動きにくいという点で却下。多少余裕をもたせたマーメイドライン系のスカートとかプリーツが入ったのとか、そのあたりが動きやすさではいいかなぁって。靴はもちろんローヒールパンプス。いやだから、ハイヒールとか動きにくいんですよ。こんなので踊れるアイドルまじ尊敬するね!な勢いで地味系というか、目立たない普通のフォーマルで出てそうです。そしてもちろん林檎ちゃんに「地味すぎる!!」って怒られる。「いやでも色々対応していくこと考えるとやっぱり比較的動きやすいのになるんですよ。だからそのハイヒールは無理です足痛いです絶対挫きますよ!」「せっかくの入学式なのよ華々しい舞台なのよそんなこと言ってたら透子ちゃんこれからも絶対履かないでしょ!?」「主役は生徒なんで脇役は目立たなくていいと思います。あ、じゃぁ私これからまだ打ち合わせあるんで!せんせ、じゃなかった。月宮さんもお仕事がんばってくださーい」「月宮さんじゃなくて林檎ちゃん、ってあぁもう!逃げたわね!!」みたいな。舞台裏が楽しすぎて仕方ない。
アニメはもう本当、合間を縫った隙間小噺で裏方ネタをやりたいぐらいですよ。もうwwwプリンスとwww接触する気がwww皆無wwwwww
まぁ実際仕事始めちゃったらそんなのんびりしてられませんしね。学生時代とは違うんですよ、ホント。
癒し系だったにゃんこ様があんなことになってしまいましたし・・・傍観主の癒しは何処に。


というわけで続きから前回の続き、というよりも個人的なアニメ二話の裏方話。
シャイニーがヘリでこれから会議があるんで、とか言っていたその会議室を妄想してみました。
別ネタもコメントで頂きましたが、とりあえず真っ先に思い浮かんだ裏方事情をまず一筆。
傍観主は、ほんとこういうポジションがよく似合うというか、マジ自分こういう一方その頃で、みたいな話が好きなんですね。ただこれだと傍観主はにゃんこ=某王子の法則を知らない感じです。本編がどうなるかがわからないのであれですけど・・・まぁもしも、ここにいたら、というネタなので実際には関係ないんですけどね!




〔つっづきから!〕

「四月、世の中の不条理を嘆いたリグレット」

 ざわざわと周囲に広がる話し声の数が増す。それを壁一枚隔てた向こう側で聞きながら、ばたばたと走り回りながら演台を用意し、マイクやスピーカーといった音響設備を整える裏方で、私は必死に手元の資料及び台本を必死に読み込んでいく。そのマイクの位置違うだろ!照明の位置確認しろよー!ちょ、スピーカー調子悪いんですけどぉぉぉ!!怒号といってもいい応酬を小耳に入れつつ、走り回る作業員の数ははたして学校の入学式にあっていいものなのか。これなんのテレビ番組?と言わんばかりの熱気ではあるが、大役を押し付けられた身としてはぶっちゃけそんな突っ込みをしている余裕もない。マジもうこの会社鬼畜すぎるよぉ!

「中村さん!早乙女社長がまだこちらに来ていないのですが、どうしましょう!?」
「え?まだ来てないんですか?」
「はい、もうすぐ式が始まるんですけど・・・!」

 ぶつぶつと頭の中で式のプログラムを思い返しながら、タイムスケジュールと照らし合わせて段取りをもう一度確認していると、女性AD・・・ではなくて事務所の事務員であるお姉さんが、血相を変えて走り寄ってきた。その声にパッと顔をあげて、あわてて腕時計を見ればもう式は始まる時間五分前を指している。おいおいおいおい、と心臓を跳ねさせた私は、しかしそれも想定内、とドキドキと騒ぐ心臓を悟られないように大丈夫です、と口を開いた。

「元々あの人の行動は予定に入れていても予定外であることがほとんどです。そのために社長のスピーチは式のラストに設定していますので、多少の遅刻は問題ありません。・・が、途中乱入してくる可能性は大幅にありますので、空中、地中、周囲の建物への監視は怠らないでください」
「は、はい!」
「皆さん、お聞きの通り社長は今ここにいません!が、いつどこからどう出てくるかわかりませんので、照明、音響、映像、全て社長の行動に合わせられるように注意を怠らないでください!」
「了解!!」

 元よりあの人を予定に組み込むことが間違いなのである。去年の自身の入学式を考えるだに、あの人が登場した時点で式はほぼ終わったも同然。その後持ち直しはほぼ不可能と言えるのだから、それまで粗方のプログラムを終わらせられればこちらの勝ちである。まぁ一応連絡だけはいれるように告げて、私はあぁ、今回はあの人どういう演出をする気なんだろう、と遠い目をしてため息を零した。あの人名何をやるか言ってくれないからホント現場の仕事が大変なんですけど。まぁそれでも、予定外であることを想定して準備を行えば、多少の無茶ブリにも対応は可能のはずだ。元々ここのスタッフは私よりも長くあの破天荒な社長と付き合いがあるのだから、それぐらいの臨機応変さは言われずともわかっているだろう。
 なんの戸惑いもなくテキパキと動き出す彼らに、マジプロってすごい、と思いながら、私は手渡されたマイクの音を確かめつつ、はぁ、と重たいため息を吐き出した。

「なんで私が司会進行しなくちゃいけないのさ・・・」

 これ本来は日向先生、基日向さんの仕事のはずなのであるが、今回彼らはあちら・・・新入社員の方へとつくとかで、なーぜーかー!私という新入社員にこの大役が押し付けられたのである。マジありえないどういうことなの何考えてるの学園ちょ、じゃなくて社長もそうだけど、企画書をあっさりこっちに手渡した日向さんも日向さんだ。そしてそれをニコニコ笑ってみてた月宮さんも月宮さんだ。
 なんなのあの人たち。そんなに私を胃腸炎にしたいの。過労死させたいの。新人にこれは無理だって。ハードル高いって。もうほんとやめてほしいというか、七海さんたち優先させすぎじゃね?期待の新人はわかるけどこっちももうちょっと気を使ってほしいんだけど。
 マジなにこの扱いの差は。生徒を谷底に突き落としすぎじゃね?もうちょっとこう、庇護してくれてもよくね?私まだ未成年だし。ちくしょう。
 さんざん呟いた愚痴を内心で零しつつ、スーツの襟元を正して背筋をぴしりと伸ばす。舞台袖に待機し、腕時計の時間を見比べながら、ぐッと台本を握りしめた。
 舞台袖の隙間からは、大勢の新入生が垣間見える。あぁ、これから彼らはこの理不尽と驚愕と破天荒と鬼畜の所業に溢れた無法地帯へと放り込まれるのだなぁ。まだこんなに初々しいというのに、これからの苦労が偲ばれる。それに、どれぐらいの生徒が無事に卒業できるのか。できたとして、どれだけ生き残っていけるのか。正直私おススメしないんだけどこの職場。

「・・・捕まったら最後って感じ」

 頑張れ若人。君たちの未来は予想もつかないアクシデントで構成されているに違いないから。

「中村さん、時間です」
「わかりました。・・・・・・行きましょう」

 とりあえず、きっと今頃マスターコースの社員寮できゃっきゃしているだろう友人達よ。私、しばらく君らと会えない気がするよ。ハハッ。
 パァ、と照明により舞台がライトアップされる中、私はばっくばくと跳ねる心臓を持て余し気味にできるだけ颯爽と見えるように、光り輝くステージへと足を進めたのだった。
 アイドルでもないのにこの仕打ち。いつだって退職届は出せる準備をしているが、出すタイミングははたしてあるのだろうか。






〔つっづきから!〕

「覚悟は決めた。だから私は、君に全てを捧げよう」

 ごめんなさいという言葉は聞き飽きた。
 謝らせるのはもう嫌だ。貴女のせいじゃないのに、謝罪を口にさせるなんてもう嫌だ。
 私のせいじゃないという優しい言葉ももういらない。守りたかったという儚い願いも言わせたくない。
 キャスター。私のサーヴァント。優しい優しい、私だけのサーヴァント。

「――これで最期にするよ」

 消えゆく体。走るノイズ。敗者と勝者を隔てる赤い壁。負けてしまった。あれだけ決意したのにあれだけ覚悟を決めたのに。あぁ全く、覚悟や信念だけではままならないなんて、当たり前すぎて反吐が出る。覚悟や思いだけでどうにかなるなんて、そんなの物語の中だけだ。怒りや悲しみでパワーアップなんて、そんなのただの絵空事。
 必要なのは堅実なる努力。力を出せるだけの下地。そこに才能やら運やらがあったとしても、結局は自分の培ってきたものをどれだけ出せるか。自分が、どれだけのもの積み重ねてきたか。それ以上なんてあるわけない。
 だからゲームだってレベル上げをするんだ。低いレベルじゃラスボスなんて倒せない。だから、物語は旅をする。様々なものを得るために。
 
 倒れ伏すキャスターの手を強く握り、血が零れる口元を拭い取る。少しだけ虚ろいだ瞳が意思を持って焦点を定めると、マスター?と彼女が私を呼んだ。うん。キャスター。

「キャスターが謝るのも、私を甘やかすのも、痛い思いをするのも――これで、最後にするから」
「ます・・・?」
「もうこんな思いさせない。もうこんな怪我なんてさせない。絶対。絶対だ。――もう、キャスターを裏切ったりなんかしない」

 死なない。死なせない。負けない。負けられない。もしもまた、懲りずにあの女生徒がこの戦争を繰り返すというのなら。また、再び、この戦争が始まるというのなら。
 

 また、こんな戦いが始まるというのなら。

「もう、踏みにじったりなんか、しないから」

 貴女の思いに胡坐をかいて、利用したりなんかしないから。
 きっとまた繰り返すのだろう。彼女の手によってこの世界は逆戻る。けれどそれでも構わない。もう決めたんだ。必ず優勝するって決めたんだ。聖杯を手に入れるって決めたんだ。だから、私は、始めるだけ。


「大好きだよ。大好き、キャスター。私だけの、優しいサーヴァント」


 
 その思いに報いるだけの強さを。戦いを勝ち抜くための力を。相手を追い詰めるだけの知識を。相手の願いを切り捨てるだけの意思を。その全てを手に入れるために、聖杯を手に入れるために。始める、だけだから。


 ノイズは染まる。黒く黒く染まっていく。目は見えない。耳も聞こえない。暖かさも冷たさも。何もかもを掻き消して。


 
「・・・長いこと、付き合わせてごめんね。キャスター」


 たったこれだけの決意を固めるのに、全く、私はどれほどの時間を要するのだろうね?






〔つっづきから!〕

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